日本の将来の持続可能性にとって人口減少が大きな課題として浮上してきている。その解決策の一つとして移民の受け入れがあるが、その議論は従来タブー視され、日本国内では合理的、客観的な議論が行われないままとなってきた。

日本国際交流センターでは、今後の人口減少が社会に与える厳しさを直視するとともに、その解決策として、移民受け入れ議論の活発化が必要と考える。その議論の先導的な役割を果たすことを目的として、従来から行ってきた「社会に活力を与える多文化社会構築プロジェクト」、「多文化パワープロジェクト」を発展させて、「人口減少と外国人の受け入れ構想プロジェクト」を実施する。

これまでの活動
社会的背景

2008年を境として日本の人口は減少するようになり、今後、減少速度は加速化していくと想定されている。2014年の年間減少数は25万人であるが、2020年には年間60万人、2040年には100万人を超えるまでになる。総人口の中でもとりわけ若年層人口の急減が進行する一方、高齢者の数は増え続けるというきわめて不健全な人口変動が進行していく。年少者、生産年齢人口の減少と高齢者の増大によって、近い将来、日本社会の持続可能性が危ぶまれる状況へと陥る可能性も指摘されている。

現在、景気回復とこうした人口変動が相まって厳しい労働力不足が生じているが、現政権は女性と高齢者の活用を政策の柱として対応しようとしている。また外国人労働者については、一時的な受け入れに留まる技能実習生制度の拡大を図ることで、建設分野などで深刻化する労働者不足に対応する方針である。しかしながら、日本の人口動態の中長期の動向を考えれば、近い将来、他の先進国と同様に定住を前提とした外国人の受け入れを迫られる時期が来ることが想定される。

一方、国内では移民についてのネガティブな意識が強く、移民受け入れ議論は半ばタブー視されてきた。人口問題は日本の将来を左右するきわめて重大な課題との認識が強まる中、外国人受け入れについて、事実に基づく客観的で健全な議論をリードすることと、日本人と移民双方にとってウィンウィンの関係を構築し得る移民の受け入れ方の提示が求められる。さらに、現在の日本社会を覆う閉塞感を脱し、日本の再生につなげるための世界に開かれたビジョンの構想と、またその実現ための道筋の模索が必要とされている。

プロジェクト開始に至る経緯

日本国際交流センターでは、2005年から在住外国人の役割に注目し、「社会に活力を与える多文化社会構築プロジェクト」、「多文化パワープロジェクト」を実施してきた。人口減少が進行する中で、彼らの日本社会への貢献の正当な評価は、将来の移民受け入れに向けての助走路ともなりえるものである。

2005年から実施した「社会に活力を与える多文化社会構築プロジェクト」は、在住外国人の地域社会での生活の現状と貢献のあり方を地域で活躍するNPOのリーダーとともに検討を行った。その成果を2007年に明石書店から『「多文化パワー社会」多文化共生を超えて』として出版し、大学で教科書として使われるなど、多文化共生の議論に一石を投げかけてきた。

2012年からは新たに「多文化パワープロジェクト」を実施し、在住外国人の地域社会への多様な貢献のあり方、外国人の本格的な受け入れに向けての課題と方向性の模索を行ってきた。

一方、2013年には日本国際交流センターとして、政府の国家戦略特区に対して「アジア青年移民受入れ事業」を提案し、第一次審査を通過した。最終選考には選ばれなかったものの、提案内容は現在、政府が進める国家戦略特区の中で外国人労働者の試験的受け入れとして活用されている。

2014年以降、日本国内では人口減少についての危機感が急速に高まり、労働者不足への対応として外国人労働者の活用についての議論が活発化している。今後本格化する人口減少に対して、移民受け入れを視野に入れた政策立案の議論も高まってくるものとみられる。そこで日本国際交流センターでは、深刻化する人口減少の進捗に対応するため、日本の持続可能で健全な経済社会の礎として、外国人(移民)の受け入れに向けた議論をリードするべく、2014年より「人口減少と外国人の受け入れ構想プロジェクト」を開始した。

その他の外国人受け入れ関連プロジェクト・成果等
関連するメディア報道(2014年以降)
  (日本国際交流センター執行理事 毛受敏浩の寄稿・インタビュー等)
● "Invite foreign interns to settle in Japan, think tank says"
The Japan Times 2014年10月30日
⇒ PDF版[277KB]
 
● 永住権を持つ外国人のための生活保護に関する司法判断についてコメント
NHKラジオ第一放送「NHKジャーナル」 2014年7月17日
 
● 外国人の受け入れに伴う課題についてコメント
NHKラジオ第一放送「NHKジャーナル」 2014年6月26日
 
● 「『移民』の是非 地域の将来どう描く」[871KB]
愛媛新聞 2014年6月21日 (毛受敏浩のコメントを掲載)
(記事冒頭より)人口減少が加速する中、企業での働き手や家庭での介護の担い手が大幅に足りなくなると見込まれている。全国の自治体の半分が、将来消滅する可能性があるというショッキングな試算もある。不足するマンパワーを、日本に定住する外国人で補う「移民」の是非が論議の対象になり始めた。 …続きを読む[871KB]
 
● 「安倍成長戦略のハッタリと利権」[120KB]
『週刊朝日』2014年7月4日増大号 (標記特集記事中で移民政策についてコメント)
「一気に年20万人も入れたら大きな摩擦が起きるので、千〜2千人くらいから始めて拡大していくのが現実的です。…続きを読む(記事抜粋)[120KB]
 
● 「(成長戦略を問う)外国人労働者の受け入れは」[971KB]
朝日新聞 2014年6月11日
人口が減り続け、2040年には年間100万人が減ると予測されている。地方は衰退し、日本人だけではやっていけない。このままでは介護も地域の農業も支えられない。
外国人受け入れの特区を設けるなど実験的な取り組みを早急に開始すべきだ。…続きを読む[971KB]
 
● 「どうする『外国人労働者受け入れ』」
NHK総合「THE FUTURE 私たちの選択」 2014年6月7日 (毛受敏浩出演)
【番組内容】人口減少が進む日本で注目される外国人労働者。「外国人技能実習制度」やいわゆる「移民」について専門家の意見や現状を取材、視聴者とも双方向で結び近未来の姿を問う。…番組情報を見る
 
● 「社会、経済活性化させる」[2MB]
熊本日日新聞 2014年3月31日「争論『移民の受け入れは』」
「人口の減少が加速度的に進み年齢構成もいびつになる。少子化で毎年400以上の公立学校が廃校している。2035年には85歳以上は1千万人を超える。日本人だけで社会を維持するのは不可能だ。好むと好まざるとにかかわらず、移民を受け入れないといけない」 …続きを読む[2MB]
 
● 「人手不足の解消に『外国人実習生』」
NHK総合「ニュースウォッチ9」 2014年3月26日 (毛受敏浩のコメントを紹介)
 
● 「定住増やし人口減対応  海外に開かれた国造り」[221KB]
読売新聞 2014年2月25日「論点」
2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、政府では外国人技能実習生の受け入れ拡大を検討している。建設現場での人手不足解消を目指して、一時的に外国人労働者で埋めようという案である。だが、日本の急速な人口減少を考えると再考の余地がある。 …続きを読む[221KB]