活動報告

 

日本国際交流センター(JCIE)ならびに東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)は、11月6日~10日に、アジア各国で高齢化問題に取り組む団体を日本に招き、日本の高齢者支援の政策・制度、実践を学ぶことを目的としたスタディツアーを開催しました。ツアーの参加者は、JCIEおよびERIAが主催する国際賞「アジア健康長寿イノベーション賞」(Healthy Aging Prize for Asian Innovation, 通称:HAPI)にて高齢化に先進的に取り組む団体として、アジアの権威ある有識者に大賞として選ばれた市民団体・自治体・民間企業等の代表計10名です。

 

タイ・ベトナム・シンガポール・中国から来日した各団体の代表が4日間にわたり、東京・神奈川・埼玉で住民が主体となり地域の課題解決・活性化に取り組むモデルや、地方自治体による地域包括ケアシステムの実例などを視察しました。超高齢化社会を迎えた日本のアプローチから学び、人々が健康で活動的な生活を享受できるような社会を作るための知見や経験を共有し、アジア地域内でのネットワークを育む機会となりました。

 

今回のプログラムの実施概要は、以下のとおりです。※英語での活動レポートはこちら

 

東京プログラム

東京では、プログラム初日の午前に厚生労働省老健局の長嶺由衣子氏より、日本の介護保険制度と地域包括ケア整備の政策、認知症施策についての講義、午後は医療法人社団悠翔会の佐々木淳理事長・診療部長より「在宅医療・高齢者医療(緩和ケア)」をテーマとした講義を受けた。超高齢化社会の日本において、時代とともに医療・介護のニーズがどのように変化し、社会の制度が形成された変遷について、活発な議論が行われ、参加者は知見を深めることができた。

 

 

神奈川プログラム

神奈川県では、秋山弘子東京大学名誉教授および地元町内会やNPO法人の協力を得て、産官学民の共創で地域の課題解決を目指す鎌倉リビングラボの活動についてブリーフィングが行われた。秋山教授の「人生100年時代はイノベーションの宝庫」という言葉に共感し、自国でも産学官連携による、地域のニーズに応えるプロジェクトに取り組みたいと話す参加者が多くいた。さらに、町内の認知症対応型デイサービス施設を見学し、利用者の方々と短時間交流し、「利用者の方がずっと笑顔で話されていてアットホームな環境に感動した」との感想が寄せられた。次に、神奈川県庁の協力を得て、住民の高齢化率が60%を超える県営笹山団地を訪問した。高齢化が進む地域の活性化を図り、近隣大学の学生に低価格で貸し出す事業や、団地の一室でこども食堂を始める取り組みなどを視察した。

 

 

 

埼玉プログラム

埼玉県では入間市を訪問し、2022年の第3回HAPIで「認知症の高齢者を見守るQRコード爪シールシステム」で大賞を受賞した株式会社オレンジリンクスより活動の紹介を受け、受賞者同士で活発なディスカッションが行われた。次に一行は入間市役所に向かい、杉島理一郎入間市長へ表敬訪問した。市役所では、市の職員より入間市のまちづくり、高齢者支援の施策・地域包括ケアシステムについて説明を受け、市の徘徊SOS支援事業のひとつにオレンジリンクス社のQRコード爪シールが採用されていることから、参加者からは爪シールの運用方法や導入時の課題について質問が挙がった。埼玉プログラムの締めくくりは、入間市で病院や介護老人保健施設など複数の施設を展開する医療法人永仁会を訪問し、施設見学を行った。予防から治療、介護までの多様なサービスをワンストップで提供し、地域の健康や老後の生活を支える姿に参加者は感銘を受けた様子だった。

 

 

最終日報告会・知見共有会

最終日は内閣官房健康・医療戦略室や厚生労働省老健局を招いてのスタディツアー報告会・知見共有会が開催された。冒頭に2020年の第1回HAPIで「病院と自治体との協働による脳卒中再発予防のためのセルフマネジメント支援の取り組み」で大賞を受賞した長野県駒ケ根市役所より浜達哉地域保健課介護予防係が基調発表を行った。報告会では、参加者がプログラムを通して撮影した写真を用いて、印象に残った取り組みや母国に持ち帰って教訓としたいアイデアやコンセプトを共有した。今後もHAPI受賞者のネットワークとつながりを保ち、半年後にまたオンラインで集まりたいと提案が挙がるなど、今後も互いに学び合いたいとの意向が示された。

 

 

 

メディア掲載

◆2023年12月1日付 

 国保新聞(国民健康保険中央会発行)「入間市の認知症対策視察 タイ、ベトナムなど4か国 QRコードで身元確認」

◆2023年12月4日付 (オンライン版下記参照)

 読売新聞「日本の高齢者ケア アジアで注目 タイでは「認知症カフェ」を実践…各国とも介護ニーズが増大」

◆2024年1月16日付 

 日本経済新聞「昭和99年 ニッポン反転 現場から 高齢社会、海外の手本に」*電子版全文を読むにはログインが必要です

 

日本の高齢者ケア アジアで注目 タイでは「認知症カフェ」を実践…各国とも介護ニーズが増大

参加者

2020年度大賞受賞者(第1回HAPI
サワン・ケウカンタ 高齢者開発財団(FOPDEV)創設者(タイ)
トゥイ・ビック・チャン ヘルプエイジ・インターナショナル・ベトナム代表(ベトナム)
2021年度大賞受賞者(第2回HAPI
リリアン・ウン テツユウ・ヘルスケア・ホールディングス共同創業者兼代表取締役社長(シンガポール)
ドーン・ソーンシル バンコク首都庁保健局医務官(タイ)
ティティナン・ナクプ ブンイトー市保健局医師(タイ)
奥井利幸 野毛坂グローカル代表(日本・タイ)
2022年度大賞受賞者(第3回HAPI
チャン・ユー 龍振シニアケア代表(中国)
ジーユー・イン(セバスチャン) 龍振シニアケア地域プログラムディレクター(中国)
チュンリン・グー(アイリーン) 上海尽美高齢者サービスセンターチーフディレクター兼創設者(中国)
ダンモ・シュー(アイヴィ) 上海尽美高齢者サービスセンター社会アドボカシー・プロジェクト協力責任者(中国)

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