活動報告

日本国際交流センター(JCIE)では、「外国ルーツ青少年未来創造事業」に引き続き、「外国ルーツ青少年の教育スタート支援事業」の助成先団体に対して、住友商事(株)の社員参加型の社会貢献活動プログラム「100SEED」との連携に基づく支援を行っています。

 

2024年1月19日に、この連携の一環として、「多様な人々が共生する多文化社会の姿―私から目線を変え、社会を創造する」をテーマに参加型セミナーを開催し、住友商事の役職員約60名が参加しました。二部構成で進められましたセミナーでは、JCIEの毛受敏浩執行理事から「外国人受け入れ新時代の展望」と題して講演を行った後、外国ルーツの若者・社会人として高瀛龍氏、ケヴェン オリヴェイラ氏をお迎えし、来日の背景や日本の学校や地域での生活などと合わせて、当事者の視点から多様な背景をもつ人々の受け入れ・共生をどのような目線で考えていく必要があるかについて議論を行いました。

 

初めに、JCIEの毛受敏浩氏は、日本でどのような経緯の中で移民がタブー視文化・年齢の違いなどによる課題の複雑性、②生活全般にわたる支援が必要な領域の広さ、③在留外国人の数およびステークホルダーの規模の増加、④自治体の専門性不足や民間団体の少なさ、⑤慢性的な資金不足などによる支援体制の不十分さ、を指摘しました。あわせて、実態として在留外国人が増加していく中で、産業における外国人の依存度が高まっていること、在留外国人の増加や今後の受け入れ拡大についての国民の意識も変化していること、日本に住む移民によるビジネスの例に触れ、実際に在留外国人が新たな社会経済的な可能性を開く主体として活躍していることに視点を向ける必要性を強調しました

 

 

第二部のパネルディスカッションでは、10代に日本にいる親の呼び寄せで来日した高瀛龍(コウ・インロン)氏とケヴェン オリヴェイラ氏が、来日直後から現在までのご自身の日本での出会いを通じた経験を共有しながら、日本がこれまでとは異なる社会の姿を創造するために、多様な背景を持つ人々の受入れ・共生をどのような目線で考えていく必要があるか、各自の視点からの考えを述べました。

 

まず、高瀛龍氏は、経済的理由でアメリカ留学を断念した経験から資金不足によって学びの機会を得ることができない若者のための奨学金サポートスタートアップ事業を立ち上げたことを説明しました。また、来日当時小学生として、言語や文化の違いによって学校に行くことを怖いと思っていたと振り返り、当時のイメージを「黒」に例えました。一方、ケヴェン オリヴェイラ氏は、来日当初、話しかけても何もわからず、生活についても何もわからなかった当時の状況を「白」に例えました。15歳に来日し、日本語が全く分からない「白」の状況から、地域のNPOが実施しているフリースクールでサポートを受けながら高校進学を果たし、今は大学生として勉学に励んでいると、地域、学校での出会いについて話しました。

 

また、両氏は、日本が多様な背景をもつ人々を受け入れ、彼らと共に日本社会を育んでいくためには、公的教育機関における体系的な日本語教育制度の構築や、在留資格の制約により奨学金制度の対象から外れてしまうなど学ぶ機会を実質的に制限する機能をする制度の改善が必要と指摘しました。さらに、エスニックコミュニティーとローカルコミュニティをつなげるハブ人材を育成し、彼らの活動を社会のなかで可視化していくことや、外国人との出会いがないがゆえに移民・多文化共生への理解、認知が進まない現状を変えていくために外国にルーツをもつ多様な人々との出会いを作っていくことが重要だと提案しました。最後に、これから日本社会がどんな色になってほしいかという問いに対して、ケヴェン オリヴェイラ氏はいろんな人が挑戦できる社会という意味で「赤」、高瀛龍氏はいろんな背景をもった人が楽しく暮らせる社会という意味で「虹色」であってほしいと、多様な背景をもつ人々が生き生きと暮らす、活躍できる社会となる日本への願望を述べました。

 

参加者から共生社会実現に向けたアクション案として、社会として「多様性を認め、幅広い選択肢がある社会を作る」、「制度、ルール上の不平等、格差の改善など通じた公正な制度の構築」、「多文化共生推進企業への政府認定制度を作り、民間企業がそれぞれの分野で外国人を巻き込んだ労働環境づくりを推進する」、個人として「マイクロアグレッション(無意識な差別、偏見)をしないように心かける」、「地域のコミュニティ通訳ボランティアへの参加」、「生活の中でDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を自然に取り入れていくように心かける」などの意見が寄せられました。

 

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