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【開催報告】
2013年3月21日(木)19:00−21:00 会場:日本創生ビレッジ
中長期的視点に基づく企業戦略〜水事業を通じた取り組み
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2013年6月に横浜で第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が開催される機会に、日本医療政策機構、日本国際交流センター、日本創生ビレッジでは、月例の連続講座を開催しています。

3月21日に開催された第3回の講座は、日本国際交流センター理事長の渋澤健をモデレーターに、小田 兼利 氏(日本ポリグル株式会社 代表取締役会長)と、戸塚 美穂子氏(ヤマハ発動機株式会社 海外市場開拓事業部 第3開拓部 クリーンウォーターグループ)にご登壇いただき、「中長期的視点に基づく企業戦略—水事業を通じた取り組み」をテーマにそれぞれがアフリカで展開する水関連の事業について、ご自身のご経験をまじえながらお話しいただきました。

戸塚 美穂子
ヤマハ発動機株式会社 海外市場開拓事業部 第3開拓部 クリーンウォーターグループ

ヤマハ発動機は、二輪自動車や船外機等のビジネスに加えて、小型浄水装置の事業も展開している。これまで、UNDP(国連開発計画)やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、経済産業省、JICAなどの公的機関によるサポートを得て事業を拡大し、セネガル、モーリタニア、コートジボワール、ガーナ等の西アフリカにおいても事業展開を図っている。ヤマハ発動機の小型浄水装置の特徴として、フィルターや凝集剤を使用しないため、メンテナンスが簡単であり、維持管理費用が安いことがあげられる。また、装置の導入にあたっては、持続性を考慮して、現地の水管理委員会を設置するなど、ハード面のみならずソフト面も工夫も行っている。これは、ヤマハ発動機がこれまで世界各国で二輪車事業展開をする際に大切にしてきた持続性を考えた展開方法、つまり、現地のニーズにねざし、アフターサービスや部品供給の体制を整えるというスタイルを踏襲している。今後は、小型浄水装置のみならずトイレなどの衛生施設をセットで導入すること、診療所・保健所・学校の建設にあわせて小型浄水装置をセットで導入することも検討している。


小田 兼利
日本ポリグル株式会社 代表取締役会長

日本ポリグルは2002年に設立され、ポリグルタミン酸が主成分であるネバネバ成分を用いて、これまで、バングラデシュやソマリアの難民キャンプ、タンザニア村落部などにおいて、水浄化の事業を展開してきた。バングラデシュでの事業は、平成21年に経済産業省の公募案件に採択されたことをきっかけに、認知度が上がった。特徴的なビジネスモデルを用いており、「ポリグルレディ」と呼ばれる浄化剤の販売や浄化水の販売・集金、啓蒙活動を行う女性たち、「ポリグルボーイ」と呼ばれる浄化装置の運用や浄水の販売を行う男性たちと雇用し、現地の雇用拡大にも一役買っている。ソマリアの難民キャンプでは、民間人として21年ぶりに現地入りし、浄化装置を設置。浄化された水の配付が開始されたが、絶対量としてはまだ不足している現状がある。 タンザニアにおける事業では、政府開発援助海外経済協力事業委託による政府の支援が得られ、日本の中小企業が持つ技術、知恵、仕事に対する熱意が途上国国民の生活改善や経済力向上に結びつくことを証明する機会ととらえている。 現地では、「Made in Japan」の商品への絶対的な信頼があることを感じ、これは先輩方が築き上げて残してくれた貴重な遺産であると考える。この遺産を大事にし、臨機応変に対応でき機動力のある中小企業の活用が途上国進出には重要となるであろう。

(当日は、ポリグルタミン酸が主成分であるネバネバ成分を用いた水浄化の実演を交えて講義が行われました。)




会場との質疑応答では、アフリカにおいて事業を拡大する上での障壁についてや、大企業として、あるいは、小規模な企業としてのメリット・デメリットなどに関する質問が出されたほか、現地でのニーズと自分達の支援とにギャップがあった際、そのギャップをどのように埋めるべきかといったアフリカでの事業展開に向けた、より具体的な意見交換がなされました。

本講座は、起業家マインドを持つ若手中堅の皆様にアフリカのヘルスケアについて理解を深めていただくことを目的としているため、起業家の国際的な活動も支援する「日本創生ビレッジ」とのパートナーシップで実施しています。講座当日は、日本創生ビレッジに入居するミュージックセキュリティーズ株式会社の証券化事業部 取締役の猪尾 愛隆 氏から、アジアや東日本大震災の被災地で行っている「セキュリテ」(事業者と個人をつなぎ、資金を集めるマイクロ投資プラットフォーム)の紹介をいただき、今後のアフリカ展開の可能性についてもお話しいただきました。

及川 静香氏
三菱地所株式会社
街ブランド企画部
東京ビジネス開発支援室
猪尾 愛隆氏
ミュージックセキュリティーズ
株式会社 取締役
ポリグルタミン酸が主成分であるネバネバ成分を用いた
水浄化の実演

スピーカー・モデレーター略歴

戸塚 美穂子

ヤマハ発動機株式会社 海外市場開拓事業部 第3開拓部 クリーンウォーターグループ
東京外国語大学外国語学部卒業。2007年にヤマハ発動機株式会社入社。国内向け家庭用浄水器の営業を担当。その後、2009年9月より途上国向け浄水装置(クリーンウォーター装置)の営業を担当し、インドネシアを中心とした東南アジア諸国における装置販売開始のためにインドネシア、ベトナム、カンボジア等での市場調査活動に携わり、2010年7月よりクリーンウォーター装置の販売を開始した。その後、東南アジア諸国での営業業務に従事するとともに、アフリカでの展開に向けて、セネガル、コートジボワール、ガーナ等での市場調査活動に従事、現在に至る。「平成21年度 提案公募型開発支援研究協力事業(NEDO)(ベトナム)」、 「平成21年度 経産省委託事業に係るF/S調査(インドネシア)」、「平成22年度 協力準備調査(BOPビジネス連携促進)(JICA)(セネガル)」、「平成24年度 途上国における我が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業(経産省委託事業)(コートジボワール、ガーナ)」等のプロジェクトにも参画。1983年生まれ。

小田 兼利

日本ポリグル株式会社 代表取締役会長
大阪大学基礎工学部卒。1964年大阪金属工業株式会社へ入社。72年日本オリジナルエンジニアリング株式会社創業。納豆のネバネバ成分であるポリグルタミン酸を使った水質浄化剤を発明し、2002年、日本ポリグルを創業。「世界中の人々が安心して生水を飲むことが出来るように」という使命を掲げ、水質浄化剤を世界各国に提供。「BOPビジネスは貧困社会への貢献と中小企業の復活を同時に実現できる」と考え、自ら世界各地を精力的に訪問し、深刻な水問題解決のため世界中を駆け回っている。 また国際ボランティア学生協会(IVUSA)の特別顧問も務め、学生らと共に現場へ出て海岸清掃などの環境保全にも力を入れる。最近では、ソマリアなどの紛争地域での避難民への給水活動も行っている。主な発明として、線形制御時の不感帯設定、符号式キーの発明、自動包装機での光電マークの応用。最近のものでは、水、環境に関する開発技術。

渋澤 健

公益財団法人日本国際交流センター理事長
テキサス大学化学工学部卒業。1984年に(財)日本国際交流センター入職、1987年にUCLA大学経営大学院にてMBAを取得し、JPモルガン、ゴールドマン・サックスなど米系金融機関、大手ヘッジファンドのムーア・キャピタル・マネジメントを経て、2001年シブサワ・アンド・カンパニー株式会社を創業。2007年コモンズ株式会社(現コモンズ投信)を創業し、2008年会長に就任、現在に至る。2010年より日本国際交流センター評議員、2012年3月理事、5月に理事長に就任。「日本資本主義の父」と言われる渋沢栄一の5代目の孫にあたり、「論語と算盤」の提唱を現代に問いかけ、21世紀における資本主義や社会の持続性、経済活動と公益活動を両輪とする民間の力の重要性などを説く講演・執筆活動に従事する。2004年より経済同友会幹事、また、渋沢栄一記念財団理事など多くの非営利組織の理事・評議員を務める。著書に、『渋沢栄一 100の訓言』(日本経済新聞出版社・2010年)、『日本再起動』(東洋経済新報社・2011年)等がある。1961年生まれ。


タイトル写真提供:世界エイズ・結核・マラリア対策基金
photo credit: © the Global Fund/ John Rae