2015年6月1日、東京都内の国連大学で、国際シンポジウム「アジアにおける人の移動の現状と課題―日本が採るべき道を探る―」(主催:(公財)日本国際交流センター、後援:国際移住機関(IOM)、東京都、新宿区、助成:マッカーサー財団、(公財)アジア研究協会)を開催した。

このシンポジウムは、東アジア8カ国における人の移動に焦点を当てた日本国際交流センターの研究事業「東アジアにおける『人の移動』とシビル・ソサエティの役割―地域の安全と繁栄のために」の成果を広く共有すると共に、研究事業に参加しているアジアの研究者と日本国内の研究者・実務家との議論を通じて、アジアにおいていかに安全かつ秩序ある移住システムを構築するか、さらには深刻な人口減少と高齢化に直面する日本において、外国人を受け入れる際にどのような制度・体制を構築すべきか検討することを目的として行われた。

セッション1:アジアにおける人の移動―人間の安全保障を確保する制度のあり方

セッション1では、本研究事業の共同主査であるカバレロ・アンソニー南洋理工大学准教授・ラジャラトナム国際研究院(RSIS)非伝統的安全保障研究センター所長をモデレーターに、「アジアにおける人の移動―人間の安全保障を確保する制度のあり方」をメインテーマに、4か国(シンガポール、韓国、ベトナム、フィリピン)の研究者による、各国における人の移動をめぐる新しい動きや課題に関する報告が行われた。また、アジアにおける人の移動と地域的課題について、ウィリアム・バリガ国際移住機関(IOM)駐日代表、井口泰氏関西学院大学教授がコメントし、参加者間で活発な質疑応答が行われた。

発表資料
セッション2 アジアのなかの日本―人口減少社会・日本に求められるアプローチ

第2セッションでは、生産人口の減少と高齢化によって深刻な影響を受けつつある日本が、人の移動の多様化と労働移住の制度化を特徴とする東アジア地域における「現在」の人の移動と、今後予想される域内諸国における家族構成や人口構成の急速な変化による「将来」における人の移動を、どう受け止め、どのように取り組むべきかをについて、政治家、省庁、地方自治体等の行政側と、企業や経済団体等の経済界、メディア、市民セクター、学者をパネルとして迎え、円卓会議形式で検討した。

冒頭、明石康氏国際文化会館理事長・元国際連合事務次長による基調講演が行われ、それを受けて、毛受敏浩日本国際交流センター執行理事・研究事業共同主査が「日本としての外国人受け入れへの対応と課題」について報告した。

発表資料 円卓会議

基調講演と、日本の現状についての報告を受けて、磯山友幸経済ジャーナリストをモデレーターに、33名のパネリストによるディスカッションが行われた。

最初に、地方行政関係者による「地域社会における人口減少と外国人の受け入れの現状」に関する発言を通じて日本の人口減少の深刻さを共有した上で、政府レベルにおける外国人・移民の受け入れをめぐる議論の現状、行政や企業においてみられる新たな動きとその課題に関する議論が展開された。 また、在日外国人当事者や、外国人・移住者に対する支援活動を行っている団体からの発言を通じて、様々な問題を抱えている外国人・移住者の現状と課題も共有された。

最後に、移民受け入れに関する国民的議論の不足の指摘を受けて、多様なセクターによる外国人・移民の受け入れの可能性とあり方をめぐる継続的な議論の必要性を含め、様々な提言が行われた。

閉会の辞

最後に、すべてのセッションを振り返り、カバレロ・アンソニー氏は、「東アジア地域における『人の移動』は、政府、企業、NGO/NPO、移住者のコミュニティといった様々なレベルで考えていく必要があり、そこには一人ひとりに焦点をあてた『人間の安全保障』という視点が欠かせない」としたうえで、日本に必要なアプローチとして「人の移動がトランスナショナルなものであることから、より安全で秩序のある地域内の移動を構築するための地域的枠組みを考慮する必要があり、こうした観点を踏まえて、日本でもより開かれた議論を行うことが求められる」と語り、今回の議論を締めくくった。