活動報告

新型コロナウイルス感染症拡大により、世界中が甚大な影響を受けています。日本をはじめ多くの国からビザ発給や出入国の制限措置が講じられ、国際的な人の移動はほぼ停止状態となっており、日本国内では緊急事態宣言が発表されるなど、従来とは異なる状況が生じています。こうした緊急時において社会的・経済的な基盤が脆弱になりやすい外国人住民の現状を把握し、健康や生活、雇用などにおいて不安を払拭し、安全・安定を確保していくための対応が喫緊の課題となっています。

 

日本国際交流センター(JCIE)では、過去3回(2014年、2015年、2017年)、アンケート調査を通じて地方自治体における外国人住民に対する施策の展開状況や課題等を把握してきたことから、新型コロナウイルス感染症拡大にともなう外国人住民への影響と自治体による対応・施策の実施状況を把握・整理すべく、「新型コロナウイルスによる外国人住民への影響についての自治体アンケート」(2020年5月中旬)を実施しました。

 

報告書の完成に合わせて、2020年8月19日には、調査結果報告会をウェビナーの形で開催し、地域で多文化共生活動に携わっている自治体の関係者を始め、研究者、NPO/NGO、メディア、財団など約110名の方々に参加いただきました。報告会では調査結果を報告するとともに、外国にルーツをもつ当事者として社会的企業家の立場から外国人・移民の困難に取り組む岡村アルベルト氏(one visa代表取締役)と、地域で外国人住民へのサービスや多文化共生を進めている松岡真理恵氏(浜松国際交流協会事務局次長、多文化共生コーディネーター)をお招きし、多言語対応や、自治体と諸関係機関・団体との連携の状況やあり方、外国人住民へのセーフティーネットの保証等、コロナ禍での外国人住民への対応を巡る論点を様々な角度から議論しました。(当日のプレゼン資料はこちら

 

報告会の様子はこちら

 

「新型コロナウイルス感染症拡大による外国人住民への影響についての自治体アンケート調査」の報告書及び主な調査結果は以下の通りです。なお、詳しい調査結果及び分析は報告書をご覧ください。

 

報告書

調査結果報告書ー本編

調査結果報告書ー概要編

 

 

調査実施概要

調査対象:都道府県及び政令指定都市

調査方法:質問票をメールにて送付、メール・回答用ウェブページにて回収

回答率:都道府県 78.7% 政令指定都市 80% (合計 79.1%)

調査項目:新型コロナウイルス感染症拡大による外国人住民からの相談・問い合わせ状況、

     自治体による相談対応・情報提供の支援状況

 

主な調査結果

1)新型コロナウイルス感染症拡大による外国人住民への影響について

新型コロナウイルス感染拡大前に比べて外国人住民からの相談・問い合わせが増えていると回答した自治体が71.6%(「ある程度増加している」(52.8%)、「急増している」(18.9%))となり、外国人住民からの相談・問い合わせが増加傾向にあることがみられた。

 

また、外国人住民からの相談・問い合わせの内容として「公的生活援助・支援金制度」(67.9%)が最も多く、次いで「在留資格の変更・更新など」(50.9%)、「失業・解雇・賃金未払いなどの労働問題」(47.2%)、「生活困難(家賃未払いなどの居住問題、住民税・光熱費未納などを含む)」(41.5%)となった。コロナ禍において外国人住民の多くが、経済的困難と在留資格への不安を抱えていることがわかる。

 

一方、外国人住民の人口動態についてその数を答えた自治体は9件(16.9%)に過ぎず、外国人住民の人口動態を把握している自治体は極めて少ない結果となった。

 

2)新型コロナウイルス感染症拡大にともなう支援策について

外国人住民への相談・情報提供における多言語対応においては、相談窓口(98.1%)と新型コロナウイルス及び予防方法についての情報発信(93.8%)において最も進んでおり、一部の自治体では、新たな専用相談窓口を設置するなど外国人住民への対応への積極的な姿勢もみられた。一方、PCR検査を含む医療情報においては回答自治体の75%が多言語による情報発信をしていないなど情報によって対応の違いがみられた。

 

相談や情報提供における連携状況においては、「特に連携していない」との回答は7.5%に過ぎず、回答したほとんどの自治体が地域内外の諸機関・団体と何らかの連携・協力を行っている。また、他機関・団体と連携しているとの回答した49件のうち、連携機関が1つのみである自治体は5件(10%)に過ぎず、複数による連携・協力を進めていることが読み取れる。

 

一方、地域の外国人住民を対象とした施策や支援策・救援策として、公的支援策の運用にかかわる対応を中心に、地域の留学生への経済的サポートを中心とした教育・留学生への対応や、情報発信と相談の充実化に向けた情報発信・相談窓口への対応など、一部の自治体においては独自の支援策がみられた。

 

3)まとめ・考察

新型コロナウイルスの感染拡大とその長期化により、その影響が社会経済、生活など様々な側面から深刻化しつつあるなか、外国人住民の抱える不安、悩みを解決するために、自治体では多言語による相談や情報提供を積極的に行っている様子がみられた。また、取り組みの効果を高めようと、外国人コミュニティや地域のNPO/NGO、医療機関、専門家・団体など、地域内外の諸機関・団体と連携・協力を進めている様子もみられた。

 

しかしながら、外国人住民への対応の進展がみられると同時に、取り組み・アプローチの視点の不十分さもみられた。今回の新型コロナウイルス感染症拡大という緊急事態に際して、地方自治体において必ずしも敏速な外国人住民の動態把握が行われているとは言い難い。また、進展が明確に確認された多言語による相談対応や情報提供においても、多言語対応をインターネットや翻訳機械に頼っている自治体も散見されるなど、多言語化の「質」の確保という課題もみられた。

 

さらに、地域内外の諸機関・団体との連携・協力の内容も情報の共有や提供、周知が中心をなす一方、緊急時において国と市町村との調整を行いつつ、地域(広域)としての支援策・方針をまとめ地域内において良質かつ適切な情報提供と問題解決を可能とする条件整備を行う役割を担う都道府県における外国人住民への対応の課題も浮かび上がった。

 

言い換えれば、今回のアンケート調査の結果からは、外国人住民が抱える不安・悩みの解決のための体制を整備・構築していく自治体の取り組みの過渡的状況が示唆された。その過渡的状況において試されている新しいアプローチ・取り組みが緊急時の対応という一過性のものにならず、問題・課題解決型の仕組みとして築かれていくことためにも、外国人住民のニーズや現実を踏まえた対応・支援の「質」と実効性を高める体制づくりという地道な工夫が改めて求められているといえる。

 

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