活動報告

日独フォーラム第30回合同会議が、2022年11月17日、18日の2日間にわたり、東京で開催されました。日独フォーラムは、1992年の宮沢・コール日独首脳会談により両政府間で設立が合意され、翌年2月に発足した日独間の民間対話フォーラムです。日本国際交流センター(JCIE)は、第1回より事務局を務めています。

 

コロナ禍が始まって以来、初めて対面で実施された今回のフォーラムは、日本側の小林栄三座長(伊藤忠商事株式会社名誉理事)とドイツ側のマティアス・ナス座長(ディ・ツァイト紙外信局長)の進行により、「日独の政治経済情勢:ウクライナ危機の中で発足1年を迎える新政権」「権威主義の拡大・民主主義の危機・グローバルインフレに立ち向かう日独の役割」「エネルギー戦略の再策定と日独協力の可能性 :『ロシア依存脱却』と『脱炭素化』の両立に向けて」と題した3つのテーマについて議論が行われました。また18日のフォーラムの最後には、ドイツ側メンバーによる松野博一官房長官表敬訪問が実施されました。プログラム、参加者及び討議要旨は以下のとおりです。

 

プログラム及び参加者

日本語

英語

 

討議要旨

第一セッション「日独の政治経済情勢:ウクライナ危機の中で発足1年を迎える新政権」では、日本側からは、当初国民の高い期待を受けて発足した岸田政権において、コロナ対策、エネルギー物価高と円安などの経済課題に加え、旧統一教会の問題や続く閣僚の辞任などで支持率が低迷している政治状況について報告があった。また、岸田内閣への支持率の低迷が続く中、従来保守とリベラル双方を幅広くカバーしてきた自民党の支持率も徐々に下がり、政治的な論点が一層、不明確化していると指摘した。ドイツ側は、コロナ禍とウクライナ危機によりドイツの従来の政策が多方面で大きく転換している中、ドイツ国政史上初の3党連立により異なる政治価値、政策軸をもつ連立内の調整をはじめ、ショルツ首相の指導力、政策手腕を巡る課題がみられていると指摘した。その後、国際関係の流動化の進展が両国の政治、経済情勢に大きな影響を及ぼしている状況や、不透明化が増している両国の国内政治への対応等について活発な議論が行われた。

 

第二セッション「権威主義の拡大・民主主義の危機・グローバルインフレに立ち向かう日独の役割」では、ドイツ側からは、ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻を中心にヨーロッパにおける地政学的危機が高まっているとともに、エネルギー供給のひっ迫による世界のエネルギーシステムを巡る再編の動きや、中国の軍事的な台頭などによりグローバルなレベルで不安定化の危機にあることが述べられた。日本側からは、ロシアに対する金融及び貿易措置やウクライナ関連緊急人道支援などロシアのウクライナ侵略に対する日本の対応や、脆弱性を露呈している米中関係について触れ、国際関係の新たな枠組み構築が必要と指摘した。日独両方の基調報告を受けて、地域内また地域をまたぐ同盟関係の健全性などの国際関係が従来と大きく変質していることへの懸念が強まっているとし、民主主義の価値観、世界のルールに基づく国際秩序の持続性のための日独両国の協力について話し合われた

 

 

第三セッション「エネルギー戦略の再策定と日独協力の可能性 :『ロシア依存脱却』と『脱炭素化』の両立に向けて」では、日本側から東日本大震災による福島原発事故に言及し、日本のエネルギー自給率の低さや化石燃料への依存度の高さへの対応をするためのエネルギー政策と二酸化炭素削減への取り組みについて報告した。ドイツ側は、ドイツが従来とってきた原発ゼロ政策がウクライナ危機により見直しが迫られているとともに、3党による連立政権下で新たなエネルギー政策及びエネルギー高騰への対応が行われているものの気候変動問題への取り組みとの両立における困難も見られていると指摘した。続く議論では、日独それぞれによる国内におけるエネルギー問題への対応とともに、世界的課題であるエネルギー危機への対応として途上国に対する日独協力による支援や、グローバルなエネルギー政策における日独の役割等が提案された。

 

全セッションを通じて、この数年の間に国際状況が一変し、その結果、両国は新たな課題に直面していること、また国際的な不安定化が進行する中で、両国の多面的な協力がこれまで以上に必要とされるとする議論が主流を占めた。

 

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