活動報告

日本国際交流センター(JCIE)は、「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会(委員長:武見敬三 JCIEシニアフェロー、参議院議員)の活動の一環として、2019年11月、塩崎恭久衆議院議員を委員長とする「保健分野のODAのあり方を考える特別委員会」を立ち上げ(メンバー以下参照)、2020年11月30日に最終提言「ポスト・コロナのわが国の国際保健外交―求められるODA政策等のパラダイムシフト」を発表しました。また、本提言に基づき自民党提言「ポスト・コロナのわが国の国際保健外交に向けた提言」がまとめられ、12月18日に了承されました。

 

 

地球規模課題としての保健は、1990年代半ば頃からHIV/エイズの世界的な感染拡大に対する危機感の高まりを受け、ミレニアム開発目標(MDGs)ならびに持続可能な開発目標(SDGs)における主要課題として位置づけられ、一定の成果を挙げてきました。しかし2020年、世界は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに見舞われました。その社会・経済的影響は甚大で、健康危機に対して強靭な社会システムを構築するための政策の大転換が求められいます。SDGs達成に向けて成し遂げてきた成果が大きく後退する可能性も危惧されており、さらに今後は、世界人口の高齢化、非感染性疾患(NCDs)による疾病負荷の増大等に伴う医療・介護サービス需要の増加も予想されます。社会全体として、新興・再興感染症を含む益々多様化する健康課題への適応力を高め、「誰一人取り残さない」世界を実現するためには、健康危機による直接・間接的影響を受けやすい人々に焦点を当て、個人や家族に最も近い地域レベルのプライマリ・ヘルス・ケア(PHC)の拡充と、強靭で包摂的な保健システムの構築に一層取り組む必要があります。また、COVID-19が明確化させたように、医療と公衆衛生を地域で連携させることが重要であり、そうした医療と公衆衛生が一体化したシステム強化を世界規模で効果的に支援することは、次なる感染症危機に対するグローバルな対応力及び枠組みを強化することにつながります。

 

日本は、経済成長に先立ち国民皆保険制度を導入し、世界でトップクラスの健康長寿国となった実績に基づき、過去20年にわたり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(注)をはじめとするグローバルヘルス分野の国際的な議論を主導してきました。さらに2015年には「平和と健康のための基本方針」が策定され、省庁を超えてグローバルヘルスを推進する指針が示されました。開発協力においても、二国間・多国間援助を通じて、感染症分野、保健政策、病院建設等の医療施設・資材に対する支援実績を重ね、グローバルヘルス分野の重要なステークホルダーとして世界に認知されてきました。しかしながら、政府内の体制としては現状、先に述べた「平和と健康のための基本方針」の推進体制は不明瞭な状況です。また、日本のODA全体の特徴としてインフラ、エネルギー分野の割合がG7では突出して高く、保健分野に充てられる割合はG7各国の保健ODAの支出実額を踏まえたG7加重平均(21.4%,2018年)の4分の1程度(5.4%, 2018年)です。

 

グローバルヘルスを重点分野に掲げる我が国としては、その立場にふさわしい保健ODAの拡充が不可欠であり、加えて、国際機関と二国間援助機関がより相乗効果の高い連携を強化し、行政、企業、市民社会(CSO)、アカデミアの参画による新たな国際協調のあり方を模索する必要があります。また、今後は、日本が有する研究開発力を、日本そして世界の健康安全保障のためにより一層生かしていくことも必要です。特に、新型コロナ禍で主導国が不在の「Gゼロ」という現状においてこそ、個人の自由と法の秩序を尊重する民主主義陣営の一員として、また「人間の安全保障」を外交の柱に位置付けてきた国として、国際協調の下で確固とした姿勢で対応を進めていくことが求められています。

こうした状況を踏まえ、本委員会は、保健分野の国際貢献の拡充に求められるODAのパラダイムシフトに向けて、以下の6点を提言しています。

 

提言1:司令塔機能の明確化、強化
提言2:新たなグローバルヘルスの貢献目標の設定
提言3:「戦略的」選択と集中
提言4:マルチ(多国間援助)とバイ(二国間援助)の連携強化
提言5:国内外NGO等とのパートナーシップ強化
提言6:グローバルヘルスの変化に応える革新的人材の育成強化

 

(注)UHCとは「すべての人が適切な予防、治療、リハビリなどの保健医療サービスを、必要な時に支払い可能な費用で受けられる状態」(WHOによる定義)

 

特別委員会およびワーキンググループによる活動 

2019年11月8日(金)

 

第1回特別委員会、第1回ワーキンググループ会合

 

2020年1月17日(金)

 

第2回ワーキンググループ会合

 

2020年1月30日(木)

 

 

PMAC2020/UHCフォーラム2020 サイドミーティング ”Reformulating Japan’s Global Health ODA to Meet Changing Global Needs”(詳細はこちら

2020年2月14日(金)

 

第2回特別委員会、第3回ワーキンググループ会合

 

2020年4月10日(金)

 

第3回特別委員会

 

2020年6月23日(火)

 

第33回「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会にて中間報告

 

2020年7月2日(木)

 

第1回テーマ別セッション

 

2020年7月9日(木)

 

第2回テーマ別セッション(ゲスト:葛西健 WHO西太平洋地域事務局長)

 

2020年7月29日(水)

 

第3回テーマ別セッション

 

2020年8月19日(水)

 

第4回ワーキンググループ会合

 

2020年8月21日(金)

 

塩崎恭久委員長とNGO有識者との意見交換会

 

2020年8月24日(月)

 

第4回特別委員会

 

2020年10月27日(火)

 

第5回特別委員会

 

2020年11月5日(木)

 

第34回「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会にて最終案を報告

 

2020年11月9日(月)、13日(金)

保健分野のNGO並びに連携推進委員会委員有志との意見交換

 

 

特別委員会およびワーキンググループによる調査・分析結果

(その他の調査・分析結果等も、順次、公開を予定しています。)

 

 

 

特別委員会 メンバー

委員長:

塩崎 恭久

 

衆議院議員、「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会顧問

   
石井 澄江 公益財団法人 ジョイセフ代表理事・理事長
稲場 雅紀 GII/IDIに関する外務省・NGO懇談会代表、一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク政策担当顧問
植野 篤志 外務省国際協力局長
牛尾 光宏 茨城県保健福祉部技監兼ひたちなか保健所長、元ベトナム保健省保健政策アドバイザー(JICA専門家)
大河原 昭夫 公益財団法人 日本国際交流センター(JCIE)理事長、「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会幹事
岡村 恭子 世界銀行グループ保健・栄養・人口局栄養専門家
小野 啓一 外務省地球規模課題審議官
小寺  淸 特定非営利活動法人 ウォーターエイドジャパン理事長、英国海外開発研究所上級客員研究員
高須 幸雄 国際連合事務総長特別顧問(人間の安全保障担当)
瀧澤 郁雄 独立行政法人 国際協力機構(JICA)人間開発部審議官【ワーキンググループ主査】
戸田 隆夫 独立行政法人 国際協力機構(JICA)上級審議役
武見 敬三 参議院議員、JCIEシニア・フェロー、「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会委員長
仲  浩史 東京大学未来ビジョン研究センター教授
中谷 比呂樹 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)理事、同グローバルヘルス人材戦略センター長、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティチュート(KGRI)特任教授・上席所員、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)会長
平野 克己 日本貿易振興機構アジア経済研究所上席主任研究員
福島 靖正 厚生労働省医務技監
藤田 則子 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)国際医療協力局連携協力部長
古屋 範子 衆議院議員、「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会委員
牧島 かれん 衆議院議員
馬渕 俊介 パンデミックへの備えと対応のための独立パネル(IPPR)事務局(ビル&メリ
ンダ・ゲイツ財団休職中)
三村  淳 財務省国際局審議官
門間 大吉 日本生命相互会社特別顧問

 

※内閣官房健康・医療戦略室はオブザーバーとして参加。

 

ワーキンググループ メンバー

伊藤 聡子 公益財団法人 日本国際交流センター(JCIE)執行理事
駒田 謙一 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)国際医療協力局運営企画部保健医療開発課
坂元 晴香 東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室特任研究員
鈴木 智子 公益財団法人 日本国際交流センター(JCIE)チーフ・プログラム・オフィサー
瀬古 素子 元独立行政法人 国際協力機構(JICA)専門家、グローバルファンド技術審査委員
瀧澤 郁雄

独立行政法人 国際協力機構(JICA)人間開発部審議役(再掲)【主査】

戸邉  誠
独立行政法人 国際協力機構(JICA)人間開発部国際協力専門員
永谷 紫織 公益財団法人 日本国際交流センター(JCIE)プログラム・オフィサー
野村 周平 慶應義塾大学医学部医療政策・管理学准教授(特任)、東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室助教
吉田 智子 米国法人 日本国際交流センター(JCIE/USA)シニア・プログラム・オフィサー
外務省、財務省、厚生労働省関係者

        

 

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