活動報告
日本国際交流センター(JCIE)は、2018年10月より、グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(Global Financing Facility, GFF)に対する支援体制の強化のための事業を開始いたしました。
GFFは、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)並びに母子・青少年の健康/栄養の改善を目的とする革新的資金調達メカニズムです。低・中所得国において、女性や子ども、青少年の健康と栄養の課題に対してより多くの資金が効率的に活用されるよう、国内外のステークホルダー間の対話と協調を後押しし、各国政府による保健財政・保健制度強化を支援しています。
JCIEでは、2007年以降グローバルヘルスを主要テーマとして取り上げ、日本が自ら有する経験を基にユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(注)に関する国際的な議論を主導できるよう、調査・研究事業や国際会議等の事業を通じて日本政府による取り組みを後押ししてきました。
GFFの取組みは、低・中所得国における保健医療制度の包摂性を高め、各国におけるUHC実現に向けてきわめて重要な役割を担います。JCIEでは以下の事業を通じて、GFFに対する日本の国際保健・国際協力分野の専門家・実務家の理解の促進と、GFFの取組みと日本の国際保健政策との連携を強化し、GFFに対する日本の支援体制の強化に取り組んでいます。
(注)UHCとは「すべての人が適切な予防、治療、リハビリなどの保健医療サービスを、必要な時に支払い可能な費用で受けられる状態」(WHOによる定義)
具体的な事業
GFFに関する調査・研究、ならびに報告書の公表
- フライヤー「グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)と日本」
- 栄養分野への効果的な投資とユニークな役割(2021年12月)
- Effective Investment in Nutrition and the GFF’s Unique Role
- ニュースレター「GFF Monitor」(2020年11月~)
- 報告書『SDGsの達成に向けて グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)への期待と今後の課題』(2020年9月)
- インドネシア視察(2019年7月)
- セネガル視察(2019年6月)
GFF関係者と日本の国際保健・開発関係者間の会合の開催
- イベント「すべての女性と子どもの健康のために―グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)が果たす役割とは?」を共催(2023年6月)
- アワ・マリ・コルセックGFF大使・セネガル国務大臣と「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員との対話(2022年9月)
- フアン・パブロ・ウリベGFFディレクターと「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員及び国会議員との対話(2022年8月)
- 東京栄養サミット政府主催イベント「Investing in Nutrition – Role of catalytic financing 」(2021年12月)
- GFF国会議員ウェビナー:コロナによって悪化した女性、子ども、青少年の 栄養と健康をいかに守るか(2021年11月)
- 第3回GFFセミナー(2021年7月)
ブリーファー:プラック・ソフォーナリーカンボジア保健省副長官、アン・プロボ世界銀行栄養専門家、
レスリ-・エルダーGFFシニア栄養スペシャリスト
ブリーファー:アミール・アマン・ハゴス前エチオピア保健大臣、
マティ・ディア・ワンドラーGFF投資グループ市民社会代表
- 第2回GFFセミナー(2020年8月)
ブリーファー:モニーク・ブレダーGFF事務局長
- 第1回GFFセミナー(2020年2月)
- グローバルヘルスに関する議員ブリーフィング(第4回)「母子保健への資金調達でSDGs達成を実現する――グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)の役割と日本への期待」(2019年8月)
ブリーファー:ムハマド・パテ GFFディレクター兼世界銀行保健・栄養・人口グローバルディレクター
GFFによる日本語資料作成の支援
グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(Global Financing Facility, GFF)とは
GFFは、ミレニアム開発目標(MDGs)の中でも“残された課題”として持続可能な開発目標(SDGs)に引き継がれた世界の母子保健、そして、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、青少年の健康・栄養の改善を目的に、「女性と子どもの健康のための世界戦略(Every Woman Every Child)」と持続可能な開発目標(SDGs)を支援する資金調達プラットフォームです。
世界では、毎年500万人以上の女性や子ども、青少年が、肺炎や下痢症、栄養失調、出産後の多量出血・感染といった予防可能な原因によって命を落としています。女性や子ども、青少年の保健・栄養への投資は、こうした人々の命を救うだけでなく、より多くの人々に教育や労働の機会を提供し、生産性の高い社会の構築と経済成長、国家の繁栄をもたらします。
GFFは、2030年までに予防可能な理由によって命を落とす3,500万人の母子および青少年の命を救うことを目指し、世界銀行グループ、カナダ、ノルウェー、米国の主導によって2015年7月に創設されました。事務局は、世界銀行内に設置されています。
GFFの特長
GFFは、各国が主体的に取り組む施策の策定・実行を支援し、成果主義に基づいて資金を動員するとともに、ガバナンス機構や、各国におけるマルチステークホルダー・プラットフォームを通じて、RMNCAH-N分野におけるパートナーシップを推進している。事業実施国に対して、ドナーから調達した資金を分配して供与することに加え、既存の資金を動員するための「触媒」的役割を果たすことが最大の特長です。
創設以来2019年3月までに、官民のドナーから総額16億9,300万ドルの資金を調達しました。ドナーからの拠出金は「信託基金」としてプールされ、事業実施国に助成金として、世銀の国際開発協会(IDA)及び国際復興開発銀行(IBRD)による譲許的融資とマッチングする形で提供される。このマッチングにより資金の規模が増大することは、各国にとって大きなインセンティブとなっています。
GFFに対する日本の貢献
日本は、2017年12月に東京で開催されたUHCフォーラムにおいて、GFFに対する3,000万米ドルの拠出支援を表明しました。さらに、IDAを含む世界銀行の譲許的資金の保健分野への動員効果拡大を確認した上で2,000万米ドルの追加拠出をする用意があると発表し、2020年8月までに合計5,000万ドルの拠出金の支払いを完遂しました。2021年10月には、同年12月に予定されていた東京栄養サミットに向けた日本の貢献の一環として新規に5000万ドルの拠出が発表されました。
また、GFF創設当初からガバナンス機構の一つである投資グループに参画しており、現在も信託基金委員会に財務省、投資グループに財務省と国際協力機構(JICA)が参画するなど、GFFのガバナンスにも関与し続けています。
文責:JCIE
(最終更新 2021年12月)
Global Financing Facility (GFF) 公式ホームページ ⇒ https://www.globalfinancingfacility.org/