2013年10月29日から30日まで、日独両国の各界代表者の参加を得て、第22回合同会議が東京の三田共用会議所で開催された。29日には菅義偉官房長官への表敬訪問の機会が設けられたほか、同日夜には岸田文雄外務大臣主催によるレセプションが開催された。

今回のフォーラムでは「グローバル社会における国内政治課題の設定」、「金融、財政政策に依存する持続可能な経済成長の課題」、「米中関係と日独両国への影響」という3つのテーマのもとで活発な議論が行われた。

最初にハーバー外務次官から、日独両国は共通の価値観を持ち、協力して世界に貢献する立場にあること、サイバーテロや地球温暖化などの新たな課題に立ち向かう枠組みの必要性、新興国の台頭、アジアにおける平和維持の重要性など、日独関係全般に関して発表があった。

続くセッション1「グローバル社会における国内政治課題の設定」では、日本側から小坂憲次参議院議員、城内実衆議院議員、玄葉光一郎衆議院議員が、民主党から自民党への政権交代、安倍政権の外交方針と東アジア情勢、日本の経済、財政の課題などについての課題を述べた。ドイツ側からはシュミット北ドイツ放送時事編集部長から、9月に行われた選挙でのメルケル首相率いるCDUの勝利と連立政権の行方、エネルギー政策や反EU勢力の台頭等について発表があり、続いて両国の政治の現状についての活発な質疑応答が行われた。




セッション2「金融、財政政策に依存する持続可能な経済成長の課題」では、日本側から加藤 出 東短リサーチ社長が、増加の一途をたどる日本の債務残高の状況、インフレを目指す安倍政権の金融・財政政策、経済成長に向けての課題、移民受け入れを含む人口減少と高齢化への対応についての議論の提示があった。ドイツ側より、ヴィースホイ日独産業協会理事長は、日本やドイツに限らず先進国が抱える債務問題は民主主義の問題でもあるとしながら、国債発行の増加を止める債務ブレーキがドイツの憲法に存在することや、欧州の銀行で実施されるストレステスト、移民受け入れの重要性などについての指摘があった。また少子高齢化の進むなかで競争力を保ち、生産性を上げるための教育の重要性が改めて議論された。

30日に実施されたセッション3「米中関係と日独両国への影響」では、国分良成 防衛大学校長が米中関係、中国の内政と外交、日中関係についてプレゼンテーションを行った。このなかで、中国の外交が国内政治に大きな影響を受けていること、江沢民勢力の影響力の増大と習近平体制の安定化への懸念が提示された。外国企業の中国内におけるビジネス環境に詳しいシュトリッカー=ケレラー弁護士は、自信を深めている中国企業の現状、政治とビジネスの関係について述べたほか、中国国内での対外強硬派の増加や排斥的な意識の高揚への懸念が示された。一方、中国国内の現在のシステムと課題を十分に理解して彼らとの信頼関係の構築に当たることが重要と指摘したうえで、海外を知る中国知識人の意識の変化について楽観的な見方があることも述べられ、参加者からはエネルギー・環境分野等での日独協力による中国への働きかけの必要性、民主主義や法の支配など西欧的な価値観と中長期的に中国が目指すものなどについて議論された。

また、座長による共同座長声明が取りまとめられ、日独両国首相に提出された。