活動報告

日本国際交流センター(JCIE)では、公益財団法人トヨタ財団の助成を得て、「越境的移動における情報保障の社会基盤―公正で安定した移住の実現に向けて」(2019年11月~2021年10月)を実施しています。

 

日常的に情報から疎外されやすい、ろう者、難聴者、知的障害者などの「知る権利」を保障するコミュニケーション支援として取り組まれてきた「情報保障」は、社会に異なる言語・文化をもつ人々の流入と定着が進むにつれて、生活に必要な情報などの多言語化といった外国人の情報アクセシビリティの観点から、外国人に対する多言語サービスへと広がりつつあります。

 

外国人・移住労働者は国境を越えて移動するがゆえに、言語の問題とそれに伴う情報の欠如、新たな地域社会とのつながりの弱さ、さらに苦情・救済手続きへのアクセスの躊躇から、脆弱な状態に置かれやすく、大幅なディーセント・ワークの欠如を経験することが多くあります。そのため、移住先であるホスト社会における「情報保障」の取り組みは、情報弱者として外国人・移住労働者が直面する社会的・経済的問題、格差を解消するうえで欠かせないことは言うまでもありません。

 

しかし、外国人・移住労働者の抱える問題や脆弱性は、移住した後、ホスト社会との接触のみによって規定されるものではありません。移住する前に、受入れ国の制度や条件についての不十分な理解により準備費用が増大したり、移住先における労働条件や労働実態についての理解のないまま雇用契約を結んだりするという、正確な情報の欠如の中で移住者が渡航を決定するという意図せざる帰結として現れる側面が強いのです。

 

その背後には、アジアにおける移住とりわけ、労働力移動を巡って送出し国と受入れ国の政府は経済政策上または雇用政策上の理由で送出しと受入れの拡大に力を入れる一方で、正確な情報提供をはじめとする移住プロセス全体におけるセーフティネットの構築に向けた取り組みが弱いことがあります。さらには、こうした双方の政府の姿勢と相まって、アジアにおける移住にかかわる情報提供が、民間の語学学校や人材斡旋機関を中心とした移住ビジネスによって成り立っている現状があります。すなわち、移住する者は、現在の国家と市場(人材ビジネス)による情報提供に頼っていては、公正で安全な移住を実現することはできません。

 

こうした背景から本事業は、外国人・移住労働者の「知る権利」を保障する情報保障を、移住する前を含む移住プロセスにおいて必要不可欠な条件として位置付け、移住する者にとって正確で信頼できる情報へのアクセシビリティを可能とする情報保障の在り方を模索することを目的としています。具体的には、アジアの主な移住先である日本と韓国で活動する移住者とそのコミュニティ、労働者の送出しの後発者として国際労働市場におけるシェア獲得を巡る競争に積極的なネパールとミャンマーにおける移住(労働)経験者と関連組織、そして外国人・移住労働者政策の専門家による現地視察調査やワークショップなどを通じて情報保障に向けた協働型アクションプランの策定を目指します。また、誰もが情報や意見を発信する主体となるべきという「情報の発信の保障」という戦略的視点に立って、移住に必要な情報を有する受入れ国側による単なる情報提供にならないよう、移住労働経験者をはじめとする送出し国にける組織と日本と韓国の移住者コミュニティのネットワーキングを図り、移住する当事者からの問題提起をホスト社会に伝えることに努めます。

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