活動報告

近年、NGOは人道支援・開発援助分野でますます重要な役割を担うようになっています。OECDによると、主要なドナー国政府は、ODAのうち170億ドルをNGOを通じて拠出しています。さらに、先進国のNGOは人道支援・開発援助のための資金300億ドルを民間から調達しています。このように、支援分野において重要性を増すNGOの役割とその高い専門性は、各国政府の「戦略的パートナー」としてのNGOの立場を明確にし、効率的な取り組みと得られる成果の最大化に寄与してきました。

 

人道危機、貧困・格差の拡大、気候変動の影響など、世界の持続不可能性が高まる中、ODAの実施においてもNGOと政府機関の協働は益々重要となっていることを受け、日本国際交流センター(JCIE)では、国際協力NGOセンター、ジャパン・プラットフォーム、SDGs市民社会ネットワークとの共催で国際セミナー「開発援助・人道支援における戦略的パートナーとしてのNGO」を2018年6月6日に衆議院第一議員会館 国際会議室において開催し、NGOと政府機関が真に対等なパートナーとして協働するために、米国の経験から学び、NGOと政府が共に取れる方策について議論と提案を行いました。セミナーへは12名の国会議員をはじめ、外務省、大学、NGO・NPO、メディアから計76名の参加がありました。

 

本会合には、 先ごろ発足した超党派の議員からなる「NGO・NPOの戦略的在り方を検討する会の議員に議論に加わっていただきました。JCIEの日米政治交流プログラムの一環で、2015年に日本の国会議員とNGOリーダー8名からなる派遣団が、日米両国がパートナーとしていかに有効に人道的政策対応について協力することができるかを目的にワシントンDCを訪問しました。その際の議論が発端となり、帰国後、参加した議員とNGOのメンバーの間で開発援助と人道支援における日本の役割の強化についての協議が重ねられ、「検討する会」の発足に至ったものです。

 

JCIEでは、2015年の訪米団に続き、2017年にNGOリーダー3名による訪米プログラムを実施。2017年6月7日にはその成果を国会議員グループに報告、今後の活動指針について議論を行いました。NGOグループも独自に戦略会議をかさねるとともに、米国法人JCIEが中心となり、二つのミッションの成果をもとにフォローアップ調査を行いました。本国際セミナーに先立ち、レポート「開発援助・人道支援における戦略的パートナーとしてのNGO アメリカの経験から日本が学べること」を出版いたしました。政府とNGOの戦略的パートナーシップとは何を意味し、そのようなパートナーシップはどのようにして生まれたのか、日本の政府とNGOの関係強化にも役立つ10の教訓をまとめています。是非ご覧ください。出版ページはこちら

 


 

国際セミナー

「開発援助・人道支援における戦略的パートナーとしてのNGO」

 

日時: 2018年6月6日(水)13:30-18:30
会場: 衆議院第一議員会館 国際会議室
共催: 特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター
  特定非営利活動法人 ジャパン・プラットフォーム
  一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク
  公益財団法人 日本国際交流センター
   

 

 

 

 

基調講演 「NGOと政府機関:米国の経験」

米国より特別参加のアン・リチャード 元米国国務省人口・難民・移民担当国務次官補、ジョージタウン大学講師/センテニアル・フェローによる基調講演が行われた。同氏は、米国のNGOが人道支援や開発分野でどのように貢献してきたか、そして政府と如何にパートナーシップを組んできたか、米国における政府とNGOの関係性について以下のように述べた。

 

 

資金があり実行団体を必要としている政府。専門性と現場の情報を持っているNGO。政府とNGOの双方向の流れがあり、そして相互尊重の関係があることが重要。

 

 

アメリカ政府は毎年300億ドル以上をODAとして拠出しており、そのうち3分の1以上は保健や教育、22%は人道支援のために活用されており、OECDによると70億ドル以上は非政府団体を通じて使われている。NGOは分散していて、個々に独立性が高く、必ずしも相互に協力しあうわけではないデメリットもあるが、訓練された現場スタッフがいて、政府や軍隊など外部から来る人より迅速にそして現地コミュニティと深く関わり合いながら活動できるメリットがある。特に米国は、歴史的にも非営利セクターが一般社会から認知され、強い力を持っており、NGOは人道支援・開発援助で大きな役割を果たしてきた。

 

政府は、大使館がない地域や首都以外などにNGOと連携して支援を行えることに加え、政府が入手できない現場の情報をNGOを通して得ることができる。またNGOにとっても、自分たちの行いたいことに対して政府に助成を申請し、いかに使うか決めていけるという利点がある。NGOは政府が指示する内容に添うだけでなく、活動の提言も行う。NGOは現場で救援が必要としている人にインタビューをしたり、生の情報をワシントンやニューヨークに発信し、今、何が必要とされているのか議会で証言してもらうこともあるなど、政府とNGOは相互に有益な戦略的パートナーである。

 

 

 

イニシャルリマークス

柴山昌彦 衆議院議員(NGO・NPOの戦略的あり方を検討する会 幹事長)より、2015年9月に参加した訪米プログラムの結果およびそれを踏まえた日本の問題点についてのイニシャルリマークスが行われた。

 

”米国では、公的な活動をする個人・団体が、政府にしっかり認知され、協力関係が構築されている点が日本と大きく違う。日本におけるNGOの地位の低さ、日米のカルチャーの違いこれを政治の力で正していく。

 

 

2015年9月、JCIEの事業でワシントンD.C.を訪問しアメリカのNGOリーダーや国務省との意見交換の機会を持ったことが、この度NGO・NPOの戦略的あり方を検討する会発足のきっかけとなった。アメリカでは教育分野が大きな影響を持っていると感じ、学生を含めて社会貢献に対する思いが深い印象を持つ。公的な活動をする個人、団体への認知と尊敬の度合いが日本とまるで異なる。日本の状況の問題点の一つは、間接経費、オーバーヘッドコストなどNGOで活動する方々への資金的援助の額およびその扱いが不十分であることだと認識している。日本の政府とNGOの関係のみならず、国際的なNGOとの連携にもつながると考え、検討する会の立ち上げに至った。また、寄付に関する税制面やNPO債などの金融面でも立法府としてサポートしたい。

 

 

 

 

米国の経験からの教訓

このセッションでは、モデレーター ジェームス・ギャノン(米国法人日本国際交流センター事務局長)が3人のパネリストに3つの質問を投げかける形で進められた。

 

 

Q1: アメリカのNGOが戦略的パートナーとなるまでどのように成長したか、

訪米で得た知見は何か?

Q2: 日本の政府とNGOが学び取れることは何か?

Q3: 日本のNGOが政府と戦略的パートナーになるためには、何が必要か?

 

 

 

 

“(米国でも)NGO側がさらに自身の活動を効果的にするために、自分たちで立ち上がる努力をしている。”

石井宏明 難民支援協会 常任理事

 

訪米調査では、政府とNGOの連携が戦略的に図れている実績を国務省やNGO関係者に直接聞くことができた。NGO側がさらに自身の活動を効果的にするために、自分たちで立ち上がる努力をしている点を直に学んだ。アメリカと日本では社会が異なるため、そのままコピーはできないが、日本の政府とNGOの関係を強化する上で学ぶべき点は多くある。

 

 

NGO自身も努力をして、一般社会からサポートを得られるかどうかが鍵。”

柴田裕子 ジャパン・プラットフォーム 緊急対応部部長

 

アメリカで学んだことは3つある。1つ目は、アメリカでは1990年代だけでマッチング・プログラム・グラントとして約180億円をNGOの能力強化のために拠出している。しかもただお金を出すだけでなく、会計ツールやモニタリングツール開発、また企業との連携戦略構築などそれぞれのNGOの活動にあった特定の課題の専門性を高めることに使われている。助成を受けたNGOの予算規模は増えており、長期的に政府への依存が少なくなったという結果が出た。2つ目は、能力強化の支援はインターアクションという中間組織を中心に流れたことにより、セクター全体の能力強化につながった。日本のように規模の小さいNGOが数多くある中では、中間組織をうまく使って全体で連携させていく工夫の必要がある。3つ目は、アメリカでは、NGOは一般市民・一般社会に支えられているサポート基盤があり、発言力そして影響力を持っている。これが政府がNGOを戦略的パートナーとする理由である。NGO自身も努力をして、一般社会からサポートを得られるかどうかが鍵。

 

 

“米国とは国の成り立ちが違う。アメリカのマネをするべきではないが、アメリカから学ぶ経験・ケースはたくさんある。

若林秀樹 国際協力NGOセンター 事務局長

 

米国とは国の成り立ちが違う。自由を求めて海を渡った米国人。自分ができることは自分で勝ち取り、コミュニティができることはコミュニティがやり、できないことを政府に頼む。一方、日本は中央政府集権国家であり土壌が全く異なる。また、米国では、専門家であるNGOが政府へ、政府からNGOへ、または国際機関へ、シンクタンクへなどリボルビングドアがあり、専門力・技術力の均質化が成り立っている。アメリカのマネをするべきではないが、アメリカから学ぶ経験そしてケースはたくさんある。

 

 

出席した国会議員からは、NGOの処遇の改善、財政基盤の弱さ、人材確保・流動性について質問や指摘があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国際協力におけるNGOの役割を強化する

このセッションでは、小美野剛 CWS Japan 事務局長をモデレーターに、国際協力におけるNGOの役割を強化するために何ができるのかについて、アメリカの何を参考にしていくのか、日本のNGOの成長戦略をどのように描いていくのか、日本政府、NGO、経済界、アカデミアそれぞれのセクターの役割はどうあるべきかについて3人のパネリストと議論を行った。

 

 

 

 

 

 

“SDGs時代の「ODA」のあり方の変革NGOは鍵となる存在で、大胆に活用することを提言。”

稲場雅紀 SDGs市民社会ネットワーク 専務理事、アフリカ日本協議会国際保健部門ディレクター

 

SDGsの三つのキモである、「貧困をなくし、格差を減らす」「持続可能な環境・経済・社会に移行する」、「誰一人とりのこさないで実施する」を2030年までに達成するために、SDGs時代のODAとして、ODAを「4つの軸」に変革させることを提案したい。1、「誰一人とりのこさない」世界をつくるODA。2、紛争・災害から人々の安全を守るODA。3、貧困・格差をなくす、能力の高い政府機関を育てるODA。4、持続可能な力強い経済をつくるODA。これらの達成のために、NGO/ODA連携の司令塔にNGO出身者を採用し、NGO・外務省・JICAのハイレベルな協議枠組みを設置するなど、NGOの大胆な活用を行うべきだ、と考える。

 

 

”世界のどこの現場でもいろんなニーズがある。より多くの支援をより多くの人に送るためには、現地での存在感を高める必要がある。”

山本理夏 ピース・ウィンズ・ジャパン 海外事業部長

 

事業実施型団体として現場で日々活動しているピース・ウインズ・ジャパンの実際の活動を踏まえて、国際協力の中で強い存在になるためNGOのどのような役割を強化させていくかについての方法論と留意点について指摘する。世界の様々な現場には多様なニーズがある。単独で応えられることには限りがあるため、より多くの支援をより多くの人に送るためには、現地での存在感を高め、協力者を増やす必要がある。つまり、現場に決定権を持った人が駐在し、人的人脈をつくりあげ、事業の実績をもとに提案を行うこと。東京で作って東京から発信しても意味がない。現場で交渉・調整をするコーディネーター、現場で必要とされている分野の専門家、煩雑な事務作業を透明性と説明責任を持って着実に遂行する人材が必要。現状はNGOには、きつい、やすい、おもしろくない、将来がない、といった四重苦がある。資金だけでなく、人材も含めた総合的な対応が必要。

 

 

“日本政府(外務省)の立場として、NGOは顔の見える重要なパートナーと認識している。”

牛尾 滋 外務省 国際協力局審議官

 

日本政府(外務省)の立場として、NGOは顔の見える重要なパートナーと認識している。2015年6月にNGOとODAの連携を高め、協働していくことを目的とした、NGOとODAの連携に関する中期計画が策定された。中期計画では、外務省とNGOの連携について、①NGOの開発協力活動に対する資金面での協力、②NGOの能力向上に対する協力、③開発協力政策やNGOとの連携に関するNGOとの対話を軸としている。NGOは開発協力における政府にとっての重要なパートナーであり、NGO と市民社会との連携を戦略的に強化したい。

 

 

場内からは、国際協力に携わるアクターの多様化を受け、NGOとの差別化をどう図ればよいか、また、アメリカから学べる点はあるか、と質問があった。 

 

これを受けアン・リチャード氏は、米国では救援が必要な所に迅速に駆けつけ、それに必要十分な資金を集めることができ、左派右派、超党派等の多様な政治家から多くの支持を得ていることをNGOの特徴として挙げた。また、集めた資金の9割は事業費に使用していることを示し、有効に使っていることを明らかにする必要もあるとした。職員に対して研修を行い、大きな問題に対処できるだけの能力向上をサポートすることも重要とし、こうした努力は一朝一夕でできるものではなく、米国においても何十年と積み重なった努力の末、培った力だと回答した。

 

 

 

 

次なる段階へ

鈴木馨祐 衆議院議員(NGO・NPOの戦略的あり方を検討する会 事務局長)より、政治とNGO・NPOとの連携・協力に繋がる次なる段階についての発表が行われた。

 

“アジアにおいては地政学的緊張が高まっている状況で、国の枠組の変化に伴い、難民などいろいろな課題が発生している。今まで以上にNGOの活動領域が広くなっていくキャパシティビルディングのスピードとどうマッチングさせていくかスピーディに解決していきたい

 

 

NGOの働きは素晴らしいが、社会全体のイメージとしてNGOは善行をするボランティアだというイメージを持つ人が多いが、実は高度な専門性を持つプロフェッショナルの集団である。このギャップをどうやって埋めるかが、議連の課題だと思っている。日本は人生100年時代に突入し、昔のように大学卒業、入社、定年退職、年金生活というキャリアパスの維持は難しい。様々な社会課題に対する問題意識を持った一人ひとりは、決して一つの立場に収まらず、様々な立場に変わりながら生きていく時代に突入すると考えられる。政治家、NGO関係者、シンクタンク、企業人など人材交流をいかに進めるのか、そのボトルネックをなくすことが政治家の役目。積極的かつ戦略的なNGOとの関係を深めるために、本当のプロフェッショナルとして活躍の領域を広めてもらうことを進めていくべきだということを、前向きに考えている。

 

 

 

木馨祐議員のブログ

NGO・NPOに真のプロフェッショナルとしての位置づけを。~「NGO・NPOの戦略的あり方を検討する会」の立ち上げ~ 2018年4月25日

NPO・NGO/コレクティブインパクトに関し、政府へ申し入れ 2018年6月6日

 

 

 

クロージング

谷山博史(国際協力NGOセンター 理事長)より、会終了の挨拶が行われた。

 

“戦略的パートナーは共通の目的があって初めて可能。どちらかが一方を戦略的に使うのではなく、双方向で対等、それぞれの強みを生かして戦略的になることが重要”

 

多くの議員が参加した議連の発足はNGOの我々に大きな勇気を与えてくれる。どんな支援が政府に求められるのか、これについては対等に話し合っていきたい。市民社会スペース、市民社会の政策環境、独立したアクターとして活動できるスペースの確保、NGOが持つ強みを発揮できる環境を一緒に作り、NGOがもっと市民からサポートもらえるような形を作っていきたい。

 

 

 

 


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