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時代の節目を感じる政権交代によって、日本が世界から注目を集めた一年が経ちましたが、新しい年を迎えたこれからが正念場です。日本が世界の期待に応えるためにはプレゼンスという国力を高めることが不可欠であり、その根源になるのは経済社会の一人ひとりの意識向上と活動の結集である民間力です。

アジアにおける民主主義国家の代表格として日本が世界から認められ、各国の人々と友好的な関係を築いて次世代に豊かな生活を持続させるためには、私たち一人ひとりの日本人が主役とならなくてはなりません。一般の人々の草の根活動から専門家の政策的対話まで、広範囲の分野で世界との相互理解を促す国際交流の重要性がより高まってきました。「積極的民間外交」を、一人ひとりがそれぞれの立場で実践することが世界の平和と繁栄につながります。

また、国際交流活動に極めて重要な条件は、内外に存在している「壁」を超えるフットワークの軽さです。国境という壁のみならず、専門分野や価値観など、私たちの社会には様々な壁がそびえ立って相互理解と発展の弊害となっています。また、「壁」を超えるために欠かせない要素は未来志向です。過去の功績を単純に延長しただけでは価値創造の持続は期待できません。「壁」の外に存在している多様な視点が未来志向でつながることによって、価値創造が持続できるのです。

2020年へのカウントダウンが始まりました。単に、東京オリンピック開催という世界を日本に招く大イベントへの準備期間を示しているだけではありません。これからの日本は、2020年から新しい時代への門が開くことに意識を高める必要があります。この新しい時代の原動力になるのは世代交代という戦後最大のレジーム・チェンジです。日本の人口動態の影響で、2020年から時代の主役となる世代が交替し、人口の多い「団塊ジュニア」が主役となる時代に入ります。そして「新ミレニアム」に生まれた若者の多くが、2020年の東京オリンッピクに現役選手として出場します。その新しい時代に期待しているからこそ、戦後から冷戦にかけて現在に至るマインドセットに束縛されて、未処理になっている外交問題を次世代に残すべきではありません。未来志向を重視すれば、かならず解が見つかるはずです。

新しい時代において、真に強い国としての日本の姿や世界で果たすべき責務に安易な答えはありません。ただ、目先の答えが見えないとしても、JCIE(日本国際交流センター)は引き続きcross-border, cross-sectorの相互理解と交流を通じて解を求める問い掛けに従事し、「今日よりも良い明日」を実現させたいと考えております。

今後とも一層のご指導、ご支援を賜りますようお願いいたします。

2014年1月
(公財)日本国際交流センター(JCIE)
理事長 渋 澤  健