2013年10月28日から30日にかけて、第22回日独フォーラムは東京で開催された。両国において直近に行われた選挙後の政治状況についての相互の報告に加えて、本年度は高まる緊張を伴う東アジアの地域安全保障に焦点を当てた議論が行われた。議論ではさらに、持続的な経済成長という共通の目標に向かってはいるが、異なる行程を歩む日独両国の経済政策について話し合われた。

 改めて両国政府の本フォーラムに対するホスピタリティに感謝の意を表したい。フォルカー・シュタンツェル駐日ドイツ大使とエミリー・ハーバードイツ政府事務次官は会議のオープニング・レセプションを開催してくださり、また岸田文雄外務大臣にもレセプションを実施していただいた。また安倍総理には不在のためにお目にかかれなかったものの、石原宏高政務官に総理のメッセージを代読いただき、さらに菅義偉官房長官と面談する機会をいただいたことに重ねて感謝したい。

今回のフォーラムでは主要な二点について次のような結論に至り、下記のとおり提言を行うものである。

1.東アジアにおける地域安定と安全保障

(a)日本にとって東アジアの安定は明らかに極めて重要であるが、同様にドイツも地域の安定に重要な利害関係を持っている。東アジアにおける対立と緊張は、主要国が国際的な経済および政治の秩序の持続と改革において協力する能力に関しての脆弱化を招き得るものである。とりわけ、中国のような新興国との適応を行いながら、その一方で必須であるリベラルな要素を維持するのは容易ではない。

東アジアにおいては領土やその他を巡っての未解決の対立があり、中国が単に経済的な重要性を増すばかりではなく、その政治的、軍事的力を増強することによって緊張のレベルは高まっている。

 同時に地域内の二国間関係は本来あるべき姿となっておらず、地域の安全保障協力のための多国間の枠組や機関も脆弱で限定的である。

それゆえわれわれ両国は東アジアにおける安全保障に関する対話を一層強化し、日独両国が地域の安定に寄与する方法を模索しなければならない。ドイツにおいてはこのことは中国の台頭による国際的な政治安全保障上の複雑な影響に注意をより傾けることを意味する。日本には近隣諸国との二国間の関係改善と地域の安定と安全保障の強化のための外交努力が求められる。

(b)われわれは中国の国内情勢と外交政策との関係について特に議論を行った。われわれの意見では、中国は国際社会において目立つことをしないというこれまでの戦略から離脱し、ナショナリズムが権力側と国民全体の双方において高揚していることを認めることができる。両国による中国の対外政策に対する直接的な影響力の行使は限定的ではあるものの、中国との協力を求め、さらに現在の国際秩序に中国を取り込むことの追求は重要である。

しかし、相互適応と妥協によってのみそのことは可能となるのであり、現在の国際秩序の維持の基調となる共通の認識と受容が求められる。中国がその重要性と見合うレベルで中国自身が国際情勢に建設的に参加するような方向付けをしつつ、その冒険主義的な外交活動を諌めることは西側諸国や他の国際社会にとって難しいことであるが、その成功の成果は大きい。

従ってわれわれ両国は、政府間だけではなく、学会や研究機関の間において、中国の動向について、より広く知見や洞察、分析を交換しあうべきである。

(c) 中国や他の新興国が台頭し、一方で米国の影響に陰りが見える中で、国際経済や政治秩序はますます緊張を増している。日独双方は先進民主主義国の中で最もグローバル化した経済大国であり、両国ともに良好な国際秩序に多くを依存している。

われわれの外交方針は個別に、また相互に将来の国際関係に影響を与える能力を一層強化すべきである。このことは他の国々との共同の取り組みによって可能となり、国際協力の組織や国連などの国際機関の強化が求められる。また和解と共通の未来という精神のもとでの若者同士がこうした面で交流を行うことは極めて重要である。しかしこれらの取り組みも戦略的なしっかりした方向性が必要である。

2.日独の経済政策的課題

(a)持続可能な経済成長を強化するため、両国は異なる行程をとっているが、その経済政策の議論の中で、信頼が最も重要であると同意した。その信頼は、競争が激化するグローバル市場において、われわれ両国が競争的であり続けるために経済、社会、政治的改革に着手する意志と能力を持つことがあってこそのものである。われわれの中央銀行の政策はそれらの改革のために時間を買っているといえるが、それ自体が改革に代わるものではない。中央銀行は現在の量的緩和政策から方向修正をせざるをえないが、それを成し遂げるのは容易ではない。

従って両国政府は財政力を強化し、ミクロ経済政策と改革推進によって産業競争力の強化を図らねばならない。両国の中央銀行は協力を進め、金融政策の円滑な調整を確保すべきである。

(b)われわれの経済面での将来は国民、企業、社会の能力に依存しており、新製品を生み出し、新たな市場を開拓し、古い問題に新たな解決策をもたらすイノベーションが重要である。

 われわれは両国政府が両国の能力強化を図り、適切な組織の創設と法的環境整備、さらに財政刺激によってイノベーションを推進するように求めるものである。


日独フォーラム
 日本側座長 茂木 友三郎ドイツ側座長 ベルンハルド・ショイブレ