『日米中三者関係の単純ならざる幾何学』


外交問題評議会シニア・フェロー 前カーネギー国際平和基金理事長
モートン・アブラモウィッツ

日米中協力−新たな三辺関係の模索(日本国際交流センター刊 1998年6月)より抜粋


本論では、日米中関係のダイナミクスを検証し、個別の二者関係を超えた建設的な三者関係の発展に寄与しうる特別な諸要因の特定を行う。また、米国が米中・米日関係をどう認識し、有益な三者関係の構築の可能性をどのように捉えているかを概略的に論じる。さらに、中国と日本の関係やそれら二国と米国との関係を米国の視点から見、そして三者関係をそれぞれがどう見ているかを論じる。最後に、日米中の三者間における政府レベルあるいは民間レベルの対話の基盤がどの程度整っているかについて考察する。

新しい三極構造か?

「新しい」三者関係の概念に関する今日の活発な知的論議は、いうまでもなく、過去20年間のアジアにおける膨大な経済的・政治的変化、特に中国の急速な経済発展とソ連の崩壊に対応し、受け入れるための努力からきている。目標は、日米中三カ国すべてにとって有益な対応策を見い出すことである。この達成のためには、三カ国は今までとは異なる関係の構築を追求しなくてはならないが、これは容易に実行できるものではない。

冷戦下の米中ソ関係(準パートナーとしての日本を含む)の構造は消滅した。各国の相互関係はもはや単純に図式化できるものではない。この地域における政治的原動力はもはや地略的要因でなく、世界規模の経済的要因が担っているように思われる。政府の統制をしばしば超えるこれら要因は、日米中三カ国を史上類例のない形で一つに結び合わせており、この結びつきは、日々いっそう、分断させるのにはあまりにも代償が大きすぎる結びつきとなってきている。米国は日本の最大貿易相手国であり、また、30年前には中国とほとんど貿易を行なっていなかった米国と日本が、今日では中国の第1位、第2位の貿易相手国となっている。

日米中三国の間には膨大な資本の移動がある。たとえば、外国人による米国債券の最大購入者は日本であり、中国も最近主要な購入者になった。日米両国の企業は中国への重要な直接投資者であり、特に先進製造技術の供給に重要な役割を果たしている。経済とグローバル・コミュニケーションの目を見張るような進歩の速さは、三カ国全てにおける内政状況を変化させている。これら変化がどのような結果をもたらすかは不明であるが、東アジアの将来はこの三カ国によっておおむね決定づけられると考えるのが大勢のようである。

このため、一部の人々はこの「三者関係」を新たな至上課題と考えているが、誰もこれを明確には定義づけしていない。三者間の前向きな協約を暗示するような三者関係なのか、それとも、三者が互いに優位を得るために策を弄する三角関係なのか(そしてこの場合には、日米が連携して中国に策を弄するのか、またはその逆か)、あるいは、重要で予見しえない上に必ずしもポジティブとは限らないが三者の相互作用を意味する本物の三者関係なのか。

「三者間(トライラテラル)」という語もやや誤解を招きやすい。それは正三角形を暗示するが、実際には日米中三カ国の間の勢力分布は非対称的であり、そのため疑念が生じやすい。この中の最も進んだ二カ国(米国と日本)は強大な軍事力、経済力、安定した内政システムを持つ条約同盟国である。中国はまだ潜在的な勢力でしかない。その巨大な国土、人口、民族の多様性にもかかわらず、中国は経済、軍事、科学技術の各分野で遅れており、世界政治における秀でたプレーヤーになるにはまだ遠い。他の諸外国の多くは、中国の安定性と長期的もくろみに疑問を抱いている。しかし、中国の経済力は増加しており、そしてまだ弱いながらも、核・ミサイル戦力が強化され、日本の防衛関係者に対して潜在的な脅威となっている。しかし、勢力の著しい非対称性が依然続いていることは、三者関係の運営を概念的にも困難にしている。

この「三者間」という語は、日米中三カ国の関係に多国間関係的な側面が存在することをも暗に意味する。しかし、北東アジアにはいかなる多国間機構も存在せず、日米中関係に多国間協力の側面は存在しない。ただし、経済分野で三カ国すべてが参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)を通じて、組織だった多国間主義が生まれつつある。朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)は、北東アジアに現存する機構の中で、特定の安全保障問題を多国間ベースで処理する試みに最も近いものであるが、それでもこれは多国間主義とはほど遠い。

日米中三カ国のすべてが新しい三者関係に参加するためには、それぞれの国が、三者間で協力することにはマイナス面をしのぐ少なくともいくつかの重要な相互主義への意義が存在することを認識する必要があろう。朝鮮半島問題はその一つの明白な例と思われる。しかしながら、非常に大きな勢力格差、著しく異なる政治システム、そして長い年月を経て確立された同盟関係が依然中心的な障害となっている。現在、この三カ国は互いの勢力関係を忘れているわけではないが、それを三者間という枠組みの中では認識していない。したがって現状から前進することはなかなか難しいだろう。

もう一つ明白な疑問がある。北東アジアの将来を考えるとき、なぜわれわれは主要プレイヤーを日米中三カ国に限るのだろうか。韓国は今や、北東アジアにおいては間違いなく重要なプレーヤーであり、長期的にも同国の役割はいっそう重要になるだろう。ロシアも、短期的には無力でも、長期的には重要なプレーヤーになるだろう。

米国の認識

米国の政策担当者やその他外部の専門家の間では、日米中関係が何を意味するかについて見解が分かれている。一部はこの三カ国の重要性を理由に、真の三者の間の協力体制を構築する必要があると考えている。一方で、この考えを否定し、現実にはこの三カ国の間には、中国を警戒する二国間関係が存在するだけであり、将来にもそれ以外の関係はありえないと論じている。この二つの見方とも、

1970年代と1980年代の米中ソ関係に類似するような三角関係が生じることはまずない、という点では意見が一致している。米中ソ関係においては、各国が第三国へのインパクトを狙った二国間行動を追求したが、そこでは最も弱い国が最も強い国と手を組んだ。今日の日米中関係では最も強い二国が同盟関係にあるが、この場合必ずしも第三国に照準を合わせたものではない。

米国にとって最大の不確実性と懸念材料は中国である。米国内には、特に立法府と行政府の間で、中国自体と現在の米中関係のきしみについて認識の混乱がある。ここ5年程、行政府は対中政策の主導権を事実上失っていた。現在に至ってようやく、中国が米国の対アジア政策における最重要課題となり、日米関係は貿易摩擦にもかかわらず安定しているという点でコンセンサスが生まれつつある。コンセンサスはここで止まっているが、米国が中国に対して抱いている最大の関心事は、依然として、中国政府の性格と中国が経済・軍事両面で強めつつある力を将来何に使うかということである。

中国は米国政府の政策運営能力を複雑にさせる一つの重要な国内政治問題である。中国に関するいくつかの政治的派閥があり、郷愁派、ビジネス重視派、人権派、現実的政治派などがそれである。これらの派閥間競争が対中政策の国内政治力学を複雑にさせ、しばしば単一の問題に注意を集中させている。現在は、左派も右派も中国を国民の第一の敵にしようとしているようである。

多くの米国人は、中国が急速に第二の日本──すなわち莫大な対米貿易黒字を享受し、さまざまな間接的手段で自国市場を保護する潜在的経済超大国──になりつつあることを懸念している。米国の対中貿易赤字は1996年6月に初めて対日赤字を上回った。8月には対中赤字が対日赤字を約10億米ドルも上回った。中国が日本の経済発展モデルに追随しているという米国人の認識は、中国における基幹産業政策の実施によってさらに裏付けられた。このように、貿易摩擦は増大し続けており、経済活動の二面性が露呈されてきている。すなわち、経済活動は、日米中三カ国を互いに結びつけると同時に、新たな緊張の原因にもなっているのである。長期的な対中貿易・投資の急激な増加はおそらく中国ロビィストを生み出し、米国の日本への対応にも影響を及ぼしかねない。

一部の米国人はその持続性に疑問を投じているものの、不均等な日米同盟は依然として北東アジアにおける抑止力と心理的安全保障の中軸であり、そのインパクトは中国と北朝鮮をゆうに超えると一般的には考えられている。日米中関係重視が、日米間の重要な戦略上のパートナーシップを政治的に弱めさせるだけで、それを相殺する意義はほとんどないという見方は米国人の一般的な見方ではない。しかし東南アジア諸国を不安にさせる見方ではあるかもしれない。

米国人は一般的にこの三カ国はさまざまな度合いの緊張を秘めてはいるものの、それでも互いにまずまず良好な関係を持つことができると考えている。中国についての不安もあるが、米国人は一般に現在のアジア情勢は安定していると考えており、中国がこの安定を撹乱する恐れがあると危惧している。米国は台湾と暗黙の安全保障関係を結んでおり、それが中国との間で困難を引き起こす恐れがあると認識している。ある一国が他国を攻撃することはないと、今ではほとんどの米国人が考えているものの、状況次第ではその可能性もある。米国内には、中国が侵攻的になるのに対抗する防護措置を対中政策に取り入れるべきだと強く主張する意見もある。

過去に、日米両国の中国に関する見解は、特に貿易と政治をリンクさせるべきかという点をめぐりしばしば食い違い、冷戦下で緊密だったはずの日米関係にきしみを引き起こした。米国の政策は、日本のそれに比べると内政の変化に非常に左右されやすい。日本は対中関係を断ち切ったことはないが、米国は周期的にそうしてきている。米国の視点から見ると、日本は米国の対中関係の不適切な運営により自国が板挟みになることを懸念すると同時に、単独で中国に対応せざるをえない事態になることも同時に懸念しているように映る。しかし、中国に関する日米間の見解のずれは、手に負えなくなるほど高じたことはなく、また両国はそうならないように注意を払っている。米国の多くの専門家は、日米両国は中国に対する自国の見解をより明確にし、アプローチ上での協調を図る必要があると指摘している。

日米同盟が中国に照準を合わせていると考えられても不思議はないし、米国の一部には実際にそれを同盟の目的とすべきだと考えている意見もある。しかし現在は、日米両国とも公然と「中国封じ込め」政策をとることを望んではおらず、実際、日本では政治的に不可能だし、米国でも現時点ではおそらく不可能である。しかし台湾海峡における中国の武力による威嚇と、日本の場合の尖閣諸島(中国人の呼ぶところの釣魚諸島)の領有権をめぐる論争のために、日米両国内では反中感情が高まっている。

日本の認識に関する米国の評価

依然として日本の対外政策は基本的に対米同盟関係を中心としている。この関係は北東アジアにおける日本の安全保障に寄与し、またこの関係により日本は経済・社会問題に専念できるのである。日米関係は常に摩擦を伴っているが、同盟を廃止、もしくは変更しようとする強い動きはない。もちろん、今後そうでなくなる場合もありうるが、当分こういった動きはないであろう。日本はより良好な対中関係で日米同盟を補完することを望んでいるだろうが、日本にとっては今のところいかなるトレードオフも存在せず、対中関係を利用して日米関係の諸側面に影響を与えることを望んでいる様子も全くない。日本は明らかに米中の間に挟まることを避けたいと考えており、このため、米国が米中間の緊張を最小限に留めて米中関係を運営することを望んでいる。一部の日本人の間には、米国が究極的に対中関係の緊密化を進めることへの懸念と、米国が台頭する中国勢力から日本を守ってくれることへの期待が混在している。

日本は中国が新たな勢力に台頭したことと、その中国と今後うまく付き合っていかなくてはならないことを認識しながらも、中国に対し依然愛憎混合の感情を持っており、対中意識は悪化と改善をくり返している。現在の対中不信の高まりは、日中間の唯一の直接的争点である尖閣諸島領有問題等をめぐって、中国と直接対決しようという意識の高まりへと導いているように思われる。こうした意識は長くは続かないかもしれない。日本は香港と中国経済への深い関わりを十分認識しており、日中関係を危険にさらすことは望んでいない。歴史はいまなお重要かつ微妙な要因であり、それが日本政府に慎重な対応を要求している。他方、日本と台湾との間には特別な関係があり、米国が台湾の現在の自治的地位を支えることを期待している。

日米中関係に最も強い関心を持っているのは日本人かもしれない。日本は三者間協議を北東アジアにおけるより緊密な多国間努力の一環とみなすと同時に、世界システムに中国をうまく組み入れるための一つの手段とみなしているように見受けられる。日本はこのアプローチが、変わりゆく国際情勢のもとでの賢明な選択であり、啓蒙的にも有意義で、しかも自国内で政治的に歓迎されうると考えている。

日本は、朝鮮半島情勢の考えうる変化と中国の予想される軍事力増強に照らして、自国の防衛政策をしばしば見直している。中国(および潜在的な北朝鮮)のミサイル戦力は日本の防衛専門家の主要関心事である。ミサイル防衛は、日中関係と日中両国内部の政治におけるやっかいな要素になるかもしれない。対米関係においてもより重要な問題になりつつあるが、まださほど深刻な問題にはなっていない。

中国の認識に関する米国の評価

西側世界の間に残存する膨大な格差にもかかわらず、中国が不透明で報道や対外討議に対して政府統制を行っていることを考えると、他の諸国が中国の増大する経済力の軍事的含意を安心して見ていることは難しい。

今のところ中国の最大の関心事は依然として経済問題であり、すなわち日米両国の市場、投資、教育、科学技術へのアクセスを拡大することである。中国は自国のニーズを理解しており、これらへのアクセスをあえて危険にさらすようなことはしないだろう。これから将来、特定の重要案件に関して日米両国と軍事的・政治的に対決しようとする中国の企てに、経済へのこうした関心事がおのずと制約を課すこととなるであろう。

中国はまた自国が三カ国の中で一番弱い立場にある事を承知しており、自国の発展と強化のための時間を必要としている。中国の伝統的な国際思考は勢力均衡と「中華」の概念に深く根ざしており、これは日本でも米国でもほとんど通用しない知的アプローチである。この三カ国の政治観の不一致は、日米中関係における誤解のもう一つの原因となっている。中国は三角関係を、自国の脆弱性を改善するための一つの方法と考えている。また中国が統一後の朝鮮との間に緊密な関係を築くことは、三角関係における自らの立場を強化する手段になるとも考えているかもしれない。

中国内には植民地時代と第二次世界大戦に根を持つ日本への深い感情的敵意と不信感が存在するが、中国政府はおそらく米国の力と意図に最も強い不安を感じている。中国は米国を衰退しつつある国だと主張しているが、実際には米国に対して言葉通りの振る舞いをしておらず、この主張はほとんど上辺だけのポーズとみなされるべきであろう。中国内では反米感情が、部分的には政府にあおられて高まっている。中国人の大半は中国の政治体制を弱めさせ、究極的には中国政府を崩壊させることを狙っている一派が米国内にあると考えているようである。また、彼らは中国と台湾問題の解決の間を妨げている唯一の障害は米国だとも考えている。

中国は日米両国に不信感を抱き、日米同盟についても入り交じった感情を持っているが、同時におそらく日米同盟が日本の軍国主義の復活を抑制させる手段になるものと考えている。他のアジア諸国もこのことを日米同盟の一つの効果と考えている。中国は、時折り台湾や尖閣/釣魚諸島等の問題をかき立てることによって日米関係にひびを入れることができると考えるかもしれないが、このような画策は結果的に日米関係をいっそう緊密にさせるだけだろう。1996年春の「ミサイル外交」ではその通りになった。中国政府は中国におけるかつての日本の行動を引き合いにして、日本から譲歩を得ることを狙っている。

中国は日米同盟を揺るがし、経済的、外交的に日米両国を対立させることに関心を持っている。中国自身、それが可能であると信じているかどうかは不明である。

中国は基本的に多国間主義を好まない。中国はその帝国の歴史と一貫性のあるような独立した国際的地位を追求している。その上、中国は、とかく徒党を組まれたような感じのする多国間交渉よりも、自分が自由に力を振るうことのできる二国間交渉を好む。日米中三カ国の中で最も弱い国として、中国は三者間の対話で仲間外れのように感じることが多いに違いない。したがって、中国政府は三者間の努力における日米両国の善意に疑念を持つだろう。

三方向対話の可能性

三者の関係が何らかの形をとるとして、その可能性と効用についての結論としては何が考えられるだろうか。日米中三カ国のそれぞれの認識を考慮に入れると、三者の関係の構築は単純な幾何学の問題ではおよそない。いずれにしても、この三カ国は暫定的な三方向の公式対話すらからもほど遠いところにいる。

日米中関係は、第三国へのインパクトをにらみつつ二国間で決定づけられる。特に日米両国は互いの関心事に敏感である。最も弱い国として中国は、三方向の関係をより均等なものにするための対応策を講じるかもしれないが、中国自身、それが成功するという確信は持てないだろう。

日米中のいずれも、アジアに三者が共同管理する体制を構築することには全く関心を持っていない。個々の特定問題についてある国を他の国と対抗させようとすることはあっても、この三カ国はいずれも機構化された形での三者の相互影響関係に強い熱意は持っていない。

中国は、台湾、尖閣/釣魚諸島、南シナ海を含むいかなる域内領有問題も多国間問題とすることに全く関心を示していない。このことは安全保障分野における三者間対話を困難にさせる。

しかし、三者間対話にも、潜在的意義と対話実施の可能性が存在する。公式の三国間討議を開始する最大の短期的意義は、日米両国における有力分子が中国脅威論に同調することを防ぐことである。こうした対話は、参加者全員に対して、様々な重要問題に関する認識の深まりや、政策のお互いに与える影響へのより慎重な考慮を促すものと期待できる。政府レベルの三国間討議はおそらく、何らかの有用な信頼醸成措置や、その他の分野における共通土台の拡充にいずれはつながるもととなろう。

実りある三者間討議を開始するための最も入りやすいテーマは、おそらく経済と環境の両分野における協力活動と、日米両国内における互いの内政問題の現実についての理解である。これら分野には重要な問題がいくつかある。尖閣諸島は長期的には、三者の経済協力の分野としては現実的であろう。政治/軍事分野における明白な問題は朝鮮半島であるが、中国はこの問題に関する協議にはあまり関心を示しておらず、むしろ非常に長期的な視野で朝鮮半島情勢を捉えているのかもしれない。台湾は、緊張のこれ以上の増大を防ぐために討議すべき明らかに重要な議題になるだろうが(台湾以外では、一方が他方に対して本格的な武力行使を行うというシナリオは想定しにくい)、しかし中国は、台湾は純然たる国内問題だという理由で、この問題を広く論議することに反発している。核、ミサイル、そして兵器不拡散の諸問題は、三方向の対話からもちろん何らかの良い結果が生まれるであろうが、米国と日本は中国が自国の言い分、すなわち弾道ミサイル防御への反発を主張することを予期すべきである。 

より根本的には、最初は民間ベースに限られるとしてもこの三者の対話は、三カ国に長年にわたってわだかまっている歴史的・心理的な不平・不満の原因(たとえば第二次世界大戦や日米同盟に関するもの)について討議し、時としてその原因を軽減するのに役立つかもしれない。その成否はひとえに対話の率直さにかかってくるだろう。現時点では日米中関係における具体的な緊張要因に完璧に対処することは不可能であるが、三者の対話がお互いのコミュニケーションの習慣を確立し、将来より重要な討議をする際の基礎を作る効果的な手段になりうるかもしれない。

しかし、政府レベルの三国間討議とあり得るかもしれない三国間協力から生ずるプラス面は、この討議から締め出された他の諸国、特に韓国の反応によって著しく減じられる恐れがある。東南アジア諸国はこの三国間努力に神経をとがらせるだろうが、実際にはむしろ、中国からの脅威と日本からの脅威の双方を減じる手段として歓迎するかもしれない。 いかなる討議も究極的には不信感の軽減と透明性の向上に役立つと確信する人々にとっては明白かもしれないが、現時点では、日米中間で公式に三国間対話を開始することに重要な意義があるかどうかは明らかでない。しかしながら、有識者による非政府レベルの試行的な対話は、成り行きを見守るに十分な価値があると思われる。広大な拡がりをもつ経済成長と国際関係の複雑化に特徴づけられるこの時代に、静態的世界を自明の理として受け入れることは愚かであろう。


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