活動報告

日本国際交流センター(JCIE)ならびに東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)は、2022年11月8日にアジア健康長寿イノベーション賞2022(第3回)の授賞式を開催しました。過去2回の受賞式は新型コロナの影響でオンラインと受賞団体各国での分散開催となりましたが、今回は受賞8団体が一堂に会する初めての授賞式となりました。受賞団体をはじめ、国内外の専門家や政府関係者、大学や研究機関の研究者、医療・介護分野の実務家、ヘルスケア・介護関連企業代表、介護サービス事業者代表、国際機関、市民社会代表を含む、約250名(うち会場115名、オンライン135名)が参加し、受賞者の顕彰とともに、高齢者ケアや健康長寿に関する知見の共有と交流をする貴重な場となりました。

 

アジア健康長寿イノベーション賞とは

アジア健康長寿イノベーション賞」(Healthy Aging Prize for Asian Innovation、以下HAPI)は、日本政府によるアジア健康構想の一環として、ERIAおよびJCIE が2020年に創設した表彰事業で、健康長寿の達成、高齢者ケアの向上に資する取り組みをアジア各国から募集し表彰するものです。テクノロジー&イノベーション、コミュニティ、自立支援の3分野で、高齢化による様々な課題の解決となる革新的なプログラム、サービス、製品、政策を募集・表彰することにより、アジア地域内で優れた知見を共有、その実際の応用を後押し、この地域の共通課題である急速な高齢化に共に対応していくことを目的としています。各年の受賞団体一覧は以下のリンクよりご覧ください

第1回 】【 第2回 】【 第3回

 

当日の授賞式の様子および受賞者によるスピーチは以下からご覧いただけます。

 

 

主催者挨拶

冒頭、主催者を代表してJCIE米国法人キム・ゴールド・芦澤シニア・アドバイザーが挨拶を述べ、HAPIの背景と、これまで過去3回の公募を通じ、アジア12か国・地域から、237件に及ぶ応募が集まったと紹介しました。多方面の事業領域からの応募を得て、高齢社会の課題解決に向けてのイノベーションが広がっていることを挙げ、今後国際会議などの場で、これらの取り組みをケーススタディとして紹介し、積極的に発信したいと話しました。

 

続いて、西村英俊ERIA事務総長(ビデオメッセージ)は、賞に応募した団体が感染症にも屈せず、デジタル技術などを上手く取り入れながら、高齢者の方の自立支援や尊厳を守る活動に取り組まれていることに敬意を表しました。西村総長は、本賞を更に発展させ、日本の有する知見や革新的な課題解決方法などをアジア全体で共有することに期待を示しました。

 

 

2023年度受賞者挨拶 

テクノロジー&イノベーション部門 大賞:

「認知症の高齢者を見守るQRコード爪シールシステム」(英文概要)

株式会社オレンジリンクス (日本・埼玉

QRコード爪シールは思い付きのアイデアであり、地元の市役所、地域包括ケアセンター、地域の見守り活動を行っている団体や認知症の当事者の方々と話し合い、既存の技術をなるべくローコストに利用することをコンセプトに開発した。愛知県の素材メーカーや検証を行うバーコードプランナー、ジェルネイルを作る群馬のメーカーなど、様々な地域や職種の方が社会問題解決のために力を貸してくれた。人にシールを貼ることについて反対意見もあったが、「命が何よりも大切」と地域で在宅医療に尽力する医師に背中を押してもらった。現在では、地域をまたいで警察・消防・鉄道および市民の方がQRコードに気づき、読み取り、市役所に連絡が入るようになった。認知症の方が外出しても、安全・安心に自宅に戻れるようお守りのように爪シールを貼っている方々に敬意を表するとともに、感謝申し上げたい。(吉田裕貴子 株式会社オレンジリンクス代表取締役)

 

コミュニティ部門 大賞:

「ワンストップ・コミュニティ高齢者サービスプログラム」(英文概要)

龍振シニアケア(中国)

2010年の設立以来、龍振シニアケアは、北京市でも有数のホームケアおよび地域密着型ケアのサービス提供者に発展した。当団体のビジョンは主に二つあり、まず質の高い地域密着型ケアを提供することと、都市の学術機関が研究導入のモデルサイトとして活用し、次世代のケアの担い手を育成することである。家こそが、安心安全に過ごすことができ、人生の一番の思い出を作ることができるという理念のもと、地域のソーシャルワーカー・ボランティアや住民が協力し、高齢者が住み慣れた場所で暮らせる環境づくりに今後も取り組んでいきたい。(Zhang Yu 龍振シニアケア代表)

 

 

自立支援部門 大賞:

「メモリーホーム」(英文概要)

上海尽美高齢者サービスセンター(中国)

10年前、団体を発足した当時は中国国内で認知症当事者およびその家族に対するサービスとサポートはほぼ無かった。文化的背景から、認知症はネガティブで不名誉なイメージがつき、社会で議論し向き合うことは避けられる傾向にあった。家族とケア提供者が頼れるサービスもなく、認知症をもつ人をケアすることは大変困難であった。当団体が運営するメモリーホームでは、認知機能アセスメント・非医学的介入や診断後の家族へのサポートなど多様なサービスを提供し、認知症当事者やその家族が尊厳ある生活を送れるよう支援している。尽美は若く、多様なバックグラウンドをもつメンバーで構成されており、革新的な課題解決に取り組むべく、今後も国内外の団体と意見交換し、連携していきたい。(Gu Chunling上海尽美高齢者サービスセンター創設者 *代理出席:王青 日中福祉プランニング代表)

 

特別賞(エイジズムへの取組)

「多世代オンライン・メディアキャンペーン」(英文概要)

ブーンメリット・メディア (タイ)

タイでは、政治的混乱により世代間で様々な格差が生じている。高齢社会を迎え、このような格差が広がらないようタイ政府や国内の公衆衛生機関は高齢課題解決に取り組んでいる。本課題に取り組むメディア団体として、高齢者を抑圧する社会的偏見をなくすことを目的に、3年前よりオンライン・プラットフォームを立ち上げた。60代でトライアスロン大会に参加する方、70代で起業する方などを特集することで、高齢者に対する負のイメージを払拭し、若年世代と変わらず社会を動かす力を持つことを証明している。長期的に見て、すべての世代を受け入れるインクルーシブな社会づくりを目指したい。(Prasan Ingkanunt ブーンメリット・メディア代表)

 

テクノロジー&イノベーション部門 準大賞(同率):

「VR 認知症」(英文概要)

株式会社シルバーウッド(日本・千葉)

VR認知症は、認知症の当事者が見えている世界、感じている世界を体験することによって、すべての人間にある認知症に対する偏見を変えていく目的で作られたプログラムである。日本国内のみならずアジア諸国にも展開しており、既に8万6千人の方々が体験しており、大きな変化を感じている。今後アジアへの展開を更に積極的にしていきたいと考えているので、アジア各国のキーマンの方々と繋がる機会を持ちたい。(下河原忠道 株式会社シルバーウッド代表取締役)

 

 

 

「認知症AR体験Dementia Eyes」(英文概要)
株式会社メディヴァ(日本・東京) 

本取り組みは慶應義塾大学とのコラボレーションであり、経済産業省の補助金を活用して開発を行った。目的は、認知症当事者が感じている日常の困難を体験することで、認知症に対する関心を持ち、当事者に共感を持つことができることである。医療従事者やソーシャルワーカーに対してAR体験も行っており、体験者が自らの業務を基に振り返る機会を設定するなど、認知症ケアに対する知識の教育も行う。さらに、認識した環境課題に対し、認知症にやさしいデザイン導入による解決を行う。AR体験による共感や認知症にやさしいデザインを通して、年齢や疾患の有無にかかわらず、人々が前向きに生活を送れる社会に貢献したいと願う。(木内大介 株式会社メディヴァシニアコンサルタント)

 

コミュニティ部門 準大賞:

「高齢者の外出促進と商業活性化の両立に向けたおでかけリハビリ」(英文概要)
一般社団法人おでかけリハビリ推進協議会(日本・北海道)

朝市を拠点にデパートや温泉地などの商業施設を拠点に展開している。経済の力で福祉業界を応援するということをテーマに、商福連携事業として介護業界を盛り上げつつ、商業の活性化も盛り込んだ取り組みを実践しているところである。現在はTANITAヘルスリンクと前年より連携し、商工中金のサポートのもと、全国各地への展開に向けて取り組みを推進している。取り組み初めて6年目になるが、今後も期待に応えるべく、日々精進し、取り組みを大きくする所存である。(松田悌一 一般社団法人おでかけリハビリ推進協議会理事長)

 

 

自立支援部門 準大賞:

「健康・生きがい就労トライアル」(英文概要)
宝塚市お互いさまのまちづくり縁卓会議 健康・生きがい就労部会(日本・兵庫)

宝塚市では2015年より、WHOが提唱するエイジ・フレンドリー・シティ・グローバルネットワークに加盟をしている。高齢者にやさしいまちはすべての世代にやさしいまちづくりととらえ、「お互いさまがあふれるまち宝塚」を理念に取り組んでいる。市民と行政が協働推進し、官民が助け合いながら協議・実行していく「宝塚市お互いさまのまちづくり縁卓会議」を発足し、様々なアイデアや事業をモデル的に実施しており、そのうちの取り組みの一つが受賞し、アジアに認められたことを光栄に思う。(守川武広 宝塚市健康福祉部地域福祉課課長)

本取り組みは市民が自分事として、80代になっても、介護施設や保育所など人手不足で困っている場所に無理のない範囲で、3か月トライアルで働いてみるというものである。大変好評で、大阪府など複数の都市にも広がっており、活動を支援していくためNPO法人を立ち上げた。この度の受賞は、NPO法人として継続するうえで弾みとなった。(遠座俊明 健康・生きがい就労ラボ代表)

 

 

 

各受賞事例の概要は以下のパンフレット(PDF)または、こちらのプレスリリースをご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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