活動報告

4月25日(水)~29日(日)にかけて、日韓移住者交流事業の視察交流プログラムとして、ベトナム、フィリピン、ネパール、ミャンマー出身の日本への移住者メンバー4名が、韓国で暮らす移民・移住労働者が最も多いソウル特別市と京畿道(ウィジョンブ市、アンサン市)を訪問しました。

 

今回の韓国視察プログラムを通して、日本側移住者メンバーは韓国の移住者メンバーとそのコミュニティと交流を図り、韓国の移住者をめぐる取り組みに触れる最初の機会を得ました。また、外国人労働者支援センターや多文化家族支援センターといった移住者にかかわる機関のみならず、韓国側メンバーが活動するNPOやコミュニティ・センター、街を訪問することで、日韓メンバー間の交流と韓国における移住者とそのコミュニティの活動状況についての理解も深めました。
 

 1日目:ソウル市

視察初日は、まず韓国への移住者である韓国のメンバー(ベトナム、フィリピン、ネパール、ミャンマー出身の4名)による出身国における韓国への移住の現状や、韓国における移住者・コミュニティの状況についてブリーフィングを受けました。ブリーフィングでは、国ごとの韓国に移住・滞在する目的・身分の特徴や、SNSなどを活用したコミュニティの新たな形、ホスト社会である韓国の行政、NPO・NGO、地域住民との連携による多文化社会作りの活動、移住者にかかわる法制度の課題とその解決のための取り組みなどが説明され、日本の状況との違いについても意見交換をしました。

 

その後、ソウル市で暮らす外国人住民のための多言語総合支援の拠点である「ソウル・グローバル・センター」と、移住女性問題に取り組むNGOのソウル市への働きかけによって設立された全国唯一の移住女性のための相談センターである「移住女性センター」を訪問し、ネイティブの専門相談員による相談体制や、無料教育プログラムなどのセンターの支援体制に触れ、移住者の多様化に伴う支援の課題について質疑応答を行いました。

 

 

 2日目:京畿道ウィゾンブ市、ソウル市ソンドン区

視察二日目は、ソウル市の東北に位置する京畿道ウィゾンブ市(Uigeongbu)市とソウル市ソンドン(Seongdong)区で活動している機関・団体を訪問しました。最初に訪問したNGOのウィゾンブEXODUSでは、活動家として勤務している韓国のフィリピンメンバーが、NGOならではの取り組みや、個別の相談ケース、移住当事者として活動して感じることなどを率直に話してくれました。

 

続いて、雇用許可制に基づき入国・滞在する移住労働者を支援する「ウィゾンブ外国人力支援センター」と、全国初の自治体によるすべての移住労働者を支援するセンターとして設立された「ソンドン外国人勤労者センター」を訪問しました。政府・自治体の予算によって運営される両センターでは、多言語による相談体制や、韓国語・職業教育支援、演劇・音楽などの趣味活動の支援等、移住労働者の就労・生活支援体制について説明を受け、雇用許可制の導入とセンターの活動による移住労働者のおかれた状況の変化や、移住労働者の増加による社会の変化、政策の課題と今後の展望などについて忌憚のない意見交換を行いました。

 

最後に訪問した「ソンドン健康家庭・多文化家族支援センター」では、「多文化家族支援センター」という名前が、国際結婚などによる多文化家族が特別扱いされる、支援が必要な社会的弱者であるとのイメージが固定されることを懸念して、2018年より一般の住民を包括するセンターとして名前が変わったことを説明しました。また、日本側のメンバーから様々な質問が投げられ、韓国の多文化家族支援・取り組みが、国際結婚により移住してきた結婚移民者の韓国社会への適応から、夫婦をはじめ安定的な家族生活と結婚移民者の自立支援、そして移民2世など子供の教育・発達支援へと広がっていることを説明してくれました。

 

 

3日目:京畿道アンサン市(アンサン多文化街特区)

ソウル市の南部に位置する工業都市で移住者の割合が非常に高いアンサン市を訪れた視察三日目は、まずアンサン多文化街特区を訪問し、スーパー、レストランだけでなく、多言語看板の銀行、病院、交番など多様な文化や言語が混ざり合っている韓国の多文化・多民族化した都市を体験しました。

 

その後、移住者・移住労働者自らが映像を使って自分の状況、生活、考えを表現する場としてスタートしたNGO「地球人の停留場」を訪問しました。そこでは、映像・写真を交えながら、移住労働者による実態の告発、問題提起におけるSNSなどの新たなメディアの活用、労働時間など労働関係法令の適用外になりやすい農業、漁業などにおける労働問題、人権侵害の実態などについて説明を受けました。また、相談に来ていたカンボジア人女性労働者の事例に触れ、カンボジア出身移住者のコミュニティが運営しているシェルターにも訪問することができ、孤立し脆弱な立場におかれやすい分野における移住労働者の受け入れのあり方について考える時間となりました。

 

午後には、韓国政府と京畿道、アンサン市が出資して移住者に対するワン・ストップ・サービス・センターとして建てられた「アンサングローバル多文化センター」を訪れ、移住者の社会統合・包摂、自立に向けた様々な事業・プログラムや、企業・行政・民間団体による連携構築のための試みなどを触れました。また、センター設立当時に「多文化センター」という名前が移住者への特別な支援というイメージへつながり一部の地域住民から反対があったことも知り、「多文化支援」、「多文化家族」といった言葉が移住者に対する特定のイメージを作り出し、それが地域住民との相互理解、コミュニケーションの壁となりうる等、急速に進んだ移住者支援の課題についても改めて認識することができました。

 

 

4,5日目:各地移住者コミュニティ訪問

視察四日目と五日目は、日韓の移住者メンバー間の交流と韓国における移住者コミュニティの活動に直に触れる機会となりました。日本のメンバーからは、三日間、韓国の移住者に関わる機関、団体を訪れて学んだこれまでの取り組みの成果や課題、新たな方向性の試みを踏まえて、韓国の移住者の現状や、社会的差別、人権保護、政策の成果と課題などについて様々な質問が出されました。結婚移住者、移住労働者、ビジネスマン、移民2世、移住者コミュニティのリーダー、地域社会の構成者、外国にルーツをもつ子供のいる親といったそれぞれの重層的な立場、自らの経験を踏まえて、ホスト社会と移住者に求められる視点、環境づくりについての率直な韓国のメンバーの話を受け、日韓のメンバーの活発な意見交換が行われました。

 

また、視察最終日に訪問したネパール、ベトナム、ミャンマーのコミュニティでは、韓国と母国との関係作りや理解を深める活動にも触れることができ、相互扶助にとどまらず、ホスト社会と出身国両方にコミットするうえでの移住者のコミュニティの可能性を強く感じることができました。

 

 

今回の韓国視察交流プログラムは、日韓の移住者とそのコミュニティおよび法制度の現状を正確に理解し、それぞれの状況をより客観的にとらえるために実施されました。これから視察調査の成果を議論のたたき台とし、日韓それぞれで「移住者の現実に即した政策とは何か」を具体化していく予定です。なお、2018年8月には、韓国側メンバーによる日本視察交流プログラムを実施する予定です。

 


日韓移住者交流事業(助成:公財財団法人 トヨタ財団)については、こちらをご覧ください。

 

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