助成対象事業: 「ソーシャル・ジャスティス」(社会的公正の実現)をメインテーマとし、以下の3つの分野に関して民間の非営利団体が日本国内で行う活動。
(1)HIV/エイズ
(2)社会的に不公正な立場におかれている人々の経済的自立の支援
(3)上記ニ分野に取り組む団体の組織基盤強化
公募期間: 2004年1月〜3月26日
応募総数: 67件
助成決定数: 10件
助成金総額: 1220万円(約11万4千ドル)
助成期間: 2004年8月−2005年7月


申請/採択件数と助成額
分野申請件数採択件数助成額  ( )は配分率
HIV/エイズ195¥5,500,000(45%)
経済的自立の支援354¥5,000,000(41%)
組織基盤強化131¥1,700,000(14%)
合計6710¥12,200,000(100%)

※本年はエイズと経済自立の二つのテーマに焦点を絞ることとし、昨年までの青少年育成分野は対象外とした。
これは、助成総額が例年の2000万から1220万円に減少したため、限りある資金でより当基金のインパクトを出し、
効果的な助成を行うことについて再検討を行った結果によるものである。



選考結果の概要

 1997年の当基金開始から7年目、新しい助成分野での公募から2年目を迎えた本年は、「HIV/エイズ」、「経済的自立の支援」、「組織基盤強化」の3分野で募集を行った。
本年は「HIV/エイズ」に19件、「経済的自立の支援」に35件、「組織基盤強化」に13件、合計67件の申請が寄せられた。いずれも社会の課題や地域のニーズに応えようとする優れた事業であり、審査は困難を極めた。約4ヶ月に及ぶ厳正なる審査の結果、合計10件、総額1220万円を決定した。申請数に対して助成事業として採択した件数の比率は約15%と大変厳しいものとなった。結果として選にもれた申請の中にも優れた申請事業が数多くあったが、最終的に、当基金の趣旨と優先課題により合致した事業が助成事業として採択された。助成事業一覧から、この点をご理解いただければ幸いである。

選考過程

 選考は、まず事務局にて一次審査を行い、次に審査委員による書類審査、さらに審査会議にて最終候補を選定し、最終的にこれら候補事業に関して事務局とリーバイ・ストラウス財団との協議で決定するという四段階のプロセスを経た。
審査会議においては、審査基準に照らし合わせて1件ごとに慎重に議論がなされた。特に本年の審査で、多くの申請に共通した議論のポイントは、事業がその団体や地域にとどまらず広い波及効果を生むか、事業がその団体の成長にとって有益か、事業内容と予算の整合性はとれているか、事業の費用対効果はどうか、という点であった。評価が二分する事業も多く見られた。

本年度の特徴

<HIV/エイズ>
 我が国の2003年のHIV新規感染者数は640人、エイズ患者数は336人と過去最高を記録し、感染者・患者数の増加に歯止めがかからない状況である。特に男性の同性間性的接触による感染、若年層における感染の増加が指摘されている。この結果は、政府による万人を対象とした予防啓発のあり方を問い直すと同時に、NPOによる個別グループを対象とした効果的、戦略的な予防啓発の必要性が益々高まってきていることを示しているといえるだろう。本年は、外国人、青少年、同性愛者、性産業従事者など、HIV感染のリスクにさらされていると言われる個別グループを対象とした予防啓発事業が多く申請された。効果的で戦略的な予防プログラムの実施や、日本のエイズ予防政策の向上につながることが期待できる事業が助成事業として採択された。

<経済的自立の支援>
 本分野には、全国から申請が寄せられた。なかでも、在日外国人、障害者、路上生活者、不登校・引きこもりの若者を対象とした経済的な自立を促す事業が多く見られた。それぞれの地域特有の課題から生まれた事業や、地域住民、行政、企業との協働など、地域のリソースを活用した事業が多くみられたのが特徴であった。その中でも、対象としている人々の経済的自立がより具体的に描かれている事業、波及効果の高い事業が助成事業として採択された。当基金の支援が、社会的に不公正な立場に置かれている人々への経済的自立の支援における、セクターを越えたパートナーシップのきっかけや、新たな地域社会の発展の一助となることを期待したい。


<組織基盤強化>
 本分野では、申請団体を上記2分野における活動を行っている当基金の過去の助成団体に限ったが、近年、NPOの組織基盤強化の必要性が広く唱えられていることもあり、多くの問い合わせ、申請が寄せられた。当基金としても、出来る限り多くのNPOに組織基盤強化の支援を行いたいと考えているが、助成のタイミング、支援内容などそれぞれの団体に合った効果的な支援のあり方を判断するためには、団体の今までの活動や組織の変遷、今後の方向性などを深く理解することが必要なため、過去の助成団体のみを対象としている。
申請団体は、活動開始から十数年を経ている団体から、設立間もない団体まで様々であったが、多くのNPOにとって組織の基盤強化は共通の課題であることがうかがわれた。申請事業の内容は、新規スタッフ雇用による事務局機能の強化、事業の拡大、事業や財務におけるアカウンタビリティ強化、新規会員開拓、人材育成・研修、広報力強化、IT環境整備など様々であった。その中で、今この事業を実施することが、助成期間終了後も含めいかに組織の発展につながるかが具体的に描かれており、そのために助成金が有効に活用されることが期待できる事業が助成事業として採択された。

 当基金は、対象を特定の社会課題に絞り込んでいるという点で、日本のNPO助成プログラムとしては特殊なものである。いずれも現代社会の抱える新しいまたは潜在的な社会課題ではあるが、毎年の公募に応じて、助成趣旨に合致した申請を多く頂くにつれ、こうした助成金のニーズが高まりつつあることを確信している。本プログラムを通して、NPO活動の新たな可能性を発見していただければ幸いである。



申請団体データ
2004年度助成事業一覧
助成事業概要


 
2004年度助成事業一覧
(計10団体 1220万円/$114,000)



HIV/エイズ:計5団体 5,500,000円
番号 団体名 法人格 所在地 助成事業名 助成額
(単位:千円)
04-01 AIDS&Society研究会議 特定非営利活動法人 東京都 HIV/AIDS重要文献翻訳公開プロジェクト(HATプロジェクト) 1,000
04-02 ジャンププラス - 東京都 HIV陽性者グループ設立支援およびリーダーシップ育成プログラム開発 1,000
04-03* チャーム(CHARM=Center for Health and Rights of Migrants) 特定非営利活動法人 大阪府 外国籍PWH女性の支援とエンパワメント 1,300
04-04* SWASH(Sex Work and Sexual Health) - 東京都 セックスワーカーのHIV/STD予防のためのコミュニティセンター設立 1,500
04-05* CAI (Campus AIDS Interface) - 東京都 HIV/AIDSや性の健康に関するバンプロジェクト(HAPPY TRUCK) 700
*今年度の優先課題である若い世代および女性を対象とした予防啓発事業


経済的自立の支援:計4団体 5,000,000円
番号 団体名 法人格 所在地 助成事業名 助成額
(単位:千円)
04-06** 東京エイリアンアイズ(TAE) 特定非営利
活動法人
東京都 外国人留学生のためのアルバイト、保証人支援プロジェクト 1,000
04-07 NGO神戸外国人救援ネット - 兵庫県 通訳同行活動の環境整備事業 1,000
04-08 ホームレス支援ネットにいがた 特定非営利
活動法人
新潟県 ホームレスの居住保障と就労支援 1,500
04-09** 青少年自立援助センター 特定非営利
活動法人
東京都 不登校・引きこもり経験者に対する就労支援事業 1,500
**今年度の優先課題である青少年を対象とした事業


組織基盤強化:計1団体 1,700,000円

番号 団体名 法人格 所在地 助成事業名 助成額
(単位:千円)
04-10   地域生活支援ネットワーク
女性ネット Saya-Saya
- 東京都 DV等暴力被害者女性の就労支援事業実施のための事務局体制強化 1,700
※助成事業名は申請時のもの




助成事業概要

■HIV/エイズ

04-01 特定非営利活動法人 AIDS & Society研究会議(東京都)
URL:http://www.asajp.org
助成金額:100万円
事業名:国際機関・会議で発表されるHIV/エイズに関する報告や宣言の翻訳・公開事業(HATプロジェクト)

 HIV/エイズとの闘いは国際的な課題であり、国際機関から貴重な報告書や声明が数多く公表されている。しかし、大半は英語であるため、日本国内で情報を必要としている人のもとへ届いていないことが多い。この様な現状が日本国内におけるHIV/エイズの流行に対する社会的な無関心の要因になっているとも言える。
本事業では、昨年に引きつづき、国際機関や国際NGOなどが発表する文献のうち、日本における今後のエイズ対策において必要・有益とされる重要な文献を和訳し、本団体のウェブサイトにて公開する。更に本年は、HIV/エイズ関連文献の翻訳が掲載されている他サイトのリンク集を作成し、クリアリングハウスとしての機能を持たせる。
本事業が我が国における効果的なエイズ政策構築の一助となることが期待できる。


04-02 ジャンププラス(JaNP+: Japanese Network of People Living with HIV/AIDS)(東京都)
URL:http://www.janpplus.jp/
助成金額:100万円
事業名:HIV陽性者リーダー育成プログラムの開発および研修実施による、HIV陽性者自助グループ設立支援

 HIV/AIDSに対する社会の偏見、無理解はHIV陽性者に孤立した社会生活をおくることを余儀なくさせてしまっている。これは、陽性者のQOL(生活の質)の低下、ひいては我が国における予防啓発の遅れを招いている。
本事業では、陽性者活動の中核となり得るリーダーの育成プログラムの開発および、研修を行い、日本各地での陽性者自助グループの設立を目指す。
陽性者活動が活性化されることで彼等の声が日本社会に発信され、我が国のエイズ政策に反映されるようになること、また彼等による予防啓発活動が活発化され、我が国における効果的な予防啓発に活かされることが期待できる。


04-03 特定非営利活動法人 チャーム(CHARM: Center for Health and Rights of Migrants)(大阪府)

URL:http://www.h3.dion.ne.jp/~charm/
助成金額:130万
事業名:在日外国人女性HIV/エイズ感染者・患者の予防啓発・支援とピア・サポート体制の確立

 在日外国人感染者の多くは、医療機関で母語が通じないといった言語的障壁や、医療保険未加入などの問題により、感染の早期発見・対処が困難な立場に置かれている。
本事業では、在日外国人感染者の中でも特に妊娠・出産を経験した人および希望する女性とその子どもを対象に、多言語での個別ニーズに応じたきめ細やかな支援を行う。また、感染者が中心とした学習会などを通して同じ立場にあるPWHA女性の間にネットワークを形成し、ピア・サポートができる環境を構築していく。
関西地域で在日外国人感染者女性のピアサポート体制が確立されることが期待できる。また、本事業がモデルとなり、将来的には政府や自治体の在日外国人感染者支援政策が改善されることが期待できる。


04-04 SWASH (Sex Work and Sexual Health)(東京都)
URL:http://www.swashweb.com/
助成金額:150万円
事業名:セックスワーカーのHIV/STD予防のためのコミュニティセンター設立

 我が国では、性産業従事者(セックスワーカー)はHIV感染リスクが高い状況に置かれており、他諸外国と同様、重点的な予防啓発が必要な人々とされている。しかしながら、実態調査どまりで、具体的な施策はほとんどなされていないのが現状である。
本事業では、セックスワーカーに直接・継続的に予防啓発を訴えかけていくために、セックスワーカーのためのコミュニティセンターを設立する。コミュニティセンターでは電話相談や、HIV/STDの予防啓発に関する情報・資料提供を行う。またHIV/STD勉強会などの当事者参加型の事業を通してコミュニティを形成し、ピア・エデュケーターの養成を目指す。
コミュニティの構築を目指した直接的かつ現実的な取り組みが、効果的な予防啓発となることが期待できる。


04-05 CAI (Campus AIDS Interface) (東京都)
URL:http://www.cai.presen.to
    http://www.happytruck.jp
助成金額:70万円
事業名:移動販売車での雑貨販売、予防啓発グッズの配布を通しての若者へのHIV/ エイズ予防啓発

 我が国では2003年に新規感染者・患者が過去最高を記録するなど、依然として増加傾向が続いている。特に若年層は増加傾向が強く、効果的な予防啓発が早急に求められている。
本事業は週末に若者が集まる街頭、イベント会場などで移動式トラックによる店舗を開店し、若者が好む雑貨を販売し、購入者にオリジナルコンドームをはじめとした予防啓発グッズを配布する。また、HIV/エイズに関する知識を有する本団体のメンバーが店員となり、HIV/エイズや性に関するカウンセリング情報なども提供する。若者の関心を引く雑貨をきっかけに、性やHIV/エイズに関心が薄い若者にも広く予防啓発を促す取り組みである。
若者が中心となり、若者の発想・視点が活かして実施される本事業が、同世代の意識・行動変容をもたらすことに期待できる。



■ 経済的自立の支援

04-06 特定非営利活動法人 東京エイリアンアイズ(TAE)(東京都)
URL:http://www.tae.or.jp
助成金額:100万円
事業名:外国人留学生のための保証人ボランティア紹介およびアルバイト紹介事業

 外国人留学生が日本で生活する上で、民間の賃貸住宅の部屋を借りる際に日本人の保証人がいないこと、物価の高い日本で生活費を得るためのアルバイトができないことは大きな障害である。
本事業は、この2つの障害を打破するシステムづくりを目指すものである。本団体は互助の仕組みを活用し、日本人の保証人ボランティアにリスク無く名義を貸してもらう保証人制度を運用してきた。本事業では保証人ボランティア制度を利用する留学生に、本団体が協力関係を有する地域の店舗、商店街等でボランティア活動を行う機会を提供し、ひいてはアルバイトとしての雇用につながることを目指す事業である。
本事業の実施により、多くの外国人留学生が住居を得られ、またアルバイトが彼等の経済的自立の一助となることが期待できる。また、本事業がより汎用的なシステムとして普及されることで、我が国の外国人留学生受入体制の改善がなされることが期待できる。


04-07 NGO神戸外国人救援ネット(兵庫県)
URL:http://www12.ocn.ne.jp/~gqnet/
助成金額:100万円
事業名:在日外国人の行政上の相談に同行する外国人通訳者養成事業

 在日外国人が労働、福祉などにおける問題を解決する際に、通訳者、交渉仲介者の役割は重要である。しかし、交渉仲介者の同行は行政サービスとして確立されていないため、ボランティアの協力により行われているのが現状である。
 本事業では、在日外国人支援、DV被害者支援団体での相談業務の経験を有する外国人を、通訳能力だけではなく労働、医療福祉、司法制度など専門的知識を有する通訳者として養成し、派遣する。本事業の実績を下に行政への提言活動を行い、外国人同行通訳者の職業としての確立の必要性、行政における制度化の必要性を訴える。
本事業の実績、成果をもとにした提言活動により、外国人通訳同行制度が行政の事業として取り入れられるようになることが期待できる。



04-08 特定非営利活動法人 ホームレス支援ネットにいがた(新潟県)
助成金額:150万円
事業名:路上生活者の居住保障と就労支援

 近年、NPOや自治体により路上生活者の就労支援が取り組まれているが、高齢や持病により就労が困難な路上生活者の存在も指摘されており、個別の状況に対応した支援の必要性が生まれている。
本事業では、路上生活者の個別の状況に対応しながらも、幅広く彼らの経済的自立の支援を行う。高齢、病気などの理由で就労が困難な路上生活者には、生活保護で支払える住居を提供する。一方、就労可能、就労意欲が高い路上生活者に対しては、本団体が独自に創出した雇用事業や、自治体、地元企業から本団体が請負った雇用事業へ従事するための社会適応・技能訓練を提供し、自力で住居確保ができるまでの収入取得を支援する。
自治体、地元企業、住民などのコミュニティとの協力・協働により、多くの路上生活者が経済的自立を達成することが期待できる。


04-09 特定非営利活動法人 青少年自立援助センター(東京都)
URL:http://home.interlink.or.jp/~ysc/
助成金額:150万円
事業名:不登校・引きこもりの青少年に対する就労支援事業(コミュニティ・アンクル・プロジェクト)の普及活動

近年、義務教育年齢を過ぎた年齢層の引きこもりが増加傾向にあり、社会参加、就労への支援が必要となっている。
コミュニティ・アンクル・プロジェクト(CUP)は地域の事業主(パン屋、建築、花屋など)のもとで、不登校・引きこもりの青少年が職業訓練、見習いを経て就労する機会を提供するプログラムである。昨年一年間は本基金の助成の下、CUP説明会の実施、CUPのマニュアル作成などを行い、各方面から高い関心を集めた。
本年は、CUPの実施を希望する団体のニーズ調査・分析を行い、各団体への具体的な支援を検討する。また、不登校・引きこもりの青少年の就労支援を目指す団体間のネットワークを構築し、就労支援を行う際に必要なノウハウ、課題などの共有などを行う。
様々な地域、立場でこの課題に取り組む団体、人々が加わることで、CUPを雛形にしたより波及性の高い就労支援プログラムが各地で実施される期待が持てる。



■ 組織基盤強化

04-10 地域生活支援ネットワーク 女性ネットSaya-Saya(東京都)
URL:http://www7.plala.or.jp/saya-saya/
助成金額:170万円
事業名:DV等暴力被害者女性の就労支援事業実施のための事務局体制強化

 DV被害者女性にとって、社会復帰、経済的自立は重要課題であるが、十分な公的支援が及んでいないのが現状である。
本団体は、レストランをはじめとしたDV被害者女性の就労支援を先駆的に行ってきた団体であり、昨年より本基金の助成の下、就労支援事業の充実を計ってきた。
本事業においては、今後更に就労支援事業を積極的に進め、より多くのDV被害者女性の経済的自立を支援していくため、活動を支えることのできる経理・事務局体制の強化を行う。財務専門家の雇用、事務局員の常駐などにより会計事務の効率化、会員の拡大、ボランティアの育成などを行う。本事業により団体の組織基盤が強化がされることで、DV被害者女性の経済的自立の支援における先駆者としての活動の飛躍に期待ができる。