活動報告

 

日本国際交流センター(JCIE)は、2022年11月30日と12月1日の二日間にわたり、「外国ルーツ青少年未来創造事業」(以下、SYDRIS)の一環として、第8回ネットワーク会議を開催しました。本事業の最終回となった今回のネットワーク会議は、事業開始以来初めて対面で実施し、SYDRISの助成先団体をはじめ関係者約40名が一堂に会しました。本会議は「助成後とその先(2) ーつながってできること、社会に向けてできること」をテーマに、プレゼンテーションやディスカッション、交流会などの内容で構成され終始活発な議論が交わされました。

 今回のネットワーク会議では、助成終了に向けての「出口戦略」を軸に共に考えました。初日には、約3年間取り組んできた事業の成果や、やり残した課題を整理し、環境変化や新たなニーズの発掘などを踏まえて、各団体として今後必要な取り組みについて検討しました。二日目には、初日の議論内容を踏まえ、団体間で繋がり、領域全体として何ができるのかを議論しました。

 

1日目:SYDRISで何ができて、何ができなかったのか

ネットワーク会議1日目には、それぞれの団体がこれまでの活動を振り返る時間として、異なる団体の参加者が同じテーブルに集まり、支援活動を振り返りつつ、成果・課題・新たなニーズなどを共有し、外国ルーツ青少年のニーズを整理、自団体の強み・特色を明確化する時間として実施しました。
 はじめに、各団体が自団体の活動についてプレゼンテーションを行い、これまでの活動を共有しました。参加した団体の発表では、「学習者にとって居心地のいい距離感、学習環境を作ることができ、継続・安定的参加を促すことが出来るようになった」、「多岐にわたる分野の参画を働きかけ、地域との連携も進められており、手ごたえを感じている」など、各団体から本事業を通して得られた気づきやノウハウ、成果などを共有し、今後の活動に対する示唆を得ました。
 次には、3つのグループに分かれてグループディスカッションを行いました。ディスカッションの中では、事業実施中に見られた活動環境の変化と求められるニーズについて意見が交換されました。参加した団体からは、「子どもたちから『日本人の友達を作りたい』というニーズをよく聞くが、団体として、数多くの子どもたちのニーズに答えることは難しい」、「支援を必要とする人がいて、提供できるコンテンツがあるにも関わらず、人とコンテンツがつながっていないと感じる。コンテンツを必要とする人へのアプローチも重要だが、外国ルーツ青少年に対する支援の必要性を拡大させることも重要なのでは」といった課題の共有がありました。また、「日本社会にある日系ブラジルコミュニティという「バブル」の中で暮らしが完結してしまうため、日本社会もブラジル社会も知らないまま成長してしまう」という認識が出されました。
 その後、住友商事の実施している100SEEDとSYDRISの成果報告会を行いました。報告会には今までサポートメンバーとして参加した住友商事役職員も参加し、2年半の間、市民公益活動分野と企業との連携を通して行ってきた活動について振り返り、これまでの活動で出来た繋がりをさらに強化することができました。

 

2日目:どうして繋がり、繋がって何をするか

2日目には、1日目の議論で得た自団体の今後の展望を踏まえて、今後に向けて互いがどうつながり、協力するかを検討しました。
 初めは参加者の各団体における担当業務ごとに、より少人数のグループに別れてグループディスカッションを行いました。そして、各団体同士が横に繋がるための可能性やそのための具体的な方法などについて議論しました。そこでは、子どもたちの国内での移動に対応できるようにすることや、マイノリティの人々に対する社会的な認識を変えることに取り組むことができるのではないかという意見が出され、支援団体が相互に繋がることが如何に重要であるのか再確認されました。また、支援団体間のみならず、地方自治体との協力関係など、より巨視的に繋がることについても議論が及びました。
 今回、参加者の多くが経験の長い年長者であった一方、ディスカッションのテーブルの中には10代・20代の若い支援者で構成されるグループもありました。そこで深刻な課題として指摘されていたのは、横の繋がりの不足に加え、縦の繋がりの圧倒的な不足が指摘されました。支援団体の中では、支援に関わる年長者と若者の間の世代がいないケースが多く、その背景には、若者が支援者という働き方を長く続けることの経済的な難しさもあることが述べられました。持続可能な支援者の育成のためにも解決すべき構造的課題が露呈したといえます。

 最後の全体共有の時間では、今回の対面形式でのネットワーク会議のように、支援者同士が集まる機会を定期的に持つべきだという意見が多く出ました。また、共同で対外的な発信を行うことも社会変革に繋がるというコメントも出され、繋がる目的と繋がることでできることに関して、様々な意見が共有されました。

まとめ

 今回の会議を通して、支援団体ごとの支援環境、課題、課題の解決方法などにおいて、共通点、相違点があることをよく理解することができ、自団体であるからこそできること、また、お互いの強みを活かして他団体とつながることでできることは何かについて考えることができました。外国ルーツ青少年を支援する集合体としては、まだ日本社会に十分に認知されていない外国ルーツ青少年とその家族について対外的に発信していくことが必要であり、そのためのアイデア出しやノウハウの共有、議論を今後も重ねていくためのネットワーク形成と維持に対する意見交換がなされました。

 

資料

プログラム

参加者

 

これまでのネットワーク会議

第1回ネットワーク会議

第2回ネットワーク会議

第3回ネットワーク会議

第4回ネットワーク会議

第5回ネットワーク会議

第6回ネットワーク会議

第7回ネットワーク会議

 

 

 

 

 

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