活動報告

日本国際交流センター(JCIE)は、2020年8月5日に、第2回 民主主義の未来 Webinar 『フィリピンに学ぶ、新型コロナ対策の民主主義への脅威 』を開催しました。本ウェビナーは、民主主義の未来プロジェクトの一環として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が民主主義の価値や市民社会に対して与える影響、そして民主主義の将来について意見交換を行う場を提供するウェビナーシリーズです。本シリーズは、去る2月27から28日に開催を予定していた国際シンポジウムがCOVID-19の感染拡大により中止したことを受け、そのモメンタムを繋ぐため、アジアの市民社会リーダーを招き非対面方式で開催しています。

 

第2回目のウェビナーでは、フィリピンのマクシーン・ターニャ・ハマダ氏(リーダーシップ・エンパワメント・民主主義研究所 民主主義戦略・パートナーシップ・フェロー)をパネリストとしてお招きし、コロナ禍でのフィリピンの厳しい状況について包括的に講演をいただきました。日本から参加した国会議員、CSOリーダー、学者、メディアのほか、米国の民主主義関連団体からの参加者計約50名とともに、フィリピンの民主主義や市民社会の役割について議論を深めました。

 

 

 

ウェビナーで討議された議論は以下の通りです。

当日、Youtube上でライブストリーミングした映像もこちらからご覧いただけます。

 

会議要旨

 

フィリピンの民主主義を俯瞰

フィリピンの民主化を実現した1986年のピープル・パワー革命を契機に、フィリピンでは市民社会に多様なアクターが形成され、より積極的な市民参加が生まれてきた。革命から30年以上経った現在のフィリピンの民主主義の状況は、世界的な人権監視団フリーダムハウス(米国)が2020年3月に発表した世界の民主度(Freedom in the world 2020)によると、100点中59点、Partly Free (部分的な自由)にとどまっている。

 

また、エコノミスト誌のインテリジェンス・ユニットが発表したDemocracy Index 2019によると、特に Functioning of Government (政府の機能)と Political Culture(政治文化) の点で、他東南アジア国(マレーシア、インドネシア、タイ)と比較しフィリピンは劣位にある。フィリピンの民主主義全体の評価としては、2016年にマークした6.94 (Democracy index 2019, The Economist)をピークに徐々に下降基調で、民主主義が後退しているグローバルなトレンドと同じ傾向をコロナ前から示していた。

 

COVID-19に対する政府の対応

フィリピンのドゥテルテ大統領は、2007年制定の「人間の安全保障法」を修正し、7月に「反テロ法」に署名し、同法を成立させた。治安当局の権限を大幅に強化した法律であり、人権侵害の余地が大きくなるため、人権団体だけでなく多くの国民からも「なぜこのパンデミック下に成立させる必要があるのか」と疑問と批判が出ていた。

また、政権に批判的な報道を続けてきたフィリピンを代表する放送局、かつフィリピン最大のメディア企業である、ABS-CBNの放送免許更新を否決する議会の判断が出された。さらに、大統領に批判的な姿勢で知られた著名な女性ジャーナリスト、マリア・レッサ(Maria Ressa)氏が逮捕されるなど、報道の自由が侵害されている。

 

上記のようにCOVID-19に乗じた、政府の行き過ぎた権力行使による民主主義への脅威がある一方、より重大な問題としてフィリピンの人口の2割近くを占める貧困層への影響を忘れてはならない。また、貧困層だけでなく、一つの危機で貧困層に転落する危険性が高いギリギリ貧困ラインの上にいる層にはさらに多くの人が占め、こうした層への対応も政府に求められている。

 

ウイルスを封じ込めるために講じられるさまざまな政策が及ぼす範囲は不均衡で、特に、最も貧しく最も脆弱なコミュニティには届きづらい。これらの人々は、政府のデータベースには数えられず、水や基本的な保健サービスへのアクセスが制限されている。

 

パンデミック下における民主的価値を維持する為の市民社会の役割

このようにコロナのような緊急時において、政府の対応だけでは限りがあるため、市民社会は多様な役割を担うことが期待されており、ひいては、自由や民主主義の維持に資するとされる。こうした動きの中での市民社会の様々な役割で、特に重要なものとして以下が挙げられる。

 

Vanguard : 活動家や市民社会のグループで、様々な課題について率先して矢面に立ち、一番に行動を起こすもの。

 

Discernment Circles:市民社会、アカデミア等のコミュニティグループが集まり、中立的議論の上で、自由にそして安全に意見を言い合える場所やつながり。

 

Stable business as usual civil organization:パンデミック下の混乱した状況下でも、国や政府の支援が市民や地域に滞りなく行き渡るよう補助的な役目を果たすこと。

 

Democracy Entrepreneurs特に若い活動家、小規模ビジネス経営者や社会起業家が、その柔軟な発想やITの活用による迅速な対応でパンデミック下における問題の解決を図る。

 

また、脆弱なコミュニティを保護することは、他のすべての人を保護することを意味する。この文脈で、フィリピンの新しい市民社会グループである、Urbanismo.Ph は、コロナ感染者数と貧困レベルの地域分け、病院への近さをデータベース化し、すべての人に基本的な社会サービスのアクセスが効率よく配分されるように政府の対応を補完する市民社会の活躍も現れている。

 

 

 

 

 

 


民主主義の未来プロジェクトの概要

冷戦終結により共産主義は自壊し、勝利した自由と民主主義が世界に拡散していくと信じられていました。ベルリンの壁崩壊から30年が経った今、世界各地では権威主義的統治手法が拡大し、先進民主国でさえポピュリズムの台頭でぐらつき始めています。今日の世界において、民主主義は顕著に後退していると言っても過言ではありません。

こうした問題意識を踏まえ、JCIEは、国際秩序と普遍的価値が現在どのような脅威にさらされているのかを理解し、日本としてどのような政策を展開できるのか検討する研究プロジェクト「民主主義の未来 -私たちの役割、日本の役割」を2018年に開始しました。

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▶過去のウェビナーシリーズ

2020年6月12日開催 第1回 民主主義の未来 Webinar -台湾とインドネシアから学ぶ、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)と民主主義の未来 –

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