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【開催報告】
2013年2月28日(木)19:00−21:00 会場:日本創生ビレッジ
アフリカの保健医療を支える資金・人材
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2013年6月に横浜で第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が開催される機会に、日本医療政策機構、日本国際交流センター、日本創生ビレッジでは、月例の連続講座を開催しています。

2月28日に開催された第2回の講座は、日本国際交流センター理事長の渋澤健をモデレーターに、瀧澤郁雄 国際協力機構(JICA)人間開発部保健第一課長と、水野達男 Malaria No More Japan専務理事にご登壇いただき、アフリカの保健医療を支える資金・人材をテーマにそれぞれ国際開発援助(ODA)と民間の立場から、ご自身の経験を交えてお話いただきました。


瀧澤郁雄
国際協力機構(JICA)人間開発部保健第一課長

妊産婦死亡やエイズ、マラリアなど、世界の健康問題に占めるアフリカの割合は非常に高い。2015年までに国際社会が達成すべき目標を定めたミレニアム開発目標(MDGs)の進捗を見ると、全体として加速的な改善傾向が見られる反面、格差が広がっているという現状がある。保健サービスが受けられない原因は、地理的アクセスに加え、金銭的な問題によるところも大きく、より貧しい人にサービスが届いていない。アフリカの保健人材不足は深刻で、タンザニアではJICAの支援を通じて充足率が40%程度であることが明らかとなった。人材不足への対応として、多様な専門職種の設置、住民やボランティアの巻き込み、本来医師や看護師等が担う医療行為の一部を他の専門職やボランティア等へ委譲する「タスクシフティング」などが行われているのが特徴。人材の問題については、育成、採用・配置、定着という一連のサイクルで見ていくことが重要であるものの、真の課題は、保健医療に従事する人々の自信(can do attitude)の回復であるとも指摘されている。アフリカでは保健財源も絶対的に不足しており、援助への依存が高い上に個人負担の割合が大きい。ルワンダやガーナのように健康保険制度の拡充によって財源確保を進めている国もあるが、健康保険方式であれ、税方式であれ、貧困層へのサービス提供を誰が負担するのかが課題。必要とされるものを必要としている人に届ける、という強い姿勢が重要であり、TICAD Vに向けたメッセージとしたいと考えている。

水野達男
Malaria No More Japan専務理事

グローバルヘルスは、成長が約束されている市場だと感じる。特にアフリカは人口増加を見ても当面は成長し続けることが見込まれる。これからのBOP市場を考えた時、2050年の市場の中心はアフリカ、インド、東南アジアとなることが見込まれ、住友化学の蚊帳・ネット工場もこれらの地域に置かれている。現在、住友化学の長期残効型防虫蚊帳「オリセット」はWHOの認定をもらい、世界80カ国以上で配布されている。タンザニアでは、現地企業をパートナーとして無償で技術移転を行い、ジョイントベンチャーを立ち上げた。現地での7000人の雇用機会創出にも貢献しており、従業員の家族を含めれば、その10倍にあたる7万人の生活を支えているという計算になる。他方、現地従業員の教育やマネジメントには課題も多い。アフリカでの事業展開と拡大には、何が起こってもおもしろいと感じられる現場主義の人材が適しており、戦略的な投資のタイミングを見極めるグローバルなマクロの視点も求められる。また、マラリア制圧のような社会的課題を事業として成功させるには企業側も覚悟が必要。アフリカでの事業展開と拡大には、戦略的な投資とそのタイミングが鍵となる。




会場との質疑応答では、アフリカにおける健康指標改善の背景や、保健事業の財源とそのモニタリングなどに関する質問が出されたほか、事業の拠点をどこに持つか、技術や事業そのものを現地で定着させるためにはどうしたら良いか、といったアフリカでのビジネス展開に向けたより具体的な意見交換が交わされました。

本講座は、起業家マインドを持つ若手中堅の皆様にアフリカのヘルスケアについて理解を深めていただくことを目的としているため、起業家の国際的な活動も支援する「日本創生ビレッジ」とのパートナーシップで実施しています。講座当日は、日本創生ビレッジに入居するデンタルサポート株式会社の取締役・CFOの田中透氏から、同社が国内シェアトップを誇り、アジアでも展開を始めている訪問歯科診療事業や、海外での歯科技工の技術指導、病院経営についてご紹介いただきました。

高田晋作氏
三菱地所株式会社
街ブランド企画部
東京ビジネス開発支援室
田中透氏
デンタルサポート株式会社
取締役・CFO
会場との質疑応答

スピーカー・モデレーター略歴

瀧澤 郁雄

独立行政法人国際協力機構人間開発部保健第一課長
筑波大学第三学群国際関係学類卒業後、1992年に国際協力事業団(当時)入職。1998年にハーバード大学公衆衛生大学院で人口・国際保健理学修士を取得。1994年に日本政府が発表した「人口・エイズにかかる地球規模問題イニシアティブ」の展開に開発援助実施機関側から携わって以来、ほぼ一貫してアフリカを中心とする保健医療分野の開発援助事業に従事。2001年から2005年までは、JICAフィリピン事務所で、母子保健、結核対策、地域保健システム強化等の事業を担当。2008年から2010年までは、ナイロビをベースに、保健医療分野の広域企画調査員として、JICAがアフリカ域内で実施する保健医療分野開発援助事業の計画策定やモニタリング評価に参画。また、アフリカ域内の高等教育機関ネットワークとの共同による保健システム・マネジメントにかかる域内人材育成プログラムの立案等にも従事した。論文に、『アフリカにおける保健開発:健康水準の加速的改善と日本の開発援助への提言』(2012年)。1969年生まれ。

水野 達男

Malaria No More Japan 専務理事、前住友化学株式会社ベクターコントロール事業部長
1979年 北海道大学農学部卒業後、米系外資化学・薬品メーカーに21年勤務し、1999年から住友化学。2002年レインボー薬品株式会社 常務取締役 開発室長を経て、2007年に住友化学株式会社ベクターコントロール事業部長就任。2012年11月より現職。2007年からマラリア予防のため蚊帳、オリセットネット事業の立ち上げ、現地アフリカでの事業定着をけん引。タンザニア、アルーシャに従業員7000名規模の蚊帳工場を2007-10年設立。2011年にはケニアの全スーパーマッケット店舗に住友化学ブランドの蚊帳「OLYSET Classic」を並べ、さらに2012年には、アフリカに農業、公衆衛生のための研究所「African Technical Research Center」を設立した。2012年11月より、マラリア撲滅にむけた啓蒙活動、政策提言、さらに新技術開発の支援のためのMalaria No More Japan(現在NPO法人申請中)を設立、運営・指揮する。1955年生まれ。

渋澤 健

公益財団法人日本国際交流センター理事長
テキサス大学化学工学部卒業。1984年に(財)日本国際交流センター入職、1987年にUCLA大学経営大学院にてMBAを取得し、JPモルガン、ゴールドマン・サックスなど米系金融機関、大手ヘッジファンドのムーア・キャピタル・マネジメントを経て、2001年シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。2007年コモンズ株式会社(現コモンズ投信)を創業し、2008年会長に就任、現在に至る。2010年より日本国際交流センター評議員、2012年3月理事、5月に理事長に就任。「日本資本主義の父」と言われる渋沢栄一の5代目の孫にあたり、「論語と算盤」の提唱を現代に問いかけ、21世紀における資本主義や社会の持続性、経済活動と公益活動を両輪とする民間の力の重要性などを説く講演・執筆活動に従事する。2004年より経済同友会幹事、また、渋沢栄一記念財団理事など多くの非営利組織の理事・評議員を務める。著書に、『渋沢栄一 100の訓言』(日本経済新聞出版社・2010年)、『日本再起動』(東洋経済新報社・2011年)等がある。1961年生まれ。


タイトル写真提供:世界エイズ・結核・マラリア対策基金
photo credit: © the Global Fund/ John Rae