活動報告

近年、日本に暮らす外国人の増加が再び目立つようになっています。また、少子高齢化による人口減少を背景に、外国人の受け入れを拡大・促進する仕組みが政府から打ち出されています。こうした背景から、 日本国際交流センター(JCIE)では、(一財)MRAハウスの助成を受け、地方自治体における外国人住民に対する施策の展開状況と課題などを把握・整理し、地域社会の実態・特徴に応じた取り組みに関する議論の具体化に向けた一助となることを目的として、2017年10月に「多文化共生と外国人受け入れについての自治体アンケート2017」を実施いたしました。

 

報告書の完成に合わせて、2018年2月23日には、調査結果報告会を開催し、地域で多文化共生活動に携わっている関係者をはじめ、研究者、メディア、財団など多くの方々に参加いただきました。また、報告会では、調査結果についての報告とともに、子どもの教育における課題、「外国人」か「移民」かという用語に対する認識、諸外国との違いなど多文化共生施策・移民政策を巡る論点を様々な角度から討論しました。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「多文化共生と外国人受け入れについての自治体アンケート2017」の報告書および主な調査結果は以下のとおりです。なお、詳しい調査結果および分析は、報告書をご覧ください。

 

報告書

調査結果報告書ー本編

調査結果報告書ー概要版

 

調査実施概要

調査対象:47都道府県および20政令指定都市

調査方法:郵送・メール配布、ファックス・メール回収

回収率:都道府県 65.9%、 政令指定都市 65% (合計 65.6%)

調査項目:現行の多文化共生、外国人・移民の受け入れ拡大、移民政策など

 

主な調査結果

(1)現行の多文化共生施策について

今回の調査で自治体が、「進んでいる」、「ある程度進んでいる」と考えた多文化共生の施策・取り組みは、「各種生活相談」「多言語による情報提供」、「外国人に対する日本語教室・教育への支援」、「在住外国人のための防災訓練」など、外国人住民が地域で生活・適応するためのコミュニケーションや生活支援であった。それに対して、「外国人住民コミュニティの形成支援」、「外国人住民に対する地域活動への参加促進」のような外国人住民の自立、地域社会における参画にかかわる施策・取り組みでは遅れがみられた。

 

一方、多文化共生施策・取り組みを実施する理由からみると、現状評価に対する違いがみられた。「来日・在住する外国人の増加への対応」または、自由記述において多文化共生社会と外国人住民の可能性を積極的にとらえる回答をした自治体が、地域の国際化、行政サービスの一環を理由として選択した自治体に比べて、現行施策全般の進捗状況について肯定的な評価をし、現状と外国人住民に対するとらえ方と課題解決の進捗状況との相関関係が垣間見えた。

 

多文化共生施策にかかわるすべての項目に対しては、「そう思う(課題である)」、「ある程度そう思う」に回答が集中し、現在の多文化共生施策が多くの課題を抱えていることがわかった。とりわけ、「情報提供」、「現状・実態の把握」が最も高く課題として認識されていることから、多文化共生社会を推進するための基礎づくりを重要課題として位置づけていることがわかった。また、自由記述からは、外国人にかかわる国・政府による総合的方針の不在を課題の背景として指摘する意見が、外国人住民の多少にかかわらず発せられていた。

 

(2)外国人・移民の受け入れ拡大について

今後地域において来日・在住する外国人が増えるとの認識が強くみられた。また、都道府県、政令指定都市ともに、外国人の増加によるメリットを好意的に受け止める傾向が強く、地域社会の内外に向けた国際化と地域での人材確保に最も好意度が高かった。

 

外国人の増加によるデメリットとして、「学校教育におけるカリキュラム・学生管理等の負担増加」、「行政コストの増加」のような負担の増加を強く認識する結果となった。一方、外国人・移民の増加による社会問題として懸念される「地域の治安の悪化」、「日本人の仕事や労働条件における好ましくない影響」については、都道府県、政令指定都市ともに90%以上が「全くそう思わない」、「あまりそう思わない」と回答し、外国人人口の多少や増加率、在留資格の特色、地域ブロックなどにおける有意な差はみられなかった。

 

一方、近年の受け入れ拡大・促進のための政策的取り組みと、今後来日・在留目的別の受け入れ規模については、現在の政策的取り組みと受け入れ拡大を好意的に受け止めているものの、地域の受容力をふまえた消極的な姿勢が表れた。

 

(3)移民政策について

政府が取るべき外国人受け入れ政策として、「日本としての包括的な移民政策を検討すべき」との認識はそれほど高くなく、「わからない」と回答した自治体が最も高い割合を占めた。

 

ただし、過去の調査(2015年)において、移民政策について明確な方向性をしめさなかった都道府県が、今回の調査で「日本としての包括的な移民政策を検討すべき」を選択した。こうした移民政策の必要性についての認識の変化がみられたるのが、相対的に外国人人口が多く、新たな外国人住民の増加を受け様々な施策やプログラムに取り組んできた経験やノウハウの蓄積がある自治体であることを踏まえると、多文化共生施策を進めるうえで国レベルの積極的な責任負担への要求が読み取れる。

 

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