活動報告 Activities

2011.04.01

日英21世紀委員会

日英21世紀委員会は、1984年に中曽根康弘首相とマーガレット・サッチャー首相との間で合意され、翌85年に正式に設置された民間レベルの政策対話フォーラムです(発足時の名称は日英2000年委員会)。年1回の合同会議において両国委員が議論し日英関係のあり方についての提言をまとめ、それぞれの首相に報告しています。     最近のフォーラム 2022年度 第39回合同会議 (英国 ロンドン、ノリッジ、イーストアングリア大学) 2021年度 第38回合同会議 (オンライン会議) 2020年度 第37回合同会議 (オンライン会議) 2019年度 第36回合同会議 (英国 カンタベリー、ケント大学) 2018年度 第35回合同会議 (日本 東京、鎌倉) 2017年度 第34回合同会議 (英国 ロンドン、ケンブリッジ) 2016年度 第33回合同会議 (日本 東京、木更津) 2015年度 第32回合同会議 (英国 ロンドン、ディッチリーパーク) 2014年度 第31回合同会議 (日本 東京、箱根) 2013年度 第30回合同会議 (英国 ロンドン、サウス・ウェールズ) 2012年度 第29回合同会議 (日本 東京) 2011年度 第28回合同会議 (英国 ウォーリック大学) 2010年度 第27回合同会議 (日本 東京、軽井沢) 2009年度 第26回合同会議 (英国 ハンプシャー、チュートングレン) 2008年度 第25回合同会議 (日本 東京、小田原) 2007年度 第24回合同会議 (英国 ニューキャッスル・アポン・タイン) 2006年度 第23回合同会議 (日本 東京) 2005年度 第22回合同会議 (英国 ハートフォードシャー、ウエア) 2004年度 第21回合同会議 (日本 東京、名古屋) 2003年度 第20回合同会議 (英国 ロンドン、ブロケットホール) 2002年度 第19回合同会議 (日本 鎌倉) 2001年度 第18回合同会議 (英国 ロンドン、ディッチリーパーク)

2011.04.01

日韓フォーラム

日韓フォーラムは、1993年に行われた細川護煕総理大臣と金泳三大統領との日韓首脳会談に基づき設置された民間レベルの政策協議のためのフォーラムで、Korea Foundationが韓国側事務局を、日本国際交流センター(JCIE)が日本側事務局を務めています。日米間の民間レベルの会議である「下田会議」をモデルとして、1993年以来、両国の政治家、経済人、学者、ジャーナリストなどのオピニオン・リーダーの参加を得て毎年開催され、「未来志向」の新しい日韓関係の在り方を検討するために、政治、経済、文化など幅広い分野にわたり両国の交流の推進を図っています。    過去のフォーラム 2023年度 第31回日韓フォーラム (日本 東京) 2023年8月30日-9月1日 2022年度 第30回日韓フォーラム (日本 東京) 2022年8月24日-26日 2021年度 第29回日韓フォーラム (オンライン) 2020年12月3日 2020年度 第28回日韓フォーラム (オンライン) 2020年11月13日 2019年度 第27回日韓フォーラム (韓国 ソウル) 2019年8月21日-23日 2018年度 第26回日韓フォーラム (日本 東京) 2018年8月20日-22日 2017年度 第25回日韓フォーラム (韓国 ソウル)2017年8月28日-30日 2016年度 第24回日韓フォーラム (日本 東京) 2016年8月24日-26日 2015年度 第23回日韓フォーラム (韓国 ソウル) 2015年8月27日-29日 2014年度 第22回日韓フォーラム (日本 福岡) 2014年8月7日-9日 2013年度 第21回日韓フォーラム (韓国 ソウル) 2013年8月22日-24日 2012年度 第20回日韓フォーラム (日本 東京) 2012年12月20日-22日 2011年度 第19回日韓フォーラム (韓国 ソウル) 2011年8月24日-26日 2010年度 第18回日韓フォーラム (日本 東京) 2010年10月3日-5日 2009年度 第17回日韓フォーラム (韓国 ソウル) 2009年12月6日-8日 2008年度 第16回日韓フォーラム (日本 東京) 2008年8月28日-30日 2007年度 第15回日韓フォーラム (韓国 釜山) 2007年8月28日-30日 2006年度 第14回日韓フォーラム (日本 兵庫県淡路島) 2006年8月29日-31日 2005年度 第13回日韓フォーラム (韓国 済州島) 2005年8月29日-31日 2004年度 第12回日韓フォーラム (日本 山口県下関市) 2004年9月13日-15日 2003年度 第11回日韓フォーラム (韓国 慶州) 2003年8月31日-9月3日 2002年度 第10回日韓フォーラム (日本 石川県金沢市) 2002年9月6日-9月8日 2001年度 第9回日韓フォーラム (韓国 江原道) 2001年8月31日-9月2日 2000年度 第8回日韓フォーラム (日本 福島) 2000年9月16日-18日 1999年度 第7回日韓フォーラム (韓国 ソウル) 1999年8月27日-30日 1998年度 第6回日韓フォーラム (日本 千葉) 1998年10月25日-28日 1997年度 第5回日韓フォーラム (韓国 ソウル) 1997年9月5日-8日 1996年度 第4回日韓フォーラム (日本 東京・青森) 1996年9月4日-8日

2010.06.01

セミナー「人間の安全保障と健康」

2010年5月14日、当センター、日本及びノルウェーの国連代表部、国連人道問題調整事務所(UNOCHA)人間の安全保障ユニットとの共催、国際教育研究所(IIE)の後援により、IIE会議室にて、「人間の安全保障と健康」をテーマとするセミナーならびにラウンドテーブルを実施した。

2009.09.01

「国際保健の課題と日本の貢献」研究・対話プロジェクト 第2フェーズ(2008年8月~2009年6月)

2008年7月に洞爺湖で開催されたG8サミットにおいて、「国際保健に関する洞爺湖行動指針(洞爺湖行動指針)」が示された。2007年9月に発足した「国際保健の課題と日本の貢献」研究・対話プロジェクトでは、過去一年間に醸成された保健システム強化に向けた政治的モメンタムを維持し、イタリアが議長国を務める来年のサミットに引き継ぐため、洞爺湖行動指針の中でも特に強調された「保健システム強化」をテーマに第2フェーズの活動を開始した。   本フェーズでは、G8合意の行動指針に基づき、G8および世界の諸団体が取るべき保健システム強化に向けた具体策を明確にし、その具体策を実施するための協力体制を醸成することを目的とする。具体的には、G8サミットでも提案された保健医療人材、保健情報(保健システムの評価とモニタリング)、保健財政の3つの政策分野を取り上げ、プライマリー・ヘルス・ケアの再構築、個別の疾病対策の強化、保健に関わるミレニアム開発目標(MDGs)の達成、そして、世界中の人間の安全保障の確保を推進する包括的な保健システムをいかに構築しうるかを検討する。また、これらの検討を通じて、G8サミットが、国際保健の政策形成においてどのような形で、より積極的に触媒的な役割を果たしうるか探る。   2008年9月には、上記の3つの政策分野をテーマに22名の専門家からなる国際タスクフォースを組織し、また多様なアクターの意見や視点を取り入れるため、国際保健分野の著名な研究者・実務家からなる国際諮問委員会を発足させた。10月4日には、3つの論文の草稿を検討するために研究チームを中心にワークショップを開催し、さらに、報告・提言の内容を深め充実させることを目的に、11月3-4日に「保健システム強化に向けたグローバル・アクションに関する国際会議」を東京で開催した。   本プロジェクトでは、一連の研究・対話活動を通して、保健システム強化に向けた具体的なアクションの提言を作成し、2009年1月16日に最終提言書が日本政府に提出された。本提言書は、日本政府からイタリア政府に手渡され、さらに国際的な議論を喚起するため、アジア、アフリカ、欧州、米国などでセミナーシリーズを開催した。   なお、本提言書は国際的な医学雑誌『ランセット』にも掲載された。   タスクフォース最終提言書「保健システム強化に向けたグローバル・アクション:G8への提言」   和文  PDF[1.5MB] 英文  PDF[2.5MB] 伊文総論  PDF[452KB] 仏文  PDF[1.4MB]   プレス・リリース   『ランセット』掲載論文  PDF[113KB]   「国際保健の課題と日本の貢献」研究・対話プロジェクト概要 第1フェーズ   国際諮問委員   ウチェ・アマジゴ 世界保健機関(WHO)回旋糸状虫症対策アフリカ・プログラム(APOC)ディレクター[ブルキナファソ] リンカン・チェン 中国医療委員会会長[米国] デイビッド・デ・フェランティ ブルッキングス研究所グローバル・ヘルス・イニシアティブ本部長[米国] フリオ・フランク ビル&メリンダ・ゲイツ財団シニア・フェロー、カルソ保健研究所理事長、次期ハーバード大学公衆衛生大学院学部長[メキシコ] 郭 研(ヤン・グオ) 北京大学公衆衛生大学院保健政策・管理教授[中国] リチャード・ホートン ランセット誌編集長[英国] ウィリアム・シャオ ハーバード大学公衆衛生大学院 李國鼎(K. T. Li)経済学教授[米国] エデュアルド・ミッソーニ ボッコーニ大学非常勤教授、2001年ジェノバ・ サミットG8保健専門家グループ議長[イタリア] シグラン・モゲダル ノルウェーエイズ担当大使 尾身 茂 世界保健機関西太平洋事務局事務局長[フィリピン] ジム・ヨン・キム ハーバード大学公衆衛生大学院保健フランソワ・ザビエル・バグノー保健人権センター所長[米国] ピーター・ピオット 国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長[スイス] スジャタ・ラオ インド・エイズ対策機構(NACO) ミリアム・ウェレ ケニア国家エイズ対策委員会(NACC)委員長、野口英世アフリカ賞受賞者 スウィット・ウィブルポルプラサート タイ公衆衛生省疾病予防上級顧問   タスク・フォース   ディレクター:   武見 敬三 ハーバード大学公衆衛生大学院リサーチ・フェロー、 (財)日本国際交流センターシニア・フェロー 総括論文共同執筆:   武見 敬三   マイケル・ライシュ ハーバード大学公衆衛生大学院国際保健政策武見太郎記念講座教授[米国] 文献調査:   勝間 靖 早稲田大学アジア太平洋研究センター教授 仲佐 保 国立国際医療センター国際医療協力局派遣協力第二課課長 中村 安秀 大阪大学大学院人間科学研究科教授 リサーチ・チーム:   [保健情報]   執筆者: …

2009.09.01

「国際保健の課題と日本の貢献」研究・対話プロジェクト 第1フェーズ(2007年9月~2008年7月)

当センターでは、第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)とG8北海道洞爺湖サミットが開催される2008年を、「人間の安全保障」に根ざした国際保健分野における日本の貢献のあり方を検討する絶好の機会と捉え、2007年9月、「国際保健の課題と日本の貢献」研究・対話プロジェクトを開始し、武見敬三、元厚生労働副大臣を主査に、政府関係者、援助実施機関、学者、NGO等多様なセクターの代表から構成される研究会を組織した。   同研究会は、5月末までに計5回の会合を持ち、政府の国際保健に関する政策案に対して助言を行う他、国際機関、国際NGO、研究者との一連の対話を国内外で行い、G8サミットに向けた政策提言をとりまとめた。   2007年末から翌2月初めにかけては、ハーバード大学公衆衛生大学院の研究者と議論を重ねて成果論文 PDF[108KB]を執筆、医学雑誌『ランセット』に掲載された。1月には、武見主査がタイを訪問し、マヒドン大学の協力を得て現地視察を行ったほか、プライマリー・ヘルスケアをテーマとするプリンス・マヒドン賞会議にて国際保健専門家と議論を交わした。3月には、世界基金と世界保健機関(WHO)の協力を得て、ジュネーブを始めとする欧州に拠点を持つ国際保健専門家とのワークショップをジュネーブで開催し、いかにして疾病別支援を保健システム全体の強化に繋げうるか議論を交わした。   本ワークショップには、ワーキング・グループからは武見主査に加えて、石井澄江ジョイセフ常任理事・事務局長、山本正当センター理事長、勝又英子常務理事・事務局長、そして外部専門家として國井修ユニセフ・ミャンマー保健栄養部長が参加した。その後、世界基金と日本政府の協力を得て、ザンビアでの現地視察および実務家との対話の機会を持った。現地視察では、ルサカ近郊、西部州の世界基金プロジェクトおよび国際協力機構(JICA)プロジェクトの現場を訪問した。4月には第39回三極委員会ワシントン総会において、武見主査が研究会の中間報告を行い、さらにその後、ワシントンではブルッキングス研究所、ニューヨークでは外交問題評議会の協力を得てワークショップを開催し、米国を拠点とする国際機関および研究機関、NGOの国際保健専門家や保健問題に関心を持つ企業関係者と議論を深めた。ワーキング・グループからは武見主査、勝間靖 早稲田大学教授、神馬征峰 東京大学教授、中村安秀 大阪大学教授、山本正、そして外部専門家として稲場雅紀アフリカ日本協議会国際保健分野プログラム・ディレクターが参加した。   最終報告書「国際保健、人間の安全保障、そして日本の貢献」 PDF[424KB]    は、2008年5月に開催された世界基金支援日本委員会、世界エイズ・結核・マラリア対策基金、外務省主催国際シンポジウム「沖縄から洞爺湖へ―『人間の安全保障』から見た三大感染症への新たなビジョン」において発表された。

2009.09.01

「国際保健の課題と日本の貢献」研究・対話プロジェクト

概要 2000年の九州・沖縄G8サミットでは、開発途上国の保健問題が主要議題の一つとして取り上げられ、なかでも感染症への対応が急務であることがG8首脳の間で確認された。このことが、世界エイズ・結核・マラリア対策基金設立の端緒を開いたことは、国際的にもよく知られ高い評価を受けている。8年ぶりに日本でG8サミットが開かれ、また第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)が開催される2008年は、再び保健を政策課題にすえる絶好の機会であることから、当センターでは前年の2007年9月、「人間の安全保障」に根ざした国際保健分野における日本の貢献のあり方を検討することを目的として「国際保健の課題と日本の貢献」研究・対話プロジェクトを開始した。   本プロジェクトでは、その実施主体として、武見敬三元厚生労働副大臣を主査に、政府関係者、援助実施機関、学者、NGO等多様なセクターの代表で構成される研究会(通称:武見研究会)を組織し、第1フェーズでは、TICAD ⅣおよびG8北海道洞爺湖サミットに向けて、国内外の専門家・実務者との政策対話および研究活動を行い、政策提言を行った。その成果もあり、7月に開催されたG8サミットでは、国際保健が主要議題の一つとして取り上げられ、G8保健専門家による提言書「国際保健に関する洞爺湖行動指針」(洞爺湖指針)が取りまとめられた。サミット終了後の8月より開始した第2フェーズでは、洞爺湖行動指針で強調された保健システム強化をテーマに、より具体的なグローバル・アクションの提言を目指し、国際タスクフォースおよび国際諮問委員会を発足させ、研究・対話活動を実施し、2009年1月16日に最終提言書が日本政府に提出された。本提言書は、日本政府からイタリア政府に手渡され、さらに国際的な議論を喚起するため、アジア、アフリカ、欧州、米国などでセミナーシリーズを開催した。   最終提言書およびプレス・リリース 和文 英文 伊文総論 仏文 プレス・リリース   なお、本提言書は国際的な医学雑誌『ランセット』にも掲載された。掲載された論文    同プロジェクトは、2009年8月、「グローバル・ヘルスと人間の安全保障」プログラムとして再編・強化された。   第1フェーズ(2007年9月~2008年7月) 第2フェーズ(2008年8月~2009年6月) グローバル・ヘルスと人間の安全保障プログラム(2009年8月~)   研究会メンバー 2009年7月現在 主 査: 武見 敬三   (五十音順) 石井 澄江 (財)ジョイセフ常任理事・事務局長 石井 正三 日本医師会常任理事 磯田文雄 文部科学省研究振興局長 上田 善久 (独)国際協力機構理事 尾身  茂 自治医科大学地域医療センター教授、名誉世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局長 勝間  靖 早稲田大学国際学術院学術院長補佐・教授、グローバル・ヘルス研究所 所長 木寺 昌人 外務省国際協力局長 黒川  清 政策研究大学院大学教授、日本医療政策機構代表理事 笹川 陽平 日本財団会長 笹月 健彦 国立国際医療センター名誉総長 渋谷 健司 東京大学大学院国際保健計画学教授 神馬 征峰 東京大学大学院国際地域保健学教授 谷口  隆 厚生労働省技術総括審議官 中村 安秀 大阪大学大学院人間科学研究科教授 林  信光 財務省大臣官房審議官(国際局担当) 村木 太郎 厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当) 山本  正 (財)日本国際交流センター理事長     関連資料および動き G8ラクイラ・サミット成果文書(2009年7月10日)     首脳宣言 開発・アフリカ    仮訳 : P. 29-31 英文: P. 33-35 国際保健機関(WHO)第62回世界保健会議(2009年5月25日)において採択された「保健システム強化を含むプライマリ・ヘルス・ケア」に関する決議案  会見レポート:神馬征峰・東京大学大学院国際地域保健学教授、渋谷健司・東京大学大学院国際保健計画学教授「国家戦略としてのグローバルヘルス」(2009年4月7日、於:日本記者クラブ) 黒川清、坂野嘉郎 原聖吾、近藤正晃ジェームス「イタリアG8サミット:グローバルヘルスの行方を左右する分岐点」(”Italian G8 Summit: a critical juncture for global health”) The Lancet, Vol. …

2009.02.01

G8に対する提言書『保健システム強化に向けたグローバル・アクション』日本政府に提出

武見敬三・前参議院議員を主査とする「国際保健の課題と日本の貢献」研究会(通称:武見研究会)は、2009年1月16日、「保健システム強化に向けたグローバル・アクション:G8への提言」(和文  | 英文   | 伊文総論  | 仏文 )を日本政府に提出した。本提言書は、日本政府から、今年のG8議長国であるイタリア政府へと手渡される予定である。武見研究会では、昨年開催されたG8北海道洞爺湖サミットの首脳宣言ならびに「国際保健における洞爺湖行動指針」   をフォローアップするために、2008年9月に国際的なタスクフォースを組織した。本提言書は、同タスクフォースが、グローバル・ヘルス分野で国際的に指導的立場にいる多くの関係者の協力を得て研究、対話を行い、取りまとめたものである。   背景 2000年の九州・沖縄サミット以後、感染症対策が国際的な課題として注目されるようになり、この感染症対策の強化をきっかけに、2000年に60億ドルだった保健分野への開発援助総額が、2005年には140億ドルへと急増した。さらに、九州・沖縄サミットの合意を受けて2002年に創設された世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)の拠出した支援は、2008年10月までに総額約115億ドルにおよび、また、同じ時期にビル&メリンダ・ゲイツ財団が国際保健分野に投じた助成額も約99億ドルを超えるなど、この分野における資金的な協力が国際的に強化されるようになった。   感染症の地球規模の脅威に対応するためには、さらに資金を拡大する必要があるとの認識が強まる一方で、近年、保健に関わる国連ミレニアム開発目標(MDGs)の乳幼児死亡率の削減(MDG 4)と妊産婦の健康改善(MDG 5)の遅れについての懸念が特に増大してきており、既存の資金が、疾病対策以外の保健分野にも広く効果を及ぼすよう、保健システム全体を強化する必要性が広く認識されるようになってきた。   グローバル・ヘルスに対する国際的な関心の高まりに伴い、これに対応しようとする組織や専門家の数が増え、多くの政策構想、戦略が打ち出されるに至り、この分野のガバナンスに混乱が見られるようになり、ドナー間の一層の協調、新たな政策形成のあり方が求められている。H8と呼ばれる、国際保健機関(WHO)、世界銀行、国連児童基金(UNICEF)、国連人道基金(UNFPA)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)といった政府を単位とした国際機関に加え、GAVIアライアンス(ワクチン予防接種世界同盟)、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の8つ国際保健関連組織のリーダーによって構成される非公式会合は、グローバル・ヘルスをめぐるガバナンスにおけるパワー・シフトを反映している。   提言 本報告書では、グローバル・ヘルスをめぐる政策形成のあり方について問題を提起すると共に、保健システムを構成する要素の中でも特に重視されている保健人材、保健財政、保健情報に焦点を当てた3本の政策提言論文を収録している。   【触媒としてのG8の役割】 地球規模課題としての保健の問題は、国家を単位とした既存の国際機関の統治能力を超えている。これまで国際保健の規範形成において主導的な役割を果たしてきたWHOの能力を強化すると共に、二国間外交、多国間外交、シビル・ソサエティとのネットワークという3つの外交チャンネルを緊密に連携させる必要がある。その中で、G8は、幅広いアクターの参画を得る触媒の役割を果たすことが可能であり、既存のグローバル・ヘルスの政策形成に柔軟性をもたらすことができると考えられる。また、強い影響力を持つG8がビジョンを提示することで、保健の問題を世界的な優先課題に位置付けることができる。   【革新的な方法の模索】 資金、人材、知識といったグローバル・ヘルスに関わる資源はいまだに不足しており、既存の資源を効率的かつ効果的に活用する重要性も高まっている。特に、世界的な金融危機において、十分な資金を確保することが難しくなる中で、追加資金を確保する努力と同時に、既存の資源を効果的に活用し、世界の人々の健康状態を改善する革新的な方法を検討するべきである。   【人間の安全保障の理念に根ざした保健システムの強化】 保健システム強化の究極的な目標は、人々の健康状態を改善し、社会の一員として生産活動に参加できるよう、全ての人々に保健医療サービスを保障することである。日本が外交方針の柱の一つに掲げてきた「人間の安全保障」という概念は、保健システムを強化する上でも有用なアプローチと言える。人間の安全保障は、危機的かつ広範な脅威からの保護と、困難な状況に対処する能力を育てるエンパワーメント(能力強化)という、2つの戦略を統合することで、個人やコミュニティの福祉を包括的に向上させることを目指す。このアプローチを取ることで、人々の尊厳を尊重した主体的な取り組みを奨励し、保健システム強化に伴う多様な諸問題にも対処しうる。また、人間の安全保障アプローチは、WHOが再活性化を図っている、健康であることを基本的な人権とし、地域住民を主体とした取り組みを通じて、全ての人が健康になることを目指すプライマリ・ヘルス・ケアの理念にも通ずる。   【途上国の自助努力を促すグローバルな学習プロセスの創出】 先進国は、途上国の取るべき施策を指図する傾向がある。多様なドナーから相矛盾する方針が示されることで、現場に混乱が生じ、現地政府、保健医療従事者、NGOなどのアクターの創意による活動が妨げられる。さらに、現地政府は、十分な情報や知識に基づいて保健政策を決定する能力に乏しく、途上国政府自らが保健システムに関わる政策を決定し、管理することは難しい。G8は、自らがサミットで合意したコミットメントを評価するための年次レビューを実施すると共に、国および地方レベルにおいて、各国が保健分野の政策を立案、実行、評価する能力の強化を支援し、自助努力を奨励すべきである。その際、成功事例や標準化した指標によるデータを共有することで、グローバルな学習プロセスを創出することが肝要である。   本報告書は、国際的な医学雑誌『ランセット』でも発表された(Michael R. Reich, Keizo Takemi. “G8 and Strengthening of Health Systems: Follow-Up to the Toyako Summit.” Lancet 2008; published online January 15. DOI:10.1016/S0140-6736(08)61899-1  )。 以上

2008.12.01

G8北海道洞爺湖サミット・フォローアップ 保健システム強化に向けたグローバル・アクションに関する国際会議

当センターでは、「国際保健の課題と日本の貢献」対話・研究プロジェクトの一環で、11月3、4日の両日に「G8北海道洞爺湖サミット・フォローアップ:保健システム強化に向けたグローバル・アクションに関する国際会議」を開催した。

2008.06.01

公開シンポジウム 日本の国際戦略としての”人間の安全保障”―洞爺湖サミットに向けた提案」

  基調講演「人間の安全保障と日本の役割―洞爺湖サミットに向けた提案」 武見 敬三 前参議院議員、ハーバード大学公衆衛生大学院リサーチ・フェロー、 (財)日本国際交流センターシニア・フェロー     日時:2008年5月25日(日)13時~17時   場所:艮陵会館記念ホール   主催:東北大学ヒューマンセキュリティ連携国際教育プログラム   協力:(財)日本国際交流センター、世界基金支援日本委員会   後援:宮城県医師会、国際協力機構(JICA)、東北国際保健研究会、河北新報社     はじめに 本日は「日本の国際戦略としての人間の安全保障 洞爺湖サミットに向けた提案」と題した公開シンポジウムが、このような形で開催されましたことに心からお喜びを申し上げるとともに、基調報告をさせていただく機会をいただきましたことを御礼申し上げたいと思います。また、井上総長はじめ伊東潤造宮城県医師会長におかれましては、ご多忙の中にご隣席をいただき、心から御礼を申し上げる次第でございます。   人間の安全保障概念の登場 今、植木先生からもお話がありました、この「人間の安全保障」という考え方は、1994年に国連開発計画、UNDPが人間開発報告書の中で初めて使った言葉でございます。この考え方というものは、従来の国家安全保障という枠組みだけでは、国際社会がもはや、それぞれの国の中の国民の命さえをも守れなくなるような状況に入り、そしてグローバライゼーションと言われる、人、物、情報が国境を超えて大きく行き交う状況下においては、従来の国家安全保障のみならず、新たな安全保障の概念として人間の安全保障という考え方が必要になってきたという認識に基づいて、改めて提示された新しい安全保障の概念でございました。   この考え方は国家を基本とする安全保障と異なり、それぞれ個々の人間にまで安全保障の対象を縮小し、個々の人間の安全をいかに確保するのか。そして、そのためにさまざまな要素、すなわち政治や経済、社会、文化、教育、これらを総合的に勘案して包括的に個々の人間の安全を確保するという考え方が、当初、このUNDPを通じて明らかにされたわけであります。   我が国主導の概念整備 この考え方が多く議論される過程で、わが国では小渕内閣が発足しました。このとき、私はたまたま外務政務次官を拝命いたしまして、小渕内閣の外交政策に直接かかわることになりました。ご記憶の方もあるかと思いますが、当時小渕総理ご自身は、対人地雷にかかわる国際条約の批准に大変努力をされていました。この対人地雷の条約を批准するに際して、その裏付けとなる理論的な枠組みはどのようなものが適切かという議論になったときに、私どもから、人間の安全保障という考え方がその裏付けとなる概念として最も適切であろうという提言をし、それが政府として受け入れられ、その考え方がまさにわが国政府の対外的な政策を考えるときの新たな柱となった、という経緯がございます。   通常、さまざまな内閣が新たな考え方を提示するわけでありますが、おおよそ次の内閣になると全く違った他の考え方が政策として提言されるということが、わが国の現実でありました。しかし、こと、この人間の安全保障という考え方に関しましては、その後の五つの歴代の内閣においても引き続き堅持され、そしてわが国のODA大綱というものを10年ぶりに修正するときに、その前文の中で改めてわが国のODA政策の中心概念として位置付けられることになりました。   ただ問題は、UNDPによって新たにとらえられた人間の安全保障という考え方も、まだ政策概念としては十分に整備されたものではございませんでした。そこで改めて日本政府は、この人間の安全保障という概念をより政策概念として活用し得るための研究と調査、これを集中的に行うことが必要だという認識を持つに至りました。そして、ちょうどミレニアムサミットがニューヨークで開かれたときに、その当時の森総理の下で、改めて国連で人間の安全保障の概念を整備するための人間の安全保障のための国際委員会を創設する提案がなされました。また同時に、国連に既に創設されておりました人間の安全保障基金というものをさらに1億ドル相当に充実するということも、その時に表明された経緯がございます。   その結果2001年に、人間の安全保障委員会というものが当時の国連のコフィー・アナン事務総長との連携の下で発足し、わが国から緒方貞子元国連難民高等弁務官と、アジアで初めてノーベル経済学賞を受賞されたアマルティア・セン教授がこの共同議長となり、人間の安全保障委員会がその報告書を取りまとめ、2003年にコフィー・アナン事務総長に提示されたという経緯がございます。その中で改めて人間の安全保障という概念について、その整備がなされました。それが今日のわが国においても活用されている、人間の安全保障という考え方になります。   おおよそどのようなものであるかといえば、従来と同様、個々の人間の安全というものに焦点を当てているということに変わりはございませんが、改めてそれを個々の人間というもののみならず、コミュニティを単位として、そこに住んでいる人々を対象とした新たな安全保障の概念として再発足をいたします。そしてそこで求められることは、いわゆるフリーダム・フロム・フェア、フリーダム・フロム・ウォントということで、コフィー・アナン事務総長も提案していた、それぞれの個々の人間が自ら教育等を通じてその能力を拡充するとともに、社会、個々人が改めてより多くの人生の選択肢を開拓し、より充実した生活を確保することができるように保障する概念として、その定義が新たにされたことになります。これは言うなれば、個々の人間にとっての自由の拡大ということを安全保障の中で確保しようとする、極めて積極的な定義がこの安全保障委員会の中ではなされたわけであります。そして、この考え方というものを実現していくための基本的な概念の枠組みとして、二つ提示されました。その第一は、ヒューマン・エンパワメント。それはまさに、教育等を通じて個々の人間の能力を開発するところにあります。   しかし、これだけでは個々の人間は自らより充実した人生を得るための選択肢を拡大することはできません。コミュニティにおける社会的な秩序の確保、また、こういった人々が生存していくために必要な保健医療サービスの提供、そしてまた同時に、充実した環境の整備、これらが、いずれも包括的に人々の安全を確保するという観点から総合的に検討されていくことが必要になり、このヒューマン・エンパワメントに加えてヒューマン・プロテクションという考え方が組み合わされることになりました。これによって、人間の安全保障という概念構成がおおよそ整備されたということになります。   人間の安全保障に基づく沖縄感染症イニシアティブ そして、この考え方の中でも特に人間の生存に直結する「健康」というものは、人間の安全保障の各課題の中でもその中核的な位置付けがされてきているわけであります。それがまさに、沖縄サミットのときにもわが国の感染症にかかわる提案となったゆえんであります。ご記憶の方もあると思いますが、8年前の沖縄サミットというのは、まさにエイズ、結核、マラリア、特にエイズにかかわる脅威というものが幅広く広がり、人類社会がこれにどのように対応し得るだろうかという脅威感がまさに広がっていた時期にあったわけであります。   この時期にわが国は、人間の安全保障の考え方に基づいて、これらHIVエイズ、結核、マラリアにかかわる感染症のイニシアチブというものを提案いたしました。そしてこの提案に基づいて、サミット終結後もそのフォローアップとして改めて保健専門家による感染症の会議が開催され、これらがいずれも大きなきっかけとなって感染症にかかわる国際社会の取り組みが一気に進み、エイズを含む三大感染症にかかわる世界基金と呼ばれるグローバルファンドが発足し、そしてエイズにかかわるさまざまな取り組みが一気に進んだという経緯があります。このイニシアティブの特徴は、これらのアプローチがいずれも感染症主体のアプローチであったことであります。これらによって確実に多くの人々の命が救われるようになり、そしてエイズにかかわるさまざまな医薬品の新たな開発が進み、エイズが改めて慢性疾患という観点で位置付けられるほどに、その新たな効能効果が期待し得る治療薬までもが出現するようになったことはご案内のとおりであります。   洞爺湖保健システム強化イニシアティブ 今日、このような感染症中心のアプローチに加えて国際社会全体を見たときに、医療の提供体制、保健医療のシステム全体を改めて評価することの必要性が認められるようになってきたわけであります。すなわち、さまざまな医薬品等は開発されたものの、例えば途上国にそれがジェネリックで極めて安い価格でも提供されるようになりました。しかし、それらが実際に真に役に立つためには、そのための医療の提供体制が整備され、保健医療の専門家の診断、服薬指導、こういったことを着実に行って初めて治療を必要とする人々の健康の改善につながり、アウトカムとしてそれが確保できるようになるわけであります。   こうした医薬品等の確保はできるようになったところが相当あるわけでありますが、しかしながら、まだ多くの途上国、特に地方のコミュニティ等に対しては十分な医療の提供体制が整わないために、医薬品等が十分に活用されずに残ってしまっているということが現実の課題となりました。それは実際に医師・看護師不足、これはわが国でも深刻ではありますけれども、途上国ではさらに深刻な事態にあることはご案内のとおりであります。アフリカ等の場合には、さらにそれに加えて医師・看護師の頭脳流出、即ちブレイン・ドレインと言われる、外国にそれぞれの医療の専門家が行ってしまうという事態が、こうした医療の提供体制を整備するときの大きな問題点として出現するようになってきました。 実は私は3月にザンビアという国を訪問して、その医療の提供体制の視察をしてきました。ザンビアには医学校は一つだけしかございません。その医学校では既に約2,500名の卒業生がおり、医師として社会で活躍できるようになっているわけであります。しかしそのザンビアにおいて、実際に国内に残って医療に従事している医師の数は、何と650名ほどでしかありませんでした。残りの2,000名近くは南アフリカやヨーロッパ大陸の先進国、さらに米国といったところに移住をしてしまい、現実には、そこでより豊かな生活をしているより豊かな人々のための医療に従事をしているという状況にあるわけであります。   すなわち、人間の安全保障という考え方からすれば、ヒューマン・エンパワメントという観点からは提供者側も受け入れ側もこうした医学校を創設し、そこに技術協力し、そしてより優れた医師の養成に当たってきたことの成果は、2,500名の医師の養成という形で見事に開花したわけであります。しかしながら、医師や看護師が自国に残って引き続き医療に従事するという観点から、リテンションと呼ばれる、まさに国内に医師・看護師を保持するためのヒューマン・セキュリティの考え方からいえば、プロテクションにかかわる政策が伴わなかったために、その政策の効果は実際に当初予定したようには上がらなかったという事実があるわけであります。したがって、このような観点から、改めてヒューマン・エンパワメントとプロテクションという考え方が組み合わさって、こうした保健医療にかかわる国際的な取り組みも行われなければその効果が期待できないという事態に、今、国際社会は直面するようになりました。   そして、そのためにはどのような政策が必要になってくるかといえば、それぞれの国内における医師に対するさまざまな施策。外国に行けば4倍も5倍も多くの収入が得られる。また国内では十分な医療機器や医薬品が整っていないために、せっかく大学でいい教育を受けたとしても、それを実践する場に恵まれない。そのためにも、海外で医師として充実した仕事をしたほうが自分も生きがいを感じられるというような事態がさまざまに重なって、このような頭脳流出という傾向が現実に途上国の中で起きてしまっているわけであります。そういたしますと、これらをきちんとリテンションしていくための施策というものは、保健医療の政策のみならず、改めてそれぞれの移住等にかかわる政策や、あるいはその財源確保等にかかわる施策が組み合わさって、これらの医師・看護師の確保というものが現実に可能となってくるわけであります。それらの各政策分野を横断したクロスセクトラルな政策をどのように提供者側と受け入れ側が協力して組み立てていったらよいか、そうしたことがまさに今日、議論の対象となり、3月にはアフリカのカンパラにおいて、こうした保健医療従事者にかかわる大きな世界大会が開かれたという経緯がございます。   そして今日、わが国の提案に基づき、洞爺湖サミットに先駆けてシェルパのもとに保健医療専門家会合というものが設置されることになり、既に2回、保健専門家会合が開かれました。こうして、疾患別の取り組みの充実強化に加えて保健システム強化のための取り組みが改めて議論されるようになり、その一つの大きな課題として、保健医療従事者にかかわる養成とリテンションについての議論がなされるようになってきているわけであります。第3回目の保健医療の専門家会合は6月11日に東京で開かれるわけでありますが、これらの議論の取りまとめが行われますと、いよいよ7月のサミットにおいてそれが各指導者によって総括され、共同コミュニケあるいは保健専門家会合の報告書として具体的な数値目標等を含めて、その政策が取りまとめられるという段階に今、入ってきたわけであります。   こうした中で、私も国会議員を12年間やらせていただき、政策を策定するときの難しさも随分経験させていただきました。多くの政治家にとって、自国の国民の貴重な税から得たお金、これはまさに国民からお借りした大変大切なお金であります。それをどのような目的のために使うかを国民にいかに説明するかというのは、常に政治家にとって最も難しい課題であります。例えば国際保健の分野で感染症ということで、HIVエイズやマラリア、結核という病名であれば、その問題に取り組むことの必要性を国民お一人お一人に説明するのは比較的容易であります。しかし、「保健システム強化というような、保健医療の提供体制全般にかかわる強化が重要だ」というような言い方をしたとしても、それはあまりにも抽象的で、多くの国民の皆様方に理解をしていただくことは甚だ難しい。したがって、今まで政策決定者たちはみんなうっすらとわかっていても、あえて言わなかった。   そして、まさにそうした状況下において洞爺湖サミットが開かれることになり、わが国の政策の中枢にいる総理をはじめとするさまざまな関連する閣僚、これは外務大臣と厚生労働大臣と財務大臣でありますが、いずれもこの考え方の重要性を理解してくださって、システム強化という観点からの取り組みを、洞爺湖サミットにおける日本の取り組みの一つの大きな柱とするということになりました。もしこれがうまく成功するとすれば、改めて日本は洞爺湖サミットのときに、沖縄サミットに続き、この国際保健の分野において非常に大きな役割を果たすことができるようになるわけであります。これは、わが国が改めて人間の安全保障という考え方に基づいて、国際社会においてより有意義な役割を果たす、そのまさに端緒となることは明確であります。   我が国にとっての人間の安全保障の意義 国内政治という観点から人間の安全保障の重要性について述べさせていただきたいと思います。わが国の中には戦後、まさに第二次世界大戦の経験を踏まえた平和主義というものが定着しておりました。300万人の尊い命が失われ、アジアの多くの無辜(むこ)の人たちが現実に多くの軍事作戦の犠牲となられたわけであります。こうした経験を踏まえて、その経験をした多くの世代の方々を中心として、わが国には平和主義というものが定着しておりました。   しかし、こうした反戦論的な平和主義というものは、その世代が実際にお年を召していく過程の中で、確実に今、その力を失おうとしているわけであります。そういうときに改めて未来志向の、より実践的な平和主義というものを確立することが、わが国が国際社会の中における責任ある国家として、そして社会の基本理念としてまさに必要とする時代状況に、わが国は入っているわけであります。そういうときに、この人間の安全保障という考え方は、まさに未来志向の、わが国の国際社会における取り組みを推進していく基本理念として最も適切であるというだけではなく、まさにわが国国民一人一人がより積極的な未来志向の平和主義というものを身に付ける上においても、最もふさわしい政策概念として認識できるのではないかと私は考えるわけであります。   そうした観点から、人間の安全保障という考え方は、実は着実に幅広くわが国の中でも議論されるようになってきているわけであります。特にこの東北大学におきましては、人間の安全保障にかかわる国際連携プログラムなども創設されて、まさに時代に先駆けて積極的にこうした活動をしてこられていることに対して、私は心から敬意を表したいと思います。そしてこうした考え方は、今、まさに国際社会の中で幅広く受け入れられようとしております。   人間の安全保障の国際的広がり 実は私は、昨年の7月の参議院選挙で落選いたしました。次点ということで、いつ繰り上げ当選になるかわからないという極めて微妙な立場におかれているわけであります。誠に私自身の不徳の致すところで、伊東潤造先生には大変ご迷惑をおかけして申し訳なかったわけでありますが、その過程で私自身、改めてこの国際保健分野で自分の一つの新たな専門的仕事をしようと志し、現在はハーバード大学の公衆衛生大学院の研究員としてその仕事に当たっているわけであります。   しかし、改めて専門家の多くの議論をそこで経験していく過程で、コミュニティというものを単位とした新しい政策の組み立て方に対する関心が、今、この分野で非常に広がってきているということを申し上げておきたいと思います。それは、おおよそ欧米中心の考え方の中ではトップダウンの提供者の考え方というものが、その中枢を占めてきているわけであります。このような場合に、コミュニティ、そしてそこにいる人々というのは、政策をまさに実施するときのエンドポイントにいる人々、そして単位ということになるわけであります。他方、わが国の中でよくあるようなボトムアップで政策を立案するときには、このコミュニティとそこにいる人々というのは、まさに政策立案のスタートポイントに位置付けられてくることになるわけであります。   実際に、これから多くの保健医療の政策を組み立てていくときには、まさにこのトップダウンとボトムアップの政策をいかに有機的に結合し、新たな政策のシステム体系をつくるかということが求められてくることになるわけであります。その一つの結節点を構成するコミュニティとそこに住む人々というものが、まさにこうした新たなトップダウンとボトムアップの政策を再構築し結合していくときの要として位置付けられることになりました。皆様方もお気付きになると思いますけれども、こうした政策を実行していくときに不可欠の存在が市民社会であります。そしてこれからは、ただ単に政府や国際機関だけがこうした任に当たるのではとても対応できないという時局になり、シビル・ソサエティの役割、NGO等の役割というものが、実はものすごく大きく今、認識されるようになってきました。   二国間・多国間・市民社会の三次元外交の展開 私が実際に国際政治の勉強を始めたころは、二国間外交というものがその大きな柱でありました。それがさらに、国連や国際機関を舞台としたさまざまな多国間外交が重要だと言われるようになり、そして二国間・多国間、即ちバイ・マルチの組み合わせによって外交というものは打ち立てられていくのだということになっておりました。しかし今、国際社会には新たにもう一つの大きな柱が構築されるようになりました。それは政府もまた同様、市民社会と連携し、NGOとも連携したNGOネットワーキング外交という新たな柱を構築することによって初めて、国際保健も含めた、国境を越えた新たな共通課題に対処し得る時代になってきました。   多くの先進諸国の諸政府がいずれもこれに気が付いて、三つの次元から外交を展開するようになってきております。そしてそれによって初めて、コミュニティという単位からなる政策をもまたきちんと構築できるという体制に今、まさになろうとしているわけであります。そして興味深いことは、国際政治全般を見たときに、このようなグローバライゼーションのもとで多くの国境を越えた共通課題が必然的に今、まさに増えてきている。環境破壊、気候温暖化、エネルギー価格・食料価格の高騰のみならず、国際保健も含めて、さまざまな共通課題が増えていく過程の中で、それぞれの政府もまた同様に、この三つの次元から組み合わされた新たな外交を展開して、それぞれこの共通の課題を解決する能力がどれほどあるかということを競う時代に、21世紀は入ってまいりました。そして、それぞれ規模は小さくても、こうした国際社会共通の課題を解決することにどれだけその能力を発揮することができるかが、21世紀におけるその国の国際社会における影響力をもより強化するという時代状況になってきたわけであります。   全員参加型アプローチとしての非公式ワーキング・グループ このような観点からも、多くの先進諸国は新たな政策にかかわるパラダイムシフトを実施し、こうした共通の課題に取り組むという方針に転換する状況になってまいりました。わが国もまたその例外ではございません。今回の洞爺湖サミットを控えて、政府の中で改めて非公式にこうした事態に対処するためのワーキンググループが組織されました。それは健康にかかわる三つの役所、すなわち世界銀行であれば財務省国際金融局、外務省であれば国際協力局、そして厚生労働省であれば国際課が、それぞれ責任者を出してそのワーキンググループに入り、かつまた援助実施機関であるJBICやJICAの代表者も入り、そして学識経験者、さらにはNGOの代表者も加わって全員参加型でこのワーキンググループが組織され、今回、洞爺湖サミットに係るさまざまな提案の準備を行うということになりました。不肖私がこのワーキンググループの主査を命じられ、その任に当たり仕事をしてきているわけでありますが、それを実際にやりながら、つくづくこの国際社会が今、大きく変容しつつあることを体験しているところでもあります。   いずれにせよ、このような大きな変革期において、新しい発想を受け止めるための基盤が人間の安全保障という考え方にあるのだということは、私は自信をもって言うことができます。そしてこの考え方が今まさに多くの国際社会の関係者の間で幅広く認識され、そのことがまた日本に対する信頼と評価を高める大きな効果をも持つことになっているということを、大きな声で申し上げておきたいと思います。 本日このような貴重な機会をいただいたことに心から御礼申し上げ、私の取りあえずの基調の報告とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

2007.09.01

「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会

「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会は、2007年にG7北海道洞爺湖サミットへの政策提言の策定の機会に発足した、日本のグローバルヘルス分野の政策形成への協力や官民連携の推進を目的とする懇談会です。グローバルヘルスに関係する国会議員、省庁・政府機関、学界、財団・NGO、産業界、国際機関の代表約40名が参加し、日本国際交流センター(JCIE)が幹事・事務局を務めています。   発足以来、四半期に一度程度の頻度で開催し、非公式に意見交換・情報共有を行ってきました。議題に応じ、国内外のグローバルヘルス専門家もゲストとして参加しています。   また、以下の協議体を設け、特定テーマについての提言の取りまとめ、その提言の具体化に向けた関係者の情報共有や連携強化等を後押ししています。   2023年G7グローバルヘルス・タスクフォース(2022年7月~) アジア医薬品・医療機器規制調和推進タスクフォース(2018年12月~) 保健分野のODAのあり方を考える特別委員会(2019年11月~2020年11月)   JCIEの「グローバルヘルスと人間の安全保障プログラム」についてはこちら。   メンバー 2023年10月現在     委員長: 塩崎 恭久   前衆議院議員     幹事: 狩野 功     公益財団法人 日本国際交流センター理事長     顧問: 逢沢 一郎 加藤 勝信 田村 憲久   委員: (五十音順) 衆議院議員(自由民主党) 衆議院議員(自由民主党) 衆議院議員(自由民主党)     赤堀 毅 外務省地球規模課題審議官   池上 直己 慶應義塾大学名誉教授​   伊藤 直樹 内閣官房健康・医療戦略室次長   稲場 雅紀 特定非営利活動法人 アフリカ日本協議会共同代表、GII/IDIに関する外務省/NGO懇談会代表   今村 英仁 日本医師会常任理事   井本 佐智子 独立行政法人 国際協力機構(JICA)理事   尾身 茂 公益社団法人結核予防会理事長、名誉世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局長   勝部 まゆみ 公益財団法人ジョイセフ理事長   勝間 靖 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科(国際関係学専攻)教授、国立国際医療研究センター・グローバルヘルス政策研究センター国際地域保健研究科長   北  潔 長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科長   國井 修 グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)専務理事・最高経営責任者(CEO)   黒川 清 東京大学名誉教授、政策研究大学院大学名誉教授、日本医療政策機構代表理事   國土 典宏 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター理事長   小寺 淸 特定非営利活動法人 ウォーターエイドジャパン理事、英国海外開発研究所上級客員研究員 …

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