助成対象事業: 「ソーシャル・ジャスティス」(社会的公正の実現)をメインテーマとし、以下の4つの分野に関して民間の非営利団体が日本国内で行う活動。
(1)HIV/エイズの予防
(2)社会的に不公正な立場におかれている人々の経済的自立支援
(3)社会的に不公正な立場におかれている青少年に対する新しい教育機会の創出
(4)上記三分野に取り組む団体の組織基盤強化
公募期間: 2002年10月〜2003年3月19日
応募総数: 160件
助成決定数: 15件
助成金総額: 2000万円(約16万5千ドル)

選考を振り返って

2003年度助成事業を公募するにあたり、助成分野・優先課題の大幅な見直しを行った。見直しの主な目的は、助成対象分野を絞り込むことによって、限りある資金をより有効に活用することであった。新しい助成分野は、当基金のドナーであるリーバイ・ストラウス財団が世界各国共通に導入した新しいグラント・フォーカスに沿って考案されたものであるが、果たして日本の社会課題のニーズに確実に合致するかどうか一抹の不安を覚えながら公募を開始した。結果は、160件と予想をはるかに上回る申請があり、また「こういう助成分野を待ち望んでいた」という声も寄せられ、こうした助成プログラムへのニーズの高さを裏付ける結果となった。2000万円という助成総額の中では、15件しか採択にいたらなかったが、選考に漏れたものの中にも優れた事業や団体が多かった。これからも着実な活動を続けられ、来年以降に再度申請を検討していただくよう期待したい。

選考過程
160件の申請の中から、まず事務局審査にて37件を選び、審査委員による書類審査および審査会議における討議を経て最終候補を選考、さらにこれらをすべて英文化した上で、事務局とリーバイ・ストラウス財団との協議により15件を決定するというプロセスをたどった。審査にあたっては、公表している審査基準と共に、各対象分野の趣旨と優先課題に合致しているかどうかが大きな論点となった。また、各分野におけるモデルとなりうる事業を採択することによって、今後申請される方の参考となるよう当基金の助成趣旨を明確にすることに努めた。来年以降、より明確に助成趣旨・優先課題を打ち出し、新しい助成分野の定着を目指したい。

今年の特徴
以下に分野別の特徴を挙げる。

<HIV/エイズの予防>
 HIV/エイズはリーバイ・ストラウス財団の重要関心テーマであり、助成分野改訂後も引き続き助成対象となった。
 性行動の多様化に伴い、日本でも若年層のHIV感染が高まっている。特に、若年層における異性間の性的接触では、女性感染者が増加しているため、女性への重点的な予防啓発の必要性が指摘されている。昨年は、若い世代を対象とした予防・啓発事業を優先課題としたが、今年はそれに加え、女性に特化した事業も優先課題とし公募を行った。結果としては、若者を対象とした事業の申請が多く、申請事業の半分以上(24件中14件)を占めた。助成を決定した事業も半数(6件中3件)が若者への予防・啓発事業である。残念ながら、女性に特化した予防事業の申請は少なかったが、今後も取り組んでいく必要のある課題であることが伺われた。
 学生主体の団体からの申請が多く寄せられたことも今年の特徴である。学生の団体は、メンバーの入れ替わりが激しいなど、継続した活動が難しい面もあるが、学生ならではの斬新なアイデアと同世代への遡及力に期待したい。
 また、申請事業には、本年11月に神戸で開催される予定であった国際会議(第7回アジア太平洋エイズ会議)との関連性を持たせた事業も数多く見られ、多くの団体が活動を活発化させている様子が伺えた。新型肺炎(SARS)の影響から会議は2005年まで延期されたが、引き続き活発な活動が継続されることを期待したい。

<経済的自立の支援>
 この分野は、社会的に不公正な立場にある人々の経済的自立を促し、支援する事業を対象とした。申請事業にはDV被害者(48件中15件)、路上生活者(48件中10件)の経済的自立を目的とする事業が多く見られた。
 最も申請数が多かったDV被害者を対象とした事業の内容は、自立支援を専門におこなうシェルターの運営など経済的自立を達成するための環境整備から、資格取得などによる就労への道を切り開くための具体的な支援など多岐にわたっていた。企業や行政との連携の下に実施される事業もあり、今後の発展性に期待が持てる。
 路上生活者の経済的自立の支援においては、彼らの経済的自立の達成を、まちづくりや地域振興・再生の一環として捉える動きもみられ、来年以降も、このような多角的な視野による取り組みの申請を期待したい。
 今回の助成が決定した事業は、DV等暴力被害者女性、路上生活者、不登校・引きこもりの青少年を対象とした事業であるが、対象は異なっても経済的自立の支援における共通の課題は、自立達成後のフォローアップなどにより、如何にして自立を持続させていくかであるといえるだろう。一度自立を達成した後の継続した支援は、公的な支援が行き届いていない領域といえるので、今後、NPOに求められる役割が増大すると思われる。
 経済的自立を支援する事業には、銀行による融資や行政からの委託など、多額の資金が投入されている場合もある。少額ではあっても民間助成金ならではの効果的な支援あり方を、今後も検討していきたい。

<新しい教育機会の創出>
 対象を「社会的に不公正な立場におかれている青少年」に絞り、彼らに対して従来にない斬新で創造的、芸術的な手法により、教育を提供する事業を募集した。
 全体的に見ると、不登校児や外国籍児童を対象とした事業が今年も多く寄せられた。外国籍児童を対象とした事業では、従来の日本語指導などの学習指導に加え、アイデンティティの確立、自己尊厳の向上を目的とした事業などが見られたのが特徴である。今後も、多角的な取り組みを期待したい。
 優れた教育プログラムであっても、社会的に不公正な立場にはないと思われる青少年を対象とした事業は、当基金の助成対象とはならない。今回は、残念ながらこのような申請が多かった。来年度以降、本分野の趣旨をより明確にし、申請する方々に理解していただけるよう努力を続けていきたい。
 構造特区の影響もあり、今後、教育の分野におけるNPOの役割、行政との関係など、急速な変化、発展が予想される。民間資金としての役割を検討し、変化に応じたインパクトの高い助成を行うことを目指していきたい。

<組織基盤強化>
 本年は特に、組織基盤強化の助成対象としてふさわしい事業の発掘に力をいれた。組織基盤強化助成とは、特定のプロジェクトへの助成やジェネラル・サポート(運営費助成)ではなく、組織の発展に直接的につながる戦略的な計画に限り助成対象とするものである。この枠を設けたのは昨年からであるが、昨年は、当基金の対象分野に直接合致する事業がなく該当事業なしとなった経緯がある。今年はこの結果を踏まえ、まず、過去に当基金からの助成を受けたことのある団体に応募資格を限り、さらに、応募要項上で組織基盤強化となり得る事業の具体例を記載するなどし、組織基盤強化とは何かを明確にすることに努めた。
 寄せられた14件の申請は、政策提言力強化のための専門性の高い人材確保、組織のアカウンタビリティ強化と評価システムの構築、新規会員開拓、人材育成・研修、ネットワーキング、広報力強化、財務体制の整備など、いずれも質の高い事業であった。今後も、組織の発展の契機となるような助成金をめざし検討を重ねていきたい。
2003年度助成決定事業一覧
2003年度の申請件数と助成額
2003年度新制事業の主なイシュー(助成対象分野別)

 
2003年度助成事業(2002年公募)一覧
(下線部をクリックすると詳細をご覧いただけます)

HIV/エイズの予防:計6団体 6,300,000円
番号 団体名 法人格 所在地 助成事業名 助成額
(単位:千円)
03-01 AIDS&Society研究会議 特定非営利活動法人 東京都 国際機関・会議で発表されるHIV/エイズに関する報告や宣言の翻訳・公開事業 2,000
03-02 「AIDS文化フォーラムin 横浜」運営委員会 - 神奈川県 第10回AIDS文化フォーラムin横浜の開催 300
03-03 東北HIVコミュニケーションズ - 宮城県 HIV/エイズ教育・啓発における行政・教育機関との連携モデルの提言とエイズ予防教育を担うサポーターの養成 500
03-04* アワー・プラネット・ティービー - 東京都 シューティング オン セーフ・セックス:セーファー・セックスとHIV/エイズをテーマにした若者によるビジュアル作品 2,000
03-05* HIVと人権・情報センター 特定非営利活動法人 東京都 若者相互によるAIDS予防啓発「ヤング・シェアリング・プログラム」事業 1,000
03-06* ポジティブ・カフェ・ノーチェ - 長野県 地域の医療・教育機関との連携による青少年への予防・啓発活動 500


経済的自立の支援:計4団体 7,100,000円
番号 団体名 法人格 所在地 助成事業名 助成額
(単位:千円)
03-07 地域生活支援ネットワーク・女性ネットSaya-Saya - 東京都 DV等暴力被害者女性の就労支援事業 2,000
03-08 かながわ・女のスペース“みずら” 特定非営利活動法人 神奈川県 DV被害者母子等への経済的自立支援を行う専門シェルターの運営 2,000
03-09 青少年自立援助センター 特定非営利活動法人 東京都 不登校・引きこもりの青少年に対する就労支援事業(コミュニティー・アンクル・プロジェクト)の普及活動 1,600
03-10 地域自立推進協会 元気百倍ネット 特定非営利活動法人 大阪府 脱野宿生活者へのアフターフォローと路上新聞を通しての経済的自立の支援の強化 1,500


新しい教育機会の創出:計3団体 3,100,000円
番号 団体名 法人格 所在地 助成事業名 助成額
(単位:千円)
03-11 トルシーダ(torcida) - 愛知県 日系ブラジル人青少年による地域住民に対する国際理解講座の実施 500
03-12 美楽光をつくる会 - 宮城県 知的・精神障害児のアートをとおしての社会参加事業 1,000
03-13 スクールズオンライン・ジャパン 特定非営利活動法人 大阪府 不登校、外国人学校の生徒の将来性を育むIT教育の実施 1,600


組織基盤強化:計2団体 3,500,000円
番号 団体名 法人格 所在地 助成事業名 助成額
(単位:千円)
03-14 「主張するTシャツ」を集める会 - 埼玉県 DV法改正と法改正後の施策形成のための政策提言力強化 2,000
03-15 監獄人権センター 特定非営利活動法人 東京都 刑事被拘禁者相談と政策提言に関わる専門職の雇用 1,500



助成事業詳細一覧

(事業名は助成決定時のもの、事業概要の文責は当基金事務局)

【HIV/エイズの予防】
特定非営利活動法人 AIDS &Society研究会議(東京都)
URL:http://www.asajp.org
 
助成金額:200万円
事業名:国際機関・会議で発表されるHIV/エイズに関する報告や宣言の翻訳・公開事業
 
エイズとの闘いが国際社会共通の課題として受け入れられ、国際機関から貴重な報告書や声明が数多く公表されているにも関わらず、大半は英語であるため、日本国内で情報を必要としている人のもとへ届いていない。たとえ和訳されるとしても時間がかかるため、時機を逃していることが多いのが現状である。
 本事業では、エイズに対する差別や偏見をなくすための宣言、予防教育のための方法論や一般向けの啓発資料など、国連やUNAIDS、その他の国際機関などが発表する文献のうち、日本における今後のエイズ対策において必要・有益とされる重要な資料を和訳し、本団体のウェブサイトとニュースレターにて公開する。エイズNGOのアンブレラ組織としての専門知識、ネットワークを活かした汎用性の高い事業である。翻訳した情報を幅広く公開し、より多くの人に活用してもらうことで、日本のエイズ予防対策の推進に役立つことが期待できる。

「AIDS文化フォーラム in 横浜」運営委員会(神奈川県)
URL:http://www.yokohamaymca.org/AIDS
 
助成金額:30万円
事業名:第10回AIDS文化フォーラムin横浜の開催
 
本フォーラムは、1994年に横浜で開催された第10回国際エイズ会議を契機に毎年開催されるようになった、市民主体のフォーラムである。長年にわたりエイズNGOのネットワーク創出、市民へのエイズ予防・啓発、教育の場を築いてきた。
 今年のフォーラムは8月に開催され、約40のエイズNGOにより、約80のプログラムが3日間にわたり開催される。今年のテーマは「若者」であり、今までに以上に、運営面における若者の参加、若者への効果的な予防・啓発教育を目的としたプログラムが見られる。10回目を迎える節目の年であり、このフォーラムが市民によるHIV/エイズ予防活動の活発化への契機となることに期待したい。

東北HIVコミュニケーションズ(宮城県)
URL:http://www.miyagi-npo.gr.jp/thc/
 
助成金額:50万円
事業名:HIV/エイズ教育・啓発における行政・教育機関との連携モデルの提言とエイズ予防教育を担うサポーターの養成
 
若者に対するHIV/エイズ予防教育を広汎に展開するためには、教育機関などとの連携が欠かせない。このことから、本団体は長年にわたり仙台市、市内の中学校などとの連携の下にエイズ予防・啓発事業を実施してきた。
 本事業では、その活動の成果を分析・総括することを通し、汎用性の高い連携事業のモデル提言を行う。また、今後、本団体のエイズ予防・啓発事業を東北地方全域で展開していくために、教師や医療関係者など、性教育の専門家をエイズ予防・啓発事業の担い手(「サポーター」)として養成する。
 長年の活動実績から生まれる提言が参考となり、各地域で、行政・教育機関との連携の下に実施されるエイズ予防・啓発事業が活発化することが期待できる。

アワー・プラネット・ティービー(東京都)
URL:http://www.ourplanet-tv.org
 
助成金額:200万円
事業名:シューティング オン セーファー・セックス:セーファー・セックスとHIV/エイズをテーマにした若者によるビジュアル作品制作
 
性交渉の開始年齢の低下に伴い、若者のHIV感染の危険性が高くなっている。しかしながら、学校や家庭ではセーファー・セックスやHIV予防を教えることに抵抗が強く、若い世代に効果的に訴えるプログラムの開発が急務である。
 本事業は、セーファー・セックスをテーマにした若者によるビジュアル作品(ビデオ・グラフィック・写真など)のコンペティションである。中高生・大学生を対象に、ビジュアル作品の制作を公募し、性やエイズに関する知識や映像技術を習得するワークショップを通して、青少年が自らHIV/エイズ、セーファー・セックスについて考える機会を提供する。優秀作品は予防教育の教材として教育機関に配布し、ウェブ上でも配信される。マスメディアでは放送されにくい市民の声・意見を映像に収め、インターネットを通して配信するという本団体の取り組みにより、エイズ予防・啓発の新しい手法が生み出されることを期待する。また、本事業はNGOや教育機関など様々な組織の協力を得て実施されるため、日本のエイズ・コミュニティのネットワーク強化、活性化も期待できる。

特定非営利活動法人 HIVと人権・情報センター(東京)
URL:http://www.npo-jhc.com
 
助成金額:100万円
事業名:若者相互によるHIV/エイズ予防啓発「ヤング・シェアリング・プログラム」事業
 
我が国においてHIV感染者は依然として増加傾向にあり、若年層への重点的な啓発普及の重要性が唱えられている。
 「ヤング・シェアリング・プログラム」(YSP)は、一方的な情報伝達ではなく、同世代の若者同士が対等な立場で性やHIV/エイズについての意見や課題を共有(シェア)することを通じて、HIV/エイズの予防に対する意識を高める取り組みである。本事業では、今まであまりYSPを受ける機会に恵まれなかった、知的・身体障害者、多言語・多文化の青少年に対してYSPを実施するための方法論の確立、YSPに対するニーズ調査を行い、それらを元に、YSPを各地で実施する。専門的な手法の下、より多くの若者がHIV/エイズ予防への意識を高めることが期待できる。

ポジティブ・カフェ・ノーチェ(長野県)
URL:http://www.delegation.co.jp/jp/pcafe/
 
助成金額:50万円
事業名:地域の医療・教育機関との連携による青少年へのHIV/エイズ予防・啓発活動
 
本団体はHIV/エイズに関する情報を発信し、地域においてHIV/エイズの政策のあり方を訴える拠点として、2000年に長野県・軽井沢にカフェを開設した。
 長野県庁、県内の病院、保健所、学校との連携により、長野県での予防教育、感染者支援において重要な役割を担っている。本事業では、カフェという空間を利用し、感染者と非感染者がHIV/エイズに関して意見を交わす交流の場を設ける。また、学校内で感染者が直接、生徒へHIV/エイズについて語るなどの活動を通し、青少年への予防・啓発活動を実施する。感染者、地域の様々な機関との連携の下に実施される、若者への効果的な予防・啓発活動の一つのモデル事業となることが期待できる。

【経済的自立の支援】
地域生活支援ネットワーク・女性ネットSaya-Saya(東京都)
URL:http://www7.plala.or.jp/saya-saya/
 
助成金額:200万円
事業名:DV等暴力被害者女性の就労支援事業
 
DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)が施行され、DV等暴力被害にあっている女性たちの存在が社会に認知されるようになり、シェルターなど安全な場所の確保は進んできた。しかし、その後の自立支援に関しては公的支援が及んでいない。
 本事業ではDV等暴力被害者女性を雇用するレストラン、企業での就労訓練に加え、元DV被害者が講師となり、ビューティセラピスト、アロマセラピスト、DV被害者相談員など複数の資格講座を開設する。これらの事業により、より多くの就労機会を創出し、経済的自立につながることを目指す。DV等暴力被害者女性の経済的自立の支援をシステム化して実施することを目指す先駆的な試みとして、モデル事業となることが期待できる。

特定非営利活動法人 かながわ・女のスペース”みずら”(神奈川県)
 
助成金額:200万円
事業名:DV被害者母子等への経済的自立支援を行う専門シェルターの運営
 
現在、DV被害者母子の一時保護体制はある程度整備されつつあるが、シェルターに保護された後の行き先がなく、自立して生活することが困難な状況が続いている。緊急一時保護シェルターを退所後に自活するための生活基盤の整備と地域における支援が必要である。
 このようなニーズに応えるため、本事業ではDV被害者、生活困窮者の母子の精神的・社会的自立に加え、経済的自立への専門的な支援を半年程度の中期にわたって行うシェルターを運営する。こうしたシェルターは欧米では「ステップ・ハウス」として広く知られている。様々な専門的なサポートや情報提供を受けることで、DV被害者、生活困窮者の経済的自立が達成され、日本における「ステップ・ハウス」のモデルとなることが期待できる。

特定非営利活動法人 青少年自立援助センター(東京都)
URL:http://home.interlink.or.jp/~ysc/
 
助成金額:160万円
事業名:不登校・引きこもりの青少年に対する就労支援事業(コミュニティー・アンクル・プロジェクト)の普及活動
 
近年、義務教育年齢を過ぎた年齢層の不登校・引きこもりの青少年が増加傾向にあり、学習支援のみならず、社会参加、就労への支援が必要となっている。
 コミュニティー・アンクル・プロジェクト(CUP)は地域の事業主(パン屋、建築、花屋など)のもとで、不登校・引きこもりの青少年が職業訓練、見習いを経て就労する機会を提供するプログラムである。本事業では、CUPが日本全国で実施されることを目指し、CUP実施のためのマニュアル作成、全国各地で青少年と事業主間のコーディネーターを育成する講座を開催する。
 地域連携・再生の観点の下に実施される青少年への経済的自立支援のモデルとして、波及効果が期待できる。

特定非営利活動法人 地域自立推進協会 元気百倍ネット(大阪府)
 
助成金額:150万円
事業名:脱野宿生活者へのアフターフォローと路上新聞を通しての経済的自立の支援の強化
 
野宿生活者支援の施策において、自立支援センターは極めて重要な施設・サービスと位置づけられ制度化されつつある。しかし、仕事を得て自立支援センターを退所し、一度社会復帰を果たした脱野宿生活者が、失職し再び野宿生活者となるケースが生まれており、真の自立を図るためには、退所後も継続した自立支援が必要である。
 このようなケースの発生を防ぐため、本団体は彼らへのアフターフォロー(追跡訪問調査)を実施している。本事業では、このアフターフォローから得られたケースを分析し、野宿生活者の経済的自立を継続させるために必要な社会資源(支援施設、就職情報など)を掘り起こし、これを路上新聞刊行、配布を通して野宿生活者に提供していく。将来的には路上新聞編集局が彼らの経済的自立を支えるコミュニティの中核となっていくことを目指す。
 野宿生活者の経済的自立支援を、地域社会との関わりの中で達成させていくことを目的とした先駆的な取り組みである。

【新しい教育機会の創出】
トルシーダ(torcida)(大阪府)
 
助成金額:50万円
事業名:日系ブラジル人青少年による地域住民に対する国際理解講座の実施
 
日本に住む日系ブラジル人子弟の多くが、学校での勉強についていけない、将来への見通しが持てず勉学への目的意識が持てない等の理由から、公立学校やブラジル人学校にも通わない不就学の状態であったり、不安定な就労状況から、将来的希望を持てない状態にあると言われている。
 本事業は、愛知県豊田市において、その様な状態にある日系ブラジル人青少年を対象とした事業である。自らのルーツや文化を調査・研究し、それを講座というかたちで地域住民へ発表するという学習プロセスを通して、彼らが自らのアイデンティティを見つめ自己尊厳を向上させることを目指す。同時に、地域住民との意見交換・交流の場を創出する。
 本事業が、日系ブラジル人青少年が自主的に学ぶ機会を生み出し、将来への道を切り開く契機となることが期待できる。

美楽光をつくる会(宮城県)
 
助成金額:100万円
事業名:知的・精神障害児のアートをとおしての社会参加事業
 
本団体は、東北地方において知的・精神障害児への芸術活動を様々なかたちで支援している。
 本事業では、障害者施設、公共施設などで定期的にアトリエを開き、障害児が健常者と共に芸術、創作活動ができる場を提供する。これらの活動を通して、障害児の自己実現を目指すとともに、障害児の社会参画のあり方について研究する。また、将来的には障害児のアーティストとしての自立の方向性も探っていく。
 地域住民との関わりの中で実施される様々な芸術活動が、障害児への新たな教育機会の創出、将来性を育むことが期待できる。

特定非営利活動法人 スクールズオンライン・ジャパン(大阪府)
URL:http://www.soj.jp
 
助成金額:160万円
事業名:不登校、外国人学校の生徒の将来性を育むIT教育の実施
 
近年の急激な情報技術の発展により、学校教育の現場では「教育の情報化」が推進され、IT教育が実施されている。しかし、不登校・ひきこもりの青少年、朝鮮学校などの外国人学校の生徒はその様な教育を享受できないため、将来、デジタル・デバイドを被る潜在的な存在である。
 本事業は、企業で働くIT専門職の協力の下、不登校・ひきこもりの青少年、外国人学校の生徒に対して、ITの専門的な知識、技術を学習する講座を開設し、それらを将来の職業にどの様に活かしていくかを考える機会を提供する。また、受講生が講座の運営に関わることで、習得した技術、知識を実際に活かす場を提供する。さらに、これら対象者を支援するボランティアの養成講座を開設し、多面的な支援を行える体制づくりも行う。
 不登校児、外国人学校の生徒へのIT教育が、彼らの将来性を育むことに繋がる期待が持てる。

【組織基盤強化】
「主張するTシャツ」を集める会(埼玉県)
URL:http://www.ne.jp/asahi/clothesline-japan/tshirt/
 
助成金額:200万円
事業名:DV法改正と法改正後の施策形成のための政策提言力強化
 
2001年に制定されたDV(ドメスティック・バイオレンス)防止法は、2003〜2004年にかけて法改正が見込まれている。弁護士や研究者、公的機関の援助職による法改正への働きかけにとどまらず、被害当事者の体験と主張を集約して発信し、また改正法案の形成の動向を明らかにして市民や当事者の世論を喚起することが肝要である。さらに、改正された法律が実際に施策となって各地で適正に実施されるためには、施策形成への参画と監視が不可欠である。
 本事業では、DV法改正の具体的な動向と、各地の行政機関が改正法に基づいてどのように施策を形成しているかに関する情報を集約し、専用ホームページ上でリアルタイムに発信する。こうした情報源の整備により、全国各地の自治体や警察などが、夫や恋人からの暴力の被害を受けた女性に対する適切な支援と予防に取り組むことが期待できる。
 本団体はDV防止法立法以来、ドメスティック・バイオレンスの分野におけるアドボカシーに取り組んできた団体であり、こうした政策関連の情報発信機能を高めることは、組織の発展につながることが期待できる。民間団体による政策形成への参画の手法としてモデルとなることも期待したい。

特定非営利活動法人 監獄人権センター(東京都)
URL:http://www.jca.apc.org/cpr/
 
助成金額:150万円
事業名:刑事被拘禁者相談と政策提言に関わる専門職の雇用
 
現在日本で収容されている約6万人の刑事被拘禁者は、1908年制定の監獄法に基づいて厳しい処遇を強いられており、国際基準をはるかに下回る劣悪な状況におかれている。刑事拘禁施設内での被拘禁者に対する人権状況を改善することは、彼らの権利保障にとどまらず、被拘禁者自身が自らの犯罪に真摯に向き合い被害者に償うことを可能にし、釈放後のスムーズな社会復帰と再犯予防につながる。
 本団体は、被拘禁者の人権問題におけるほぼ唯一のNGOとして、長年にわたり被拘禁者やその家族からの手紙による相談に応じてきた。また近年では、相談の過程で把握された事実や客観的データに基づき、独居拘禁の廃止など刑事拘禁施設の管理運営方法に関する政策提言を行っている。2002年10月に発覚した名古屋刑務所における事件に端を発し、政府内にも改善の機運が生まれているこの時期に、本団体の事務局体制を強化し相談と政策提言の質を高めることは、組織の発展に直接的につながることが期待ができる。また、専門性の高いNGOによる世論喚起、政策形成への関与のモデルとなることも期待できる。