2013年11月4日に、第6回ティファニー財団賞の受賞団体が決定いたしました。

ニューヨークで行われた授賞式には、伝統文化大賞の受賞者である一本杉振興会会長の鳥居正子氏ら4名、また伝統文化振興賞の受賞者として、ENVISI(エンビジ)の代表である吉川由美氏ら2名が参加しました。授賞式のほかに、受賞者はニューヨーク滞在中、廃止された鉄道高架線を活用した遊歩道公園であるハイラインやミュージアムオブアーツアンドデザインの見学、さらに郊外のロックフェラー邸などハドソンバレーの視察を行いました。

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伝統文化大賞

一本杉通り振興会 (石川県七尾市)

一本杉通りは石川県・能登半島七尾市にある、600年以上の歴史を持つ街道であり、同振興会では、毎年4月29日(昭和の日)〜5月の母の日まで、花嫁のれん展を開催している。花嫁のれん展は、花嫁のれん約150枚を長さ450メートルの一本杉通り各店舗店内・民家50軒に飾り、店主が訪問客に花嫁のれんに纏わる話や店の歴史などを語るイベントである。

花嫁のれんとは、加賀藩の領地である加賀・能登・越中に幕末から現在まで受け継がれている庶民の風習であり、花嫁は嫁入りの際に加賀友禅で描かれた吉祥模様ののれん「花のれん」を持参する。花嫁は嫁ぎ先仏間の入り口にかけられた花嫁のれんをくぐることでその家の一員となる。花嫁のれんの色や柄は時代ごとに流行り廃りがあり、麻や綿のものも見られるが、多くは絹で加賀友禅の手法が用いられ、伝統技術の継承にも繋がっている。

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【講評】
隈研吾 建築家、東京大学教授
地域独特の文化を分かりやすく示しており、ハンドリングが可能な範囲の中でイベントを運営、開催しており、大きな効果を上げていることに好感が持てる。

田中優子 法政大学教授
「実家の家紋をつけたのれん」というありようが、夫婦別姓を基本とした日本の伝統的な結婚の考え方に沿っており、今後、染織技術の素晴らしさと、伝統的かつ新しい時代の夫婦像が融合する場となることが、期待できる。
伝統文化振興賞

ENVISI (宮城県仙台市)

ENVISIはENVISION(想像する・思いを巡らす)から命名したアート組織で、アートの力でまちの見えざる価値、人と人との間に見えざる絆をつなぎ、新たな活力を産み出すことを目的に活動している。「生きる博覧会」を鳴子温泉郷、南三陸町で開催していたが、東日本大震災で南三陸町の町が流失する結果となった。町の人々のおかれた未曾有の苦難に思いをめぐらしながら、地域の伝統の神棚飾り「きりこ」の様式を活かしたアート・プロジェクトを通して活動している。

宮城県塩竈市以北から三陸地方南部では、神社の神職が正月の神棚飾りのために縁起物を切り抜いた半紙「きりこ」や飾り幣束などを、暮れに氏子に 配布する風習がある。神社ごとに伝わる「きりこ」のデザインはそれぞれ異なり、いずれも美しい。きりこを新しい復興をモチーフとするアート作品として展示することで、人々が精神的支柱を見出せる場 を町の各所に創り出している。

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【講評】
隈研吾 建築家、東京大学教授
周辺地域にも認知されている南三陸のきりこを現代的に解釈し、コミュニケーションのツールとして使っていることが評価できる。震災後も、地域の文化を伝えるツールとして使われており、記憶の継承を担っているともいえ、大きく評価できる。

田中優子 法政大学教授
「きりこ」は確かに伝統的な「祈り」の芸術であるが、今まであまりそれが主張されて来なかった。さまざまなものに展開できる素晴らしいデザインなので、新しい活動だが、ぜひ継続してほしい。