第25回日独フォーラムは2016年10月18日より20日までベルリンで開催され、日独共通の関心事項について議論を行った。両座長として、両国政府によるホスピタリティに感謝の意を表したい。

 とりわけ、ドイツ外務省には会議のオープニング・レセプションを開催していただき、八木毅駐独日本大使には会議初日の夕食会を開催していただいた。フォルカー・カウダー議員には、今回もドイツ連邦議会議事堂内での会議を開催できるようご高配をいただいた。そして、アンゲラ・メルケル首相には、会議初日の午後、フランスやロシア、ウクライナの各国大統領との臨時首脳会談の最中にもかかわらず、日独フォーラムメンバーとの面談の時間をいただいた。ヘルグ・ブラウン首相府国務大臣には、連邦首相府で会議の途中経過の報告のみならず、議論をする機会までいただいた。各位に御礼を申し上げたい。

 以下に会議における議論を要約する。

第一セッション「日独の政治経済情勢―国内の課題と政治的対応」では、日独両国とヨーロッパ、東アジアにおける最近の社会経済・政治状況について意見交換を行った。 日本については、アベノミクスの効果のほか、中国・北朝鮮などの東アジア情勢、TPPやTTIPを含めた世界貿易動向、そしてブレグジットがもたらす影響が主な議題となった。ドイツについては、ブレグジット交渉の行方、英国抜きのEUにおけるドイツの役割、難民問題の現状とポピュリズムの台頭が議題に上がった。 その中で、日本側からは、ブレグジットの影響とEUにおけるポピュリズムの台頭への懸念が表明された。ドイツ側からは、残る27カ国によるEUの結束がドイツ外交の最重要課題であるとの認識が示された。また、国内情勢と国際情勢が緊密に結びついていることについて、会議中に何度も言及があったことは特筆される。

一連の議論を通じて、日独両国の政府が国民に向けて、情勢の変化をより効果的に伝えるべきであるとの認識が、メンバー間で共有された。また、社会と国民の利益のため、グローバル化のもたらすリスクやチャンスに対して国民自身が主体的に行動できるということを、両国政府が説得していく必要がある、という点でも合意に至った。さらに、これらに関連して、学校教育の中での政治教育の重要性も共有された。

第二セッション「グローバルセキュリティー〜外交政策上の課題」では、現在進行中の両国を取り巻く安全保障環境の変化について議論を行った。当セッションでも、米国や中国の外交政策、世界が直面する様々な危機が、国内情勢と極めて密接に絡み合っていることが改めて確認されたことは印象的であった。

その上で、われわれは、多様な局面で現れるナショナリズムとポピュリズムが、政府に対する重要な挑戦であるとの認識を共有した。米国におけるナショナリズムとポピュリズムの強まりは、既に世界に対する米国の影響力に変化をもたらしているほか、米国内に対しても、国際的なリーダーシップを発揮する意欲や能力を抑制する方向に作用している。

この米国のリーダーシップの相対的な退潮は、中国のグローバルパワーへの拡大期、強硬さを増し手段も多様化させているロシアの軍事戦略、さらに北朝鮮による核兵器開発能力の増大による脅威と相俟っている。それに伴い、西側諸国は共通して、慎重かつ断固たる対応を求められている。この「共通した対応」の必要性は、西側諸国が多国間協力を効果的に強化し、不確実性を増している国際秩序の再構築につなげなければならないことを意味する。このような状況下、日独両国は共に多くの責務を負う必要がある。

そこで、われわれは、日本・EU間の自由貿易協定のいち早い締結に向けて、日独両政府が尽力することを強く推奨する。日独がFTA締結に取り組むことは、オープンな国際経済秩序を両国が継続的に支えることへの明確なメッセージとなる。また、ヨーロッパや米国の建設的な外交政策への脅威となったポピュリスト的な反グローバル主義に対抗することをも意味する。ドイツは現在、大量の移民及び難民の受け入れという難題に取り組んでいるが、日本も潜在的には北朝鮮からの難民流入という問題を抱える。日独両国は、これらに関する不測の事態に対し、より協調的なアプローチを取る必要がある。そのほか、われわれは対中国政策においても、両国がより緊密に連携することを求める。さらに、サブサハラ地域の発展やガバナンス改善に向けた支援も、両国が緊密かつ効果的に進めていくことを推奨する。

第三セッション「デジタル革命―デジタル・エコノミーの新たな展開」では、デジタル化が産業、経済、社会、政治にどのような影響を及ぼすかについて協議し、デジタル化のインパクトは、今もなお計り知れないとの結論に至った。 われわれはインターネットの「第三段階」、すなわち、ヒトとヒトの間だけではなく、モノとモノの間でも相互接続が深化する時代に差しかかっている。イノベーションを引き起こし、それへの適応能力を加速させることは、われわれの将来の国際競争力にとって必要不可欠である。この点でカギを握るのは教育であり、われわれは、学校内でのIT教育、教師のためのIT教育、さらに起業家精神の涵養において、両国による一層の協力を求める。

サイバースペースの今後の進化は、多くの重要な政治的課題を投げかける。インターネットの発展が「第三段階」に入っていくことは、個人の自由や政治参加において何をもたらすのか? 民主主義に準拠したインターネットの発展をどのように保障できるのか? サイバースペースの軍事的利用あるいは犯罪利用をどのように抑制できるのか? 以上のような課題への回答を求めるのは時期尚早であるが、われわれは、サイバースペースに関しても日独両国による緊密な交流や協力が極めて望ましく、喫緊の課題としてとりあげるべき分野である、との見方で一致した。

改めて、日独両首相の日独フォーラムへの継続的な支援に対して感謝の意を表したい。また、日独両政府が日独フォーラムの活動に高い関心を寄せていることにも深く感謝する次第である。

 日本側座長 小林 栄三ドイツ側座長 マティアス・ナス