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【開催報告】
2013年1月29日(火)19:00−21:00 会場:日本創生ビレッジ
アフリカにおける健康への投資と新市場開拓
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2013年6月に横浜で第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が開催される機会に、 日本医療政策機構、日本国際交流センター、日本創生ビレッジでは、月例の連続講座を開催しています。

1月29日に開催された第1回の講座は、黒川清政策研究大学院大学アカデミックフェロー・日本医療政策機構代表理事と、佐藤重臣アフリカビジネスパートナーズ合同会社代表にご登壇いただき、日本人が今後アフリカにどのようにエンゲージしていくべきかについて会場も含めて熱い議論が交わされました。


渋澤 健
日本国際交流センター理事長 (モデレーター)

従来は援助対象として捉えられがちだったアフリカが、人口増加と経済成長に伴って新たな市場としての重要性を高めている。海外の成長を日本に取り込むことが重要であって、援助ではなく、成長市場であるアフリカという地域の水、食糧、医療といったヘルス(健康、保健医療)分野などの社会基盤に対して日本から投資することが、日本経済に対する投資でも関連する、という考えだ。これを切り口にして、日本企業がアフリカの健康改善と持続可能な成長にどのように関わっていけるかを考えたい。

黒川清
政策研究大学院大学アカデミックフェロー日本医療政策機構代表理事

なぜいまアフリカか?54カ国が存在する広大な大陸であり、人口の増加、経済が成長している地域だ。日本をはじめとする先進国はODAを通してアフリカに関わってきたが、経済成長が停滞しODAも縮小するなかで、今後どのようにアフリカにエンゲージしていくかが課題だ。過去約10年で先進国のアフリカへの取り組みは変化してきた。特に日本は2000年のG8サミットから世界基金の創設に関わり、その動きをリードしてきた。ちょうど同じ頃にゲイツ財団もでき、民間の動きも活発になっている。政府の財源に限りがある中で、私企業やシビル・ソサエティーとともにPublic-Private Partnershipを促進し、アフリカの人たちと関係を構築し、事業の土壌を広げていくことは、CSRではなく将来に向けた戦略的な投資と考えるべきではないか。アフリカに行くのは今。現地に行き、サプライ・サイドの'Push'の発想ではなく、現地の人々に真に必要なものは何かというデマンド・サイドの'Pull'型の発想をもつことが重要。公的機関はこれをフレキシブルにサポートする必要がある。


佐藤重臣
アフリカビジネスパートナーズ合同会社代表

9億人の人口をもつと言われるアフリカ大陸のヘルスケア市場は、市場主義経済のなかで将来的に伸びていく分野であり、進出して投資するタイミングは今だ。農村と都市、低所所得者層と中・高所得者層のそれぞれに依然として多くの満たされていないニーズがあり、ビジネスの機会は幅広い。農村地域の低所得者層向けに井戸を掘る、といった従来のアフリカのイメージからは脱却しなければならない。物理的・金銭的に医療へのアクセスがない彼らのニーズには、例えば遠隔医療や安価な医療機器、マイクロ・インシュランスやモバイル・マネーの活用が考えられる。都市部の低所得者に対しては、スマートメーターの技術を用い、利用した分だけ払うプリペイドの電気事業というのもありかもしれない。都市部にはがんセンターなどの高度な医療施設が進出している。「より健康になりたい」という中・高所得者向けの欲求に応えるために、水道がある家庭には浄水器のニーズがあり、トレーニングジムも展開されている。多様なアフリカでのビジネス機会に対して、多様な戦略が必要だ。コンシューマー向けだけでなく政府相手のビジネスの形もあり、国際機関と協力した官民連携というやり方もある。また、日本からアフリカのマーケットに進出することだけを考えがちだが、アフリカで生まれたイノベーションを先進国でのビジネスに応用するということも十分考えられる。すでに他国の企業はアフリカに進出しており、競合が行くから検討する、というマインドでは遅い。同じ国のなかであっても、地域によっても全く違うという多様性もあり、とにかく固定観念を持たずに現地に行き、自分の目で現状を見るべきだ。




本講座は、起業家マインドを持つ若手中堅の皆様にアフリカのヘルスケアについて理解を深めていただくことを目的としているため、起業家の国際的な活動も支援する「日本創生ビレッジ」とのパートナーシップで実施しています。講座当日は、日本創生ビレッジに入居するインド人起業家であるアイ・ティー・イー株式会社代表取締役社長のパンガジ・ガルク氏から、ワクチン運搬にも応用できる自社の冷蔵保存技術「アイスバッテリー」の今後の展開もご紹介いただきました。

会場との質疑応答は、アフリカとのビジネスにおける投資リスク(不確実性)や安全(セキュリティ)について、また、法整備上の不安点や日本の公的機関のサポートの課題など幅広いテーマに及びました。

アフリカでのビジネス展開について、具体的な質問が続いた
田中 克徳氏
三菱地所株式会社
街ブランド企画部
東京ビジネス開発支援室長
パンガジ・ガルグ氏

スピーカー・モデレーター略歴

黒川 清

政策研究大学院大学アカデミックフェロー、日本医療政策機構代表理事
東京大学医学部卒(医学博士)。1969年〜1984年在米、1979年カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部内科教授、1989年東京大学医学部第一内科教授、1996年東海大学医学部長、東京大学先端科学技術研究センター客員教授他を経て現職。InterAcademy Council、International Council of Science等の国際科学者連合体の役員、委員を務め、2003〜2007年日本学術会議会長、内閣府総合科学技術会議議員、イノベーション25戦略会議座長、内閣特別顧問(2006〜08年)、WHO コミッショナー(2005〜09年)などを歴任。Institute of Medicine of National Academies USA、米国内科学会マスター等。現在、IMPACT Foundation Japan 会長兼ファウンダー、東京大学名誉教授、MIT、コロンビア大学客員研究員。主な著書「世界級キャリアのつくり方」(東洋済新報社)、「大学病院革命」(日経BP社)、「イノベーション思考法」(PHP出版)他。Foreign Policy 100 Top Global Thinkers 2012 に選ばれ、AAAS Scientific Freedom and Responsibility Award を受賞。Blog www.kiyoshikurokawa.com

佐藤 重臣

アフリカビジネスパートナーズ合同会社代表
東京大学文学部卒業。2001年にNTTデータ入社。2004年にインドの大手IT企業インフォシステクノロジーズに転職しインド・バンガロール本社等で勤務。その後、米系戦略コンサルティングファームのブーズ・アレン・ハミルトン(現ブーズ・アンド・カンパニー)、政府系金融機関の国際協力銀行に入行し、インド及びアフリカ向けの金融業務に従事。2010年にアフリカ・セネガルのInstitut Superieur de ManagementにてMBAを取得。2011年1月、日本企業のアフリカ進出支援コンサルティング事務所アフリカビジネスパートナーズを立ちあげ、2012年7月に同事務所を合同会社として法人化、代表に就任し現在に至る。著しい経済成長により世界各国の大手企業、現地企業がアフリカで市場獲得競争を繰り広げる中、日本企業に対してアフリカにおけるビジネスの可能性を説くとともに、進出のための市場調査、パートナー選定、資金調達支援、現地事業モニタリングなど、ハンズオンでのアフリカ事業・立ち上げ支援を実施。日本政府のアフリカ向け民間投資促進政策立案にも携わる。1979年生まれ。

渋澤 健

公益財団法人日本国際交流センター理事長
テキサス大学化学工学部卒業。1984年に(財)日本国際交流センター入職、1987年にUCLA大学経営大学院にてMBAを取得し、JPモルガン、ゴールドマン・サックスなど米系金融機関、大手ヘッジファンドのムーア・キャピタル・マネジメントを経て、2001年シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。2007年コモンズ株式会社(現コモンズ投信)を創業し、2008年会長に就任、現在に至る。2010年より日本国際交流センター評議員、2012年3月理事、5月に理事長に就任。「日本資本主義の父」と言われる渋沢栄一の5代目の孫にあたり、「論語と算盤」の提唱を現代に問いかけ、21世紀における資本主義や社会の持続性、経済活動と公益活動を両輪とする民間の力の重要性などを説く講演・執筆活動に従事する。2004年より経済同友会幹事、また、渋沢栄一記念財団理事など多くの非営利組織の理事・評議員を務める。著書に、『渋沢栄一 100の訓言』(日本経済新聞出版社・2010年)、『日本再起動』(東洋経済新報社・2011年)等がある。1961年生まれ。


タイトル写真提供:世界エイズ・結核・マラリア対策基金
photo credit: © the Global Fund/ John Rae